「人心が一つ」「成長分野である産業用領域を大きな柱」「グローバルナンバーワンを目指す計画」「伸びるチャンスが見込まれる事業」
<ワーストケースシナリオと設計余裕は必須か>
<ユーロの為替予約は可能>
<一帯一路・海外遠征・戦狼外交、国家安全維持法=国内・域外・事後遡上適用・法=施行、共産党一党独裁政府中国発行の元と三権分立普通選挙議会制自由民主主義大統領制政府発行のドルとのやりとり、一帯一路・海外遠征・戦狼外交、国家安全維持法=国内・域外・事後遡上適用・法=施行、共産党一党独裁政府中国発行の元の為替予約は自由か>
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小池 利和(こいけ・としかず)
ブラザー工業 会長
1955年愛知県生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業後、79年にブラザー工業に入社。82年ブラザーインターナショナル(U.S.A.)に出向し、主力がタイプライターから情報通信機器に移るなか、米州で通信・プリンティング事業の拡大に尽力した。2000年ブラザーインターナショナル(U.S.A)社長に就任。05年に帰国。07年にブラザー工業社長に就任。18年から会長。
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小池 利和(こいけ・としかず)
ブラザー工業 会長
1955年愛知県生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業後、79年にブラザー工業に入社。82年ブラザーインターナショナル(U.S.A.)に出向し、主力がタイプライターから情報通信機器に移るなか、米州で通信・プリンティング事業の拡大に尽力した。2000年ブラザーインターナショナル(U.S.A)社長に就任。05年に帰国。07年にブラザー工業社長に就任。18年から会長。
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(ブラザー工業 会長 小池 利和 取材・構成=村上 敬)
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2020/11/05 11:15
複合機、プリンターなどの通信・プリンティング事業はブラザー工業の中核事業である。ブラザーミュージアムにて。 - 撮影=永谷正樹
(プレジデントオンライン)
PRESIDENT Online 掲載
通信・プリンティングや家庭用ミシン事業を手がけるブラザー工業は、海外売上比率が8割を超えるグローバル企業である。そのため世界経済変動の影響を受けやすいのだが、逆風のときには守りに徹し、追い風のときには果敢に攻めて、事業構造を大きく変革してきた。この成長を導いてきたのが、小池利和会長である。独特の戦略の考え方について聞いた。
■コロナ禍で心配なのは、社員の意識
——コロナで世界経済がダメージを受けています。影響をどう見ていますか。
危機を乗り切るときに、人心が一つにならないと、うまくいかないものです。
■今はむしろ、成長分野へのチャレンジを加速
——社長に就任された2007年は売り上げ約5700億円。それが翌年(08年)はリーマンショックの影響で約4800億円まで落ち込みました。その後はⅤ字回復されていますが、いまのコロナ禍と当時ではどう違いますか。
数年前にブラザーが成長分野と位置付ける事業にかなり人員をシフトしました。社員たちは未知のことに直面し苦しんでいますが、苦しみは勉強になるからいい、挑戦して失敗しろ、と口酸っぱく言っています。なんとしても、成長分野である産業用領域を大きな柱に育てていかなといけない。
■誰にでもわかる、グランドデザインを描け
——苦境を乗り越えて、その後は事業構造を大きく変革したわけですが、リーマンショックから復活して、どのように攻めるのがいいと考えたのか、聞かせてください。
リーマンショックから立ち直ってみると、牽引役の通信・プリンティング事業以外は、工業用と家庭用のミシンなど成熟事業が大半でした。
「成長への再挑戦」と定義し、グローバルナンバーワンを目指す計画を立てたのです。
■事業の位置付けを、2つにわける
——各事業がグローバルナンバーワンを目指した成果はどうでしたか。
①伸びていない市場で無理をしてシェアをとりにいくのは、コストをかけた割には得るものが少なく、得策といはいえない。今の規模のビジネスで利益をきちっと出す。そのことを徹底する。
②一方で、伸びるチャンスが見込まれる事業には、人材を投入し、設備投資をするなど、経営のリソースを積極的に入れて、グローバルナンバーワンやカテゴリーナンバーワンを目指す。
①収益に貢献する事業を強化しながら、②次なる経営の柱となる成長事業へ積極的に投資していくという戦略です。①収益に貢献する事業と位置付けたのは、通信・プリンティング事業と通信カラオケ事業です。
——では、次なる成長事業への取り組みはどう着手したのでしょうか。
【小池】②次なる成長事業として、目をつけたのが産業用印刷事業でした。ペットボトルや缶などに印刷する市場はこれから大きな伸びが見込まれます。
この分野に関して弊社はノウハウがゼロ。自前で育てていたのでは、市場の変化に追いつかない。それでイギリスにある産業用印刷大手・ドミノ社を2015年にM&Aしたのです。ブラザー史上最大の買収額となりましたが、これによって産業用印刷を成長事業と位置付け、人員も投資も大きくシフトさせました。
■他社は減産決定、当社は増産決定
——コロナ禍とリーマンショックのときとでは状況が異なりますが、経営危機への対処に学ぶべきことが少なくないと思います。いまでも役に立つ対処の方策はありますか
POS(商品の実売数値)データの推移を見ていると、プリンター、複合機など本体の売れ行きも、消耗品の売れ行きも落ちていない。真実はPOSの実売データにありで、減産する必要なし、と判断しました。売れ行きは依然として堅調でしたので、その情報をもとに、流通段階でまもなく製品が不足するだろうと先読みをして、増産に踏み切りました。これによって、市場に弊社の商品が行き渡り、シェアを拡大できたのです。
■データはあくまでも、過去の結果
—いつ頃からデータの重要さを認識されたのでしょうか。
売掛金、在庫金額、借入金、回収金額を一目でチェックできるスプレッドシートを考案したのです。売掛金、在庫回転率の変動を週単位でチェックすることで、精度の高い販売、生産計画を立てられるようになりました。 競合の動向、季節的要因、販売プロモーションなどが影響して、イレギュラーなデータが出てくるからです。
■ふだんから、悪いシナリオを想定しておく
——それらの集積した「精度の高いデータ」を、経営判断にどう生かすのですか。
報告で上がってきた数字が想定範囲を超えていたら、どうしてその数字になったか、原因を精査するのです。市場で起こっている変化や、コストの変動などに気づいて、早期に手を打つができます。
また、私の場合、経営に関する数字をもとに、日ごろからシミュレーションをしています。数年先の会社の姿や、競合会社との対比などを勘案しながら、いいシナリオだけでなく、悪いシナリオも想定しておくのです。そうすると、想定外の事態が起こったときに、必要以上に不安に駆られて迷走しないで済む。コロナ禍による売り上げの変動予測やキャッシュフローに基づいた経営見通しをアバウトながらお話しできたのも、日ごろからあれこれとシミュレーションをしているからです。
■経費は削るが、人は削らない
——逆風のときに経営判断が問われるのが、不採算事業への対応です。傷口を広げないようにリストラや撤退策を講じるのが常道ですが、リーマンショックのときはどう判断されたのでしょう。
。赤字がそれ以上拡大しないように、操業率が下がって余剰になっている人員を他部門に配置転換するなどの工夫をして、事業の存続を図ることにしました。
■1年間、我慢の時期を乗り越えたら、オーダーが殺到
——存続させることにした赤字事業は、その後どうなったのでしょうか。
■大きな流れを読み、確信があれば投資
——ほかに教訓になったことは何でしょうか?
わが社は部材を仕入れて、アメリカやアジア、ヨーロッパなどいろんな国にその国の通貨で売っています。ドル経済圏でのやりとりはドルとドルで相殺できるからいいのですが、ヨーロッパの各国やイギリスとのビジネスは、ドルとユーロ、ドルとポンドのやりとりになります。この変動リスクを少しでも減らすことはできないか、と考えました。
リーマンショック前は、1ユーロが140〜150円台でした。イギリスなどにいくと、ハンバーガーが1000円で、タバコが1箱2000円にもする。ユーロやポンドがこんなに強い状況が永遠に続くとは思えない。そこで、今後の為替の変動に備えたリスクヘッジとして、ユーロの為替予約を行うことにしたのです。
その後、リーマンショックが来て円高になった時には、実勢レートよりも有利なレートで予約していたことで為替差益が発生し、助けられた。これで、景気回復後に一気に攻めに転じる経営体質づくりができたのです。
ともあれ、最悪のときに備えてリスクヘッジをするのが経営者の役割だと思います。