晴走雨読

晴耕雨読ではないが、晴れたらランニング、雨が降れば読書、きままな毎日

『21世紀の歴史』 その1

2008-09-26 20:03:29 | Weblog
 「明日あると 信じて来たる 屋上に 旗となるまで 立ちつくすべし」

               道浦母都子「無援の抒情」より



 『21世紀の歴史』(ジャック・アタリ著 作品社 2008年刊)

 本書は、フランスで大ベストセラーになり、それがきっかけにサルコジ大統領は、諮問機関として「アタリ政策委員会」を設置、21世紀のフランスの国家戦略を議論したという。

 約350ページ全6章からなるが、281ページまでは、悲観的な未来予想が延々と続き、まさに地獄絵図である。最終の第6章で、ようやく人類に可能性を感じさせるような「転回」があり、そのために今取り組まなければならない政策が提言される。

 ストーリーは、おおよそ以下のようなおとぎ話である。
 米帝による世界支配は、2035年以前に終焉する。続いて、世界は多極化し、超帝国、超紛争の時代に突入する。気候変動による被害、領土をめぐる紛争、石油、水資源、宗教などによる紛争状態である。そして、2060年頃、最後に超民主主義が勝利する。

 ただ、なぜ、フランス政府がおお真面目でアタリのこのような言説を国家戦略の構築に活用しようとしているのか。

 反対に、この国は、このような戦略的な試みさえ無く、場当たり的な国家戦略しかないことも問題である。米帝の後をシッポを振って着いていっても、後15年で、否、その前に放り出される運命なのに。


 生産力と生産関係、上部構造と下部構造など唯物史観的思考に慣れてしまっている私にとっては、本書のような未来予測は、その根拠がわかりにくく、歴史の必然性が感じられない単なる予想にしか思えないのであった。

 次回、本書の中で断片的に出てくる日本に関する記述についてふれる。


コメント
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