新・日々是幸福。

日々の生活や仕事のこと。

また髪の毛を切らせて下さい。

2007-08-17 17:39:28 | 日常
先日、8年来のお付き合いのお客様が亡くなりました。
前のエントリーでも書いたのですが、http://yaplog.jp/fucci/archive/267
昨年末、発病してしまい、
都内の病院で手術をして入退院を繰り返し、一度は、退院して
自由が丘へも松葉杖ながらもサロンに遊びに来てくれたりと、
一時は本当に回復してきたのだけど、
春先から、また具合が悪くなってしまい、ご実家での
闘病生活になってしまい、髪の毛は僕がご自宅まで行って
カットしたりして(本当は病院でもしたかったけど難しかった)
頑張ったけど、結局懸命の治療も実らずに亡くなってしまいました。
まだ、41歳という若さでした。

車が好きで、音楽が好きで、アウトドアが好きで、パソコンも好きで、
僕よりも色んな事を、僕よりも詳しく知っていて、
兄貴のいない僕には、

「僕に兄貴がいたら、こんな感じなんだろうなあ」

と思えるような人で、いつも楽しい時間を与えてくれた。

お酒が好きで、いつも

「うちに飲みに来なよ」

って気軽に誘ってくれた割には、彼はいつも仕事で忙しくしてるから、
僕も遊びにいくタイミングを逃してしまって結局叶わぬまま。
行こうと思えば、行ける日もあったのに、なんで行かなかったんだろう。
今となっては、後悔だけが残る。

仕事を終え、急いで電車に飛び乗り、鎌倉に着いた時には、
すっかり、お通夜も終わっていて、
中に入れてもらうと、ご主人共々お世話になってる
奥様と、ご主人のご家族、親戚の方々がいて
深々と御礼をされてしまい、

「違いますよ、お世話になってたのは僕の方ですよ」

と、言ったけど僕は声が出なかった。

自宅治療になってからの自宅でのカットの事も
すごく感謝された。
簡単に言えば、はっきり言えば、
今の僕にはカットする以外の方法が
見つからなかったのだ。それしかなかったのだ。
感謝される事の程ではないんです。

僕はお焼香をして、顔を見た。
いつもと同じような笑顔だった。
月並みな言い方だが、眠っているようだった。
今にも、起きて僕に

「暑いから髪の毛切ってくんない?」

と、聞こえてくるようだった。

ご家族とお話しさせて頂き、その時に初めて知ったのが、

「あの子は、髪の毛に関しては、いつもうるさくて気に入った美容師を
 見つけた事がなくて、美容室に行っては文句ばかり言って。。
 でも、フチガミさんの所に行った日に、よほど嬉しかったらしく
 『すげ~、良い美容師見つけた』
 と周りに言ってたんですよ。」 と。

聞けば8年間ずっと自慢してたみたいだ。

もうさ、もし可能なら彼に言いたいんだけど、

僕とか、自慢する程スゴい美容師じゃないし、
今だって、仕事の事とかどうしたら良いか分からない程、
悩んでるから。
8年間とかずるいよ。知らなかったし。そんな素振りも一つもなかったじゃん。
もう、今更そう言う事を知ってさあ、どうやってこの恩を返せば良いですか?

なくなってから気づく大切な事ってたくさんありすぎる。
なんで、気づけないんだろうか?
気づけていれば、出来ていた事がたくさんあるのに。
なんで、失ってから大事な事に気づくのだろう?
できるなら、大事な事は失う前に気づきたい。

だからこそ、僕はもう少しこの世を、
この日々を生きていきたいと思います。
懸命に生きていこうと思います。
彼の分まで、生きていこうと思います。
大切なものを失う前に気づけるように。

道ばたに咲いている花を綺麗と思えるような、
何気ない事も嬉しく思えるような、
一日を生きれた事を喜べるような日々を
生きていこうと思います。

ご冥福をお祈りいたします。
また、髪の毛を切らせて下さい。


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1 コメント

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Unknown (あきこ)
2007-09-21 13:20:31
その方は
ふちがみさんに出会えて
しあわせだったと思いますよ。

客側からしてみれば
出張してまで髪を切ってもらえるなんて
とても嬉しいことです。

私が
引越ししてあちこち浮気しても
ふちがみさんのところに戻るのも
同じような理由だと思います。

今月末か来月アタマに行くので
待っててください。
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