しばらくこの素晴らしい景色を眺めていましたが、どこからか正午を告げるチャイムが響いてきました。付近は山と湖ですから、チャイムはおそらく奥大井湖上駅か、その駅駐車場のどこかに設けられているのでしょう。
そうなると、12分後に次の千頭行きの列車が来るわけです。上図左から鉄橋をわたって奥大井湖上駅に停まり、そして右奥へと鉄橋をわたって走ってゆくのが、ここからも見えるわけです。
周囲の大勢の見物客も私と同じようにずっと待機中でしたから、アプト式列車が通るのを見物するのが目的だったのでしょう。それを撮ろうとそれぞれのカメラやスマホを構えて下の線路を注視しているのでした。
12時10分、時刻表の12時12分に奥大井湖上駅を発車する千頭行きの列車が、左から現れて鉄橋をわたってゆきました。おおー、と周囲で歓声があがって一斉にカメラやスマホの撮影作動音が聞こえました。もちろん私も撮りました。
隣に居た、若い女性の三人連れが「わー、模型みたい、ちっちゃい、かわいい」とスマホで盛んに撮っていましたが、そのとおり模型のようでした。壮大な大自然のジオラマのなかに作られたNゲージの模型のように見えました。あれ本物だよな、本物が走ってるのが小さく見えるだけだよな、と思ってしまいました。
列車が減速しつつ、奥大井湖上駅に進んでゆきました。
望遠モードで撮りました。後ろから3輌目の側面の半分が駕籠状に見えたので、あれ何だろう、と望遠モードに切り替えたのでしたが、上図で改めて見ると、展望デッキのような造りの車輌に見えました。初めて見る、変わった構造の客車でした。全ての列車についているのかな、と思いました。
駅のホームに停まりました。ホームは西側が湖上の鉄橋上に伸びていますから、先頭の牽引機関車から3輌目までは湖上に停まっている状態でした。こんな様子が見られるのは日本でもここだけです。必見の価値があります。
12時12分、発車のベルが響いてきました。
列車が動き始めました。
本当に模型のように見えました。鉄橋がいかに高いかが改めて分かりました。
安全および接岨湖遊覧のため、鉄橋上では徐行運転しています。遠くから見るとかなりゆっくりした速度に感じられますが、並ぶスマホやカメラが賑やかに作動していましたから、絶好の撮影タイミングであるのでしょう。確かに湖上の列車の姿はインスタ映えすると思います。
のんびりと進んでいました。私がこちらへ乗ってきた列車も同じように徐行してゆっくりと進み、車内では接岨湖案内のアナウンスが流れていましたから、あの列車内でも同じような状況なのだろう、と思いました。
だんだんと遠ざかってゆきました。
そして右側のトンネルに入ってゆきました。約4分ほどの鉄道模型見物みたいな楽しいひとときでした。帰りの便を1つ飛ばしておいて大正解でした。作中では、各務原なでしこはこの湖上の列車の風景を見ずにすぐに引き返していちしろキャンプ場へ戻っていますが、1便飛ばしてこの風景を見ていっても、ストーリーそのものは大して変わらなかったのではないか、と思います。
ともあれ、素晴らしい景色と楽しい模型みたいな列車の風景を満喫出来ました。これでもう大満足だ、と足取りも軽く湖上遊歩道を引き返して降りました。 (続く)