子供の頃、小学校の低学年の頃であったろうか学校から帰ると両親が居ない事の方が多かった。寒い時などは布団にくるまって木目の天井を眺めていた。木目模様は複雑に絡み所々に節目があった。
不思議なもので模様は時には風景に、または人の顔などに見えて愉快であった。少ない情報量に貧しい想像力だが何とかなっていた。こうしてはいられないと一枚五銭のワラ半紙に五円の鉛筆で絵を描きだしたものだ。
母親からは一日に十円の小遣いを貰っていた。それで紙を買ったり鉛筆を買ったりして、余裕があれば飴の変わり玉を買ったりして舐めながら絵を描いていた。傍らには月遅れの漫画雑誌があった。
絵は、さいとうたかを先生のジェームズ・ボンドに近づけてみた。