大井川鐡道井川駅ジオラマ製作レポートの最終回である。ホームの屋根の製作が、このジオラマ製作の最終工程であった。屋根の規模をトレースした紙を2枚、上図のように置いて、屋根の位置を確認した後、2枚の紙の中央を繋いだ。
周知のように、井川駅2番ホームには平成の半ば頃に屋根が設けられており、ホームが曲がっているのに合わせて屈折している。柱の数は全部で11本だが、屈折している箇所がホームの形状の関係で実際とはやや異なる。屋根の位置が車両の通る範囲ギリギリなので、車両限界との関係上、屋根の屈折部分を移動せざるを得なかったからである。
だが、よく注意して見ないと分からないような差異であるので、井川駅を熟知しているマニアの方でなければ、ほとんど気づかれないだろう、と思う。
屋根の柱と支持材は、上図のように1ミリのプラ角棒の組み合わせで作った。こういう工作はガルパン車輌プラモデル製作のほうでも何度か経験しているうえ、千頭駅の再現製作でも同様の作業をこなしたことがあるので、もう慣れていてスムーズに進んだ。
柱と上辺材の組み合わせを上図のように2セット製作した。それぞれの両端の柱だけ長くして、ホームに穴を開けて差し込む手法を採った。
ポスカで銀色に塗っておいた後、2番ホーム上のトレース紙に合わせて上図のようにセットした。その後、両者の間の上辺材を追加して繋いだ。
接着剤が固まったのを確かめて、柱の根元のホーム表面を実際に合わせて白っぽく塗った。別に透明プラ板と1ミリ丸棒で作っておいた屋根部分を組み付けた。実際は屋根板にさらに桟材が細かく付いているが、そこまで作り込むと屋根の重量が増して柱が耐えられなくなってくるため、上図の状態で完成とした。
その後、ホームの端の柵、駅名標、案内板、街灯付き電柱をプラ材やトミックスのパーツセットから選んで取りつけた。
完成後の2番ホームの様子である。屋根がいい感じで井川線らしさを醸し出しているので、この程度で良いのだと思った。ホーム端の駅名表にはちゃんと「井川」と書きこんでおいた。
上から屋根全体を見下ろした図である。曲がり方こそ違うが、ホームの曲線に沿って屋根が屈折する点は実際と同じである。屋根自体も井川駅独特のスケルトンルーフなので、透明プラ版で再現したことでリアルさが出た。
屋根の北側のホーム端にはベンチのような段差が作られていて柵と繋がっているので、その状態もプラ板でおおまかに再現した。
以上で井川駅ジオラマのメインベースの製作が完了した。延長ベースのほうは工程95パーセントまで進めていったん留めていたので、実質的に完成といっても間違いではなかった。
山裾部分の木をもう少し追加しようかと考えたが、実際には植林された杉が高く聳えて林立している部分が多いので、そこまでの再現はちょっと無理だろうと気付いて、追加は見送った。
線路をはめこんでセットした。やっぱり、線路があると一気に駅らしくなって良い雰囲気になる。
フィーダー線が邪魔なので、これは後で取り外すことにした。駅構内のポイントはあまり頻繁に使わないので、手動でも充分だろうと考えたからである。
同時に、今後のジオラマ製作においてフィーダー線をどう組み込んで、目立たないように如何に隠すか、という課題がつきまとう点を再認識した。
カトーのレールはフィーダー線が裏面に内蔵されるタイプなので、上図のように導線が露出する心配が無いが、私が使っているのはトミックスのレールなので、フィーダー線は常に外付けで目立ってしまう。今後のジオラマユニットの製作において電動式ポイントなどを組み込む場合、ベースの下に埋め込むか、隠したりする工夫が必要になる。今後の大きな課題の一つだ、と考えた。
試みに延長ベースを繋いでみた。上図のように線路も延ばせて、アプト式列車ならば客車7輌編成までが入れるし、二つの側線にも客車なら5輌編成まで、貨車なら10輌編成までを待機出来る状態になる。3編成の列車を入れて、昭和の賑やかなりし頃の井川駅の姿を再現することも可能である。
車両を配置してみた。2番ホームにアルナインのDD20形ディーゼル機関車と客車2輌を置き、側線には鉄道コレクションのジャンクパーツから製作した旧塗装の客車と貨車を置いた。これでメインベースの線路はいっぱいになるのであった。
このアングルから見ると、2番ホームの屋根が車両限界ギリギリであるのがよく分かる。実際の井川駅の屋根も同じようにギリギリに建てられているので、それを1/150スケールで再現するのには本当に苦労した。
ローアングルで見ると、いかにも井川駅らしい独特の景色が味わえる。あとは1/150スケールの情景用の人物セットなどを調達して駅員や観光客をそれらしく配置すれば良いだろう。
駅舎の上からのアングル。このような、実際には見られないアングルからの眺めが楽しめるのも模型ならばである。
こうして眺めていると、ゆるキャン聖地巡礼で井川駅へ行った時の思い出が鮮烈なほどに甦ってくるのであった。
メインベースのみだと、上図のようにアプト式列車はDD20形ディーゼル機関車と客車2輌の3輌しか入らない。実際の井川線では閑散期でも4、5輌の編成で走らせており、3輌編成というのは滅多に無いと聞いている。
駅舎前からホームをのぞいてみた。実際と同じ見え方なので、カメラのレンズをもう少し工夫して、手前の駅舎がボケないように撮れば、よりリアルになるだろうと思う。
第61番トンネルの上から1番ホームと2番ホームを見た。1番ホームの線路は今年2024年の春に踏切の部分を除いてポイントから奥のガーター橋まで撤去され、奥の堂平駅までの書類上の休線部分は実質的に廃線となった。
が、それが個人的にとても残念であるので、今回製作したこのジオラマでは、あえてまだ線路が生きている状態にしてある。1番ホームの線路の奥にガーター橋を繋いで線路を伸ばせるように作ってあるので、今後はそのモジュールを追加して楽しむという手もあるだろう。
出来たら堂平駅も再現して、大井川鐡道がついに果たせなかった堂平駅までの旅客列車運行というのも実現してみたいな、と思った。
以上、大井川鐡道井川線の井川駅のジオラマ製作の顛末を綴った。先に製作した千頭駅と合わせれば、井川線の両端の駅が揃ったことになる。
なお、この8月から9月にかけて、交流サークル仲間のモケジョさん達のサークルの一つが主催となって、鉄道模型をテーマとする初の女性限定の内覧展示会が大阪で開かれることになっている。
その主催サークルの主要メンバーとは知り合いであり、川本氏の自宅で行われた特別講習運転会でも顔を合わせていたため、嫁さんを通じて私にも特別出品の依頼があった。千頭駅と今回の井川駅を出品していただけないか、という依頼であり、快諾した。
それで、井川駅のジオラマの、完成後の保管中に外れたり破損したりした所を修理し、あわせて延長ベースの未完成部分も全部仕上げた次第である。 (了)