<先発優位性と性能対価格比大中小品揃え、三種ラインアップ量産価格低減か>
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2020/11/20 08:15
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土屋 哲雄(つちや・てつお)
ワークマン専務取締役
1952年生まれ。東京大学経済学部卒。三井物産入社後、海外留学を経て、三井物産デジタル社長に就任。企業内ベンチャーとして電子機器製品を開発し大ヒット。本社経営企画室次長、エレクトロニクス製品開発部長、上海広電三井物貿有限公司総経理、三井情報取締役など30年以上の商社勤務を経て2012年、ワークマンに入社。プロ顧客をターゲットとする作業服専門店に「エクセル経営」を持ち込んで社内改革。一般客向けに企画したアウトドアウェア新業態店「ワークマンプラス(WORKMAN Plus)」が大ヒットし、「マーケター・オブ・ザ・イヤー2019」大賞、会社として「2019年度ポーター賞」を受賞。
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(ワークマン専務取締役 土屋 哲雄)
PRESIDENT Online 掲載
ワークマン大成功の仕掛け人といわれる土屋哲雄さん。還暦直前だった2012年に常務取締役として同社に入社したとき、まずは会社を隅々まで観察することにしたと言います。観察し、分析することで見えたワークマンの真の強みとは――。
※本稿は、土屋哲雄『ワークマン式「しない経営」 4000億円の空白市場を切り拓いた秘密』(ダイヤモンド社)の一部を再編集したものです。
■ワークマンは「しない会社」である
■ファイブフォースのすべてを満たす珍しい企業
私は「ファイブフォース」でワークマンの強みを客観的に分析した。
1 作業服市場に業界外からの新規参入の脅威はほとんどない
2 作業服の買い手の交渉力は個人なので法人ほど強くない
3 作業服の代替品の脅威はほとんどない
4 作業服の供給者(売り手)の交渉力はワークマンに比べて強くない
5 作業服市場では個人向け製品の競争がほとんどない
このように「ファイブフォース」をすべて満たす企業はまれだ。とりわけ業界内の競争がほとんどないことに驚いた。
■あえて「大きな市場」を捨てる
■なぜワークマンで買い物をする人は値札を見ないのか
じつは製品価格は値札を見なくてもお客様にわかるよう規則性を持たせていた。
●普通の防寒ブルゾン 1900円(税込)
●耐久撥水防寒ブルゾン 2900円(税込)
●完全防水ブルゾン 3900円(税込)
■「作業服ならワークマン」と認識されている
ワークマンは作業服という小さな土俵で、高機能な製品を安く提供してきた。
ワークマンの作業服は1500円(税込)でも伸縮性や通気性などにすぐれ、高機能だ。競合メーカーは低価格帯で同レベルの製品を個人向けにつくれず、一つ上の3000円台の価格帯に移行していた。
どの業界にも言えることだが、他に先駆けて行動を起こすと競争優位に立てる。
消費財を製造しているメーカーが製品を先に出し、消費者から「あの製品ならあの会社」というイメージを定着させてしまう。「お酢のミツカン」「マヨネーズのキユーピー」などがいい例だ。
早くから個人向け作業服の旗手として事業を行ってきたために、お客様に「作業服ならワークマン」と認識されている。そのため後発企業が同じポジションを獲得しようとしたら、莫大な投資が必要だ。新規参入は非常に難しい。