「足るを知れ」
老子の教えの中から 第九章 ほどほどに生きる
(原文)
持而盈之、不如某巳。 揣而鋭之、不可長保。
金玉滿堂、莫之能守。富貴而驕、自遺其咎。功邃身退、天之道。
持(じ)して之(これ)を盈(み)たすは、其(そ)の已(や)むるに如(し)かず。
揣(し)して之を鋭くするは、長く保つ可(べ)からず。
金玉(きんぎょく)の堂に満つるは、之を能(よ)く守る莫(な)し。
富貴(ふうき)にして驕(おご)れば、自(みずか)ら其の咎(とが)を遺(のこ)す。
功遂(と)げて身退(しりぞ)くは、天の道なり。
(訳文)
容器にものを盛り過ぎるとすぐにこぼれてしまうので、何事も適当なところで
やめておいたほうがよい。
刃物を研ぎ過ぎてあまりに鋭くしてしまうと、かえって長持ちしなくなる。
金銀財宝が部屋の中に溢れていると、いつまでも守りきることは誰にも
できない。
富貴の身で傲慢な態度を取り続ければ、必ずや自ら災いを招く。
事業が成功し、名声が上がれば、思い切って勇退することだ。
それが自然の道に従う生き方である。
参照: マンガでわかる老子《入門》 日本能率協会マネジメントセンター
著者 周春才(ジョウ・チュンツァイ) 訳者 漆嶋稔(うるしま・みのる)
人間はなにごとも腹八分目が丁度良いとよく言われます。
消化にも心臓の負担にもよいことは分かります。
お金持ちを目指し働き、金銀財宝を貯め込んでも新たな悩みと危険が増して
いきます。名声と事業の成功を手に入れると、次は後継者問題やより資産を
増やそうと罪を犯してまで守ろうとします。
パナマ文書の存在は、日本人も思ったより多数いるということです。
政治家や権力者は、歳をとれば周囲に迷惑をかけずにスッキリと身を
引くことが大切です。どれだけの人間がいるでしょうか。
政治家がいつまでも権力を誇示している姿を映像で観ますが、見苦しい
ですね。
また運転免許証をいつまでも手放さない老人が多いです。
高齢者の事故が増え、他人を害してまでしがみついている姿は悲しいです。
人間の欲望はきりがありません。
人間は自分が生きている間にいかに執着を手放せるか?それは大切な
人生の目的ではないかと思います。
足るを知って、ほどほどが丁度良い生き方ができれば、人間としてそれが
悟ったことになるのではないかと思うのです。
「歴代君臣図像」より老子(1)/国立国会図書館蔵