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2019/4/1,1639字
2018/12/14,=楊海英(静岡大学教授)=一帯一路(大唐世界帝国シルクロード復活)戦略、技術経済軍事覇権、共産党一党独裁国家中国の電子商取引大手アリババ・ドットコム創業者の馬雲(ジャック・マー)会長だ。米フォーブス誌によると馬雲の資産は346億ドルに達し、中国の長者番付トップの座を占めてきた。今年9月、来秋には会長を退くと表明。政治に「清純」な彼は中国政府との「恋愛関係」に疲れ果てた末、第一線から引退して優雅な暮らしを送るのだろう──そう思われた矢先、マーが中国共産党員だと発覚し、世界に波紋を広げた。共産党機関紙・人民日報が11月26日に公開した「改革開放に貢献した表彰者」リストにマーも含まれていた。共産党は党員を受け入れる際に、厳しい審査を長期にわたって実施。「共産主義の実現に命をささげる」と宣誓して、最終的に入党が認められる。そのような政治的洗礼を受けていたならば、マーは一企業人として資本主義風に金を稼いできたのではなく、隠れ共産党員として市場原理を利用し、党と政府のために工作してきた、と言えよう。日米の政財界と太いパイプを築いたのも、リベラルな企業人として世界経済に貢献したというよりも「高級スパイ」として潜入したとみたほうがいいかもしれない。そもそも中国ではアリババほどの規模になると、政府や共産党の触手から逃れて市場原理だけで経営などできない。改革開放を掲げた政府の「社会主義市場経済」は建前。実際の中国経済は共産党員である「赤い資本家」が国家資金を駆使して、国民を搾取する官営資本主義だ。こうしたシステムは80年代にトウ小平が設計。その後は江沢民(チアン・ツォーミン)政権が制度化して企業家の入党を促し、政府高官と団結させて国有企業を支配した。労働者と農民の代表を自任する共産党が、ストライキ権を認めずに膨大な利益をひたすら搾取してつくり上げたのが中国の企業群だ。党員が「赤い資本家」として活躍している事実に即して言えば、中国には厳密な意味での私有企業は存在しない、と経済学者たちがみても無理はない。それでも彼ら隠れ共産党員が純粋な企業人のふりをするのは、外国の資本や技術を呼び込むため。こうして成功した一例が、05年に亡くなった栄毅仁(ロン・イーレン)だ。栄一族は清朝末期に上海で繊維工場を起こして成功し、中国から東南アジアにかけて一大勢力を成していた。1949年に中華人民共和国が成立した後、資本家の大半が香港か台湾に避難したが、栄は上海に残る選択をした。膨大な資産を共産党政府に提供しながら、非共産党系の民主党派、中国民主建国会(民建)の指導者になる。66年に文化大革命が始まると、栄はいち早く「資本主義の道を歩む者」として失脚したが、その後復権。79年にトウの指示により、中国国際信託投資公司(CITIC)を設立し、初代最高経営者になる。父親世代の人脈を利用して日本や欧米からの外資導入に尽力し、改革開放政策を支えた。当時、首都・北京で遊学していた私=楊海英(静岡大学教授)=の目には、市内で一番の高層建築だったCITICビルはまばゆく輝く資本主義の象徴そのものだった。その後、栄が05年に死去して葬儀が営まれたとき、鎌とハンマーのマークが入った真っ赤な共産党旗が棺桶を覆っているのには驚いた。89年6月の天安門事件で民主化を求める市民が弾圧された際も、栄は政府に市民との対話を呼び掛けるなど、民主派の代表的存在だったからだ。だが実際は共産党員として、民主派を指導していたわけだ。今、IT大手のアリババはグローバル企業として世界に君臨している。これは商才というよりも、独裁と暴力で共産主義の拡張を目指す中国共産党の経済力が世界を支配しつつある事実を抜きにしては語れない。「赤い資本家」とどう付き合っていくか──欧米も隠れ共産党員の浸透に驚いてばかりはいられない時代になった。https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20181214-00010003-newsweek-int&p=2
2019/4/1,1639字
2018/12/14,=楊海英(静岡大学教授)=一帯一路(大唐世界帝国シルクロード復活)戦略、技術経済軍事覇権、共産党一党独裁国家中国の電子商取引大手アリババ・ドットコム創業者の馬雲(ジャック・マー)会長だ。米フォーブス誌によると馬雲の資産は346億ドルに達し、中国の長者番付トップの座を占めてきた。今年9月、来秋には会長を退くと表明。政治に「清純」な彼は中国政府との「恋愛関係」に疲れ果てた末、第一線から引退して優雅な暮らしを送るのだろう──そう思われた矢先、マーが中国共産党員だと発覚し、世界に波紋を広げた。共産党機関紙・人民日報が11月26日に公開した「改革開放に貢献した表彰者」リストにマーも含まれていた。共産党は党員を受け入れる際に、厳しい審査を長期にわたって実施。「共産主義の実現に命をささげる」と宣誓して、最終的に入党が認められる。そのような政治的洗礼を受けていたならば、マーは一企業人として資本主義風に金を稼いできたのではなく、隠れ共産党員として市場原理を利用し、党と政府のために工作してきた、と言えよう。日米の政財界と太いパイプを築いたのも、リベラルな企業人として世界経済に貢献したというよりも「高級スパイ」として潜入したとみたほうがいいかもしれない。そもそも中国ではアリババほどの規模になると、政府や共産党の触手から逃れて市場原理だけで経営などできない。改革開放を掲げた政府の「社会主義市場経済」は建前。実際の中国経済は共産党員である「赤い資本家」が国家資金を駆使して、国民を搾取する官営資本主義だ。こうしたシステムは80年代にトウ小平が設計。その後は江沢民(チアン・ツォーミン)政権が制度化して企業家の入党を促し、政府高官と団結させて国有企業を支配した。労働者と農民の代表を自任する共産党が、ストライキ権を認めずに膨大な利益をひたすら搾取してつくり上げたのが中国の企業群だ。党員が「赤い資本家」として活躍している事実に即して言えば、中国には厳密な意味での私有企業は存在しない、と経済学者たちがみても無理はない。それでも彼ら隠れ共産党員が純粋な企業人のふりをするのは、外国の資本や技術を呼び込むため。こうして成功した一例が、05年に亡くなった栄毅仁(ロン・イーレン)だ。栄一族は清朝末期に上海で繊維工場を起こして成功し、中国から東南アジアにかけて一大勢力を成していた。1949年に中華人民共和国が成立した後、資本家の大半が香港か台湾に避難したが、栄は上海に残る選択をした。膨大な資産を共産党政府に提供しながら、非共産党系の民主党派、中国民主建国会(民建)の指導者になる。66年に文化大革命が始まると、栄はいち早く「資本主義の道を歩む者」として失脚したが、その後復権。79年にトウの指示により、中国国際信託投資公司(CITIC)を設立し、初代最高経営者になる。父親世代の人脈を利用して日本や欧米からの外資導入に尽力し、改革開放政策を支えた。当時、首都・北京で遊学していた私=楊海英(静岡大学教授)=の目には、市内で一番の高層建築だったCITICビルはまばゆく輝く資本主義の象徴そのものだった。その後、栄が05年に死去して葬儀が営まれたとき、鎌とハンマーのマークが入った真っ赤な共産党旗が棺桶を覆っているのには驚いた。89年6月の天安門事件で民主化を求める市民が弾圧された際も、栄は政府に市民との対話を呼び掛けるなど、民主派の代表的存在だったからだ。だが実際は共産党員として、民主派を指導していたわけだ。今、IT大手のアリババはグローバル企業として世界に君臨している。これは商才というよりも、独裁と暴力で共産主義の拡張を目指す中国共産党の経済力が世界を支配しつつある事実を抜きにしては語れない。「赤い資本家」とどう付き合っていくか──欧米も隠れ共産党員の浸透に驚いてばかりはいられない時代になった。https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20181214-00010003-newsweek-int&p=2