それにしても、よくカネが続くものだと思う。まるで、何かに取りつかれたように弾道ミサイル発射を繰り返す北朝鮮の金正恩政権の財布のことである。「穴がある」とは指摘されるものの、国連制裁もかなりきつい。研究・製造に必要な資機材、燃料や部品、原材料の調達も簡単ではないだろうに、今年は既に12発も発射した。祖父と父親2世代の約27年間に31回だった発射回数は正恩氏の5年あまりで70回を超えている
算出根拠は不明ながら、韓国政府は北のミサイル1発当たりのコストについて、スカッド系で5億~7億円、ノドン系で11億円などと推計している。これに倣えば今年3月、「スカッドER」4発を一斉発射して日本の排他的経済水域(EEZ)に3発を着弾させた際には20億~28億円を消費したことになる。「生産人件費がゼロなので開発に成功すれば、その後はただみたいなもの」(海自関係者)とはいえ、部品素材や燃料は補給しなければならない
専門家によると、4月に実験をした米軍のICBM(大陸間弾道ミサイル)ミニットマンは1発当たりのコストが約700万ドル(約7億7千万円)。北朝鮮絡みでいえば米軍はこのほかに、莫大(ばくだい)な経費をかけて日本海に空母打撃群を2つも展開している
ミサイル搭載カメラから地球を撮ったものまであり、翌日には国営メディアが「大成功だ」「合格だ」「量産だ」と満面の笑みを浮かべる金正恩氏とミサイルのツーショット写真を配信する
社運をかけた新製品の開発に成功した個人メーカーの経営者のようでもある。発射されると、商品のミサイルは大きく写真付きで報じられる。世界のメディアは“金正恩社長”と製品のミサイルを売り込むカタログの拡散に一役買わされているのだ