愛の輝きとつぶやき

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武士道とは?その⑤

2015-07-25 17:48:36 | 今に生きる

武士道とは何か?その⑤

その④に続き、新渡戸稲造と「武士道」について

「武士道と日本人の心」 山本博文[監修] 青春出版社 より抜粋

 

第二章 武士道の精神

 其の二  大老・井伊直弼が育んだ「茶の湯」の精神

◇礼儀が己を高みへと導く

武士特有の徳として賞賛された礼は、細心の注意をもって教えられ、広く学ばれた。

そこにはじつに細々とした規律があるが、新渡戸はそれをまったくつまらないとは思わない

とする。

なぜならそれは、ある目的に到達するための最良の道であり、もっとも優雅な道だからと

いう。

イギリスの哲学者スペンサーはこの「優雅」を、もっとも効率的な運動の仕方であると

定義する。

このことを説明するために、新渡戸が例に引いたのが茶の湯である。

日本における茶の湯の歴史は、平安時代末期、臨済宗の僧・栄西(1141~1215)が

中国・宋から喫茶法(きっさほう)を持ち帰ったことに始まると伝わる。

その後、室町時代から戦国時代になると、武将たちの間で茶の湯が流行し、茶の湯の

たしなみがない者は相手にされないほどだった。

 

茶の湯の作法には、茶碗や茶杓、茶巾などの取り扱い方に明確な手順が定められている。

初心者からすると、それらの作法は難しく、退屈なものにしか過ぎないが、

規定されている手順通りに行うことにより、時間や労力はもっとも節約される。

つまりは無駄のない動きが、一番優雅な所作(しょさ)を生み出すのである。

これについて新渡戸は、「正しい礼儀作法を絶えず修練すれば、身体のあらゆる部分、

あらゆる機能に完全な秩序がもたらされるようになり、身体そのものとそれを取り巻く

環境とが調和し、肉体と精神が統御されるようになる」と解説した。

礼儀作法を遵守すれば、高い精神的境地に達することができるのである。

 

◇一期一会の精神

そして新渡戸は、茶の湯はまた、このような精神修養には欠かせない儀式の一つでもある

とした。

幕末期における江戸幕府の大老で、日本を開国に導いた井伊直助(いいなおすけ)

(1815~60)は茶人としても名高く、自ら茶会を開き、門弟を育成するなど、終生茶の湯に

心を傾けた人物である。

その井伊が大切にしたのが、「一期一会(いちごいちえ)」の精神だった。

たとえ同じ顔ぶれであったとしても、今日このときの茶会は一生に一度しかない。

そのように考えると、何事もなおざりにすることなく、相手にも礼を尽くし、真剣な気持ちで

臨むことが肝要である。これが一期一会であり、その根底には、相手の気持ちを思いやる

礼の精神が表出しているのである。

たんに茶をすするという行為であるが、心の平静、気持ちの静穏(せいおん)、振る舞いの

静けさと落ち着きが正しい思考と感情を喚起する。

茶室という静寂境にあっては心の不安を引き離し、室内に平和と友情をもたらす。

ここに、茶の湯は儀式以上のもの、一つの芸術へと昇華したと新渡戸は語る。

 

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礼儀作法のできた方は、見ていても気持ちが良いものであり、その人の相手への

気遣いが出来ている証拠でもあります。

日本の礼儀作法は、時代が変わろうとも、おもてなしの心として残っていってほしいもの

です。

また、茶の湯は女性の趣味と考えている方も多いと思いますが、むしろ多くの男性が

習得して芯の通った精神を培っていってほしいです。

 


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