北京「人類の居住に適さぬレベル」 大気汚染、シンクタンク報告書
中国北京市周辺でここ数日、深刻な大気汚染が続いている。米大使館サイトによると、15日未明には微小粒子状物質「PM2・5」を含む大気汚染指数が、最悪レベル(危険)の値の範囲を超える600近くとなった。
政府系シンクタンク、上海社会科学院などがこのほどまとめた報告書は、北京の大気汚染状況を「人類の居住に適さないレベル」と指摘。呼吸器系疾患などの健康被害も相次いでおり、当局の対応の遅れに対する市民の不満が高まっている。
北京市周辺では春節(旧正月)から15日目の元宵節を迎えた14日、大量の花火が打ち上げられ、汚染が深刻化した。15日も有害物質を含む濃霧が発生し、数十メートル先の建物が白くかすんだ。
米大使も逃げ出す北京のすさまじき「PM2・5」、外国人ビジネスマン・中国人ホワイトカラーも…あまりの酷さに“遷都論”も浮上
空気の悪さに耐えられなかった?
「大使の辞任理由を答えてほしい。大気汚染や家庭の問題だなどという噂が出ている。大使が数年で辞任すると、米中関係を維持するのは難しいのではないか」
米国からの報道によると、米国のゲーリー・ロック駐中国大使の辞任意向が明らかになった2013年11月20日、米国務省の会見で中国人記者が辞任理由を明らかにするよう、サキ報道官に詰め寄った。
ロック氏は2年前に中国系アメリカ人として初の駐中国大使に就任。在任中は盲目の人権活動家、陳光誠氏の米国出国に尽力、チベット自治州の視察も行った。
また、中国政府が何度も中止を求めていた、米国大使館によるPM2・5の独自測定の数値の公表を続けるなどしていたことから、「空気の悪さに耐えられなかった」との噂が飛び交っていた。
辞任の理由について、ロック氏は後日、「北京の空気の質は憂慮しているが、それが帰る理由ではない」と噂を否定した。しかし、逆に、中国メディアが躍起になるほど、北京の大気汚染が深刻化していることを裏付ける形となった。
米大使も逃げ出す北京のすさまじき「PM2・5」、外国人ビジネスマン・中国人ホワイトカラーも…あまりの酷さに“遷都論”も浮上
中国の英字紙「チャイナ・デーリー」は2013年11月、「灰色の北京から脱出」とのタイトルで、大気汚染が深刻化している北京から、多くの外国人ビジネスマンや中国人のホワイトカラー層が逃げ出していると、紹介している。
また、現地からの報道によると、30歳代前半の若い世代を中心に、北京に嫌気がさし、給料が下がるのも覚悟で、広東省など南部への転勤を希望するケースが増加しているという。
一方、中国国家観光局によると、1~9月に中国を訪れた外国人観光客は前年同期比で5%減少。別の報道では、今年上半期の北京の訪問客は前年同期比で約15%減少、上海や福建省アモイなどの沿岸地域でも減少傾向があるとしている。
上海市では、マスクとつながった、重さ15キロもあるという空気清浄機を背負いながら、上海市の市場で買い物をする中国人女性が「空気清浄機おばさん」として各メディアで取り上げられるなど、北京以外の都市でも大気汚染が深刻化している。
米メディアなどによると、米国の駐中国大使館は約5千台の空気清浄機を職員の住居用に購入。フランスやフィンランド、オランダなどの各国大使館も同様に空気清浄機を導入するなど対策をとっている。
欧米などの企業では、中国から離れたがるスタッフに、予定外のボーナスを与えたり、一時帰国のための特別休暇を設けたりするなど、引き留めに躍起になっているという。在中国の欧州連合(EU)商工会議所の調査では、約4割の会員企業が「人材の引き留めに苦労している」と回答している。
米大使も逃げ出す北京のすさまじき「PM2・5」、外国人ビジネスマン・中国人ホワイトカラーも…あまりの酷さに“遷都論”も
北京周辺では秋から、有害物質を含んだ霧が頻繁に発生、視界悪化による交通事故なども多発している。石炭を使った暖房などで、冬場はさらに大気汚染の悪化が予想されている。
香港紙などによると、米国の女性ジャズ歌手、パティ・オースティンさんが10月、ライブ公演を予定していた北京に到着後、ぜんそくの発作を起こし、公演が中止となった。
ネット上には「北京の空気にいぶされた」「空気が悪すぎて彼女に害を与えてしまった」との書き込みが行われた。北京の大気汚染は解決の糸口がみえず嘆くしかない状況だ。
北京市衛生当局によると、北京市の10万人当たりの肺がん患者は2002年が39・56人だったのに対して、11年には63・09人にまで増加しているという。
こうした末期的な環境汚染が続くなかで、ネット上では、北京が首都である必要性を問う遷都論まで飛び出している。
中国に限らず、日本でも遷都は大規模な争乱などに伴って行われるが、次に中国で遷都が行われるときは、中国共産党に代わる新たな「王朝」が誕生しているかもしれない。
JR東、備え手薄な関東圏でダメージ
東北、上越、長野などの各新幹線は15日、安全確認のため始発から全線で運転を見合わせるなどした。“雪に強い”はずのJR東日本の各新幹線で相次いだ運休、遅延の原因を、同社は、予想を上回る積雪に加え、雪対策設備が手薄な東京に近い関東圏で広く降雪があったためとみている。
東北、秋田新幹線は午前8時半すぎに運転を再開したが、ポイント切り替えが正常に作動するかなど、設備確認や除雪作業が追いつかず、長野新幹線は全線で終日運休。上越新幹線も高崎-越後湯沢間で運休が夜まで続いた。山形新幹線は福島-米沢間の除雪作業が難航。福島-新庄間でほぼ終日運転を見合わせた。
JR東日本によると、豪雪地域には融雪装置などを設置しているが、例年は比較的雪の少ない東京に近い関東圏では必ずしも備えられておらず、そこへ短時間に大雪が降ったことが理由の一つとみる。
対策を取っている地域でも、「予想を超える雪が一気にあり、除雪作業が思い通り進まなかった」(同社)としている。
一方、東海道新幹線は一部区間で速度を落として運転。上下95本が遅れ、約6万5千人に影響が出た。