そこは無印良品と同じだ。とはいえ、現代の日本人で食糧危機を実感している人などいるのだろうか。
「そうですね、世界的視野では現実的な問題ですが、私も含め、日本で差し迫った危機感を感じることはないでしょう。ただ国内においても、気象変動や食料輸出入の安全保障などに左右されずに、食糧を供給できるようになったほうがいい。昆虫食も選択肢のひとつとして考えてもいいと思います。そこで私たちの飼育のノウハウが、社会の役に立てるのではないかと考えました」(同・三戸准教授)
すでにコオロギ生産のための大学発ベンチャーも立ち上げた。
「私たちが生産しているフタホシコオロギは、国内では沖縄など温かいところにしか棲息していません。基本的に本州にはいませんが、ペットショップでは爬虫類などの餌として売られています。体長は2〜3センチ、1匹0・8グラムほどのコオロギですが、現在、乾燥パウダーとしては月産数十キロほど。新しい工場も立ち上げたので、ゆくゆくは月産数百キロにまでできれば」(同・三戸准教授)
その飼育装置も、最初はクラウドファンディングによって資金が集められた。
「16年に、“フタホシコオロギ食用化プロジェクト”として目標額50万円で資金を募りました。その際に、私たちが食べてもいないのに募集するのは無責任ですから、試食会を開催しました。パスタやたこ焼きに入れてみたり、素揚げも用意しました」(同・三戸准教授)