奈良県教育委員会メールマガジン「E-夢はっしん!」に掲載されていましたので
参考までに全文コピーをしました。
教育委員長就任挨拶
子どもたちに生きる力を育むために
(春日大社宮司)
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このたび、奈良県教育委員会の委員長を務めさせていただくことになり、その重責に身の引き締まる思いです。私は、奈良県の子どもたちが、将来を生き生きと過ごすことができるための力を身に付けて欲しいと願っています。また、郷土奈良の文化や地域に誇りをもち、それを力として欲しいのです。その力添えをしたいと思います。
国では、教育委員会制度改革についての論議が進められていますが、まずは、今、目の前にいる子どもたちの健やかな成長に向けての支援、そして、その最前線である学校現場への支援を何よりも大切にすることが委員会としてもっとも肝要であると考えています。
まず、本県のデータから分かる教育課題の一つに「規範意識、社会性の向上」があります。暴力行為の発生件数については、これまで全国平均を上回っていましたが、今回の調査では、先生方の努力や保護者との連携により、全国平均を下回ることができました。(平成24年度児童生徒の問題行動等生徒指導上の諸問題に関する調査)しかし、「学校の規則を守っている」、「いじめは、どんな理由があってもいけない」と回答した子どもの割合が依然として全国平均に比べやや低いことが明らかになっています。(平成25年度全国学力・学習状況調査)
今年度、本県では規範意識の向上に関わって、県内の公立小・中・高等学校の児童生徒を対象に独自アンケート調査を実施しました。その結果を分析したところ、学校・家庭・地域が手を携えて子どもと関わることで、子どもの公共心が高まり、規範意識を向上させる可能性が示唆されました。このことは、現在、本県が取り組んでいる「地域と共にある学校づくり」の推進が、子どもの規範意識の向上においても有効であることを裏付けています。近所のおじさん、おばさんなど年齢・世代を超えた心のつながりをもつ地域の中で子どもを育てることが大切なのです。
電車内でお菓子を食べたり化粧をしたりするなどのマスコミ報道等もありますが、日本人全体として「公共心」や「規範意識」が低下してきていると感じています。このように客観的データで裏付けられることにより、その改善の糸口が見え、本県の取組の推進が必要かつ重要であると示されたと考えます。
外国から見て、日本人の特性は、「勤勉である」、「正直である」、「真面目である」、などとよく言われています。「公共心」や「規範意識」も含めて、このような日本人の特質は、農耕により生活をつむぐ中で、自然を大切にし、和をもち、多くの人々との協力を大切にし、恵みに感謝し、真面目に一所懸命生きてきたことによるものではないでしょうか。「ふるさと(地域)が豊かな心を育む」、そういうことができる奈良、そして日本であり続けることが大切だと思います。
昨今、地域社会の絆が弱くなるにつれ、この機能が失われようとしていますが、ふるさと(地域)で育んできた本当に大切なことをもう一度見直そうという機運が高まってきているのは本当によいことだと思っています。
本県の学校現場には教育活動の支援に多くの地域の方が入ってくださっています。こういう取組を通して、大切なものが確実に若い世代に伝わっていくことが、地域の未来をつくることにつながっていくのだと思います。将来、地域において、学校が、地域社会の中心として絆を強める役割を担ってほしいと思っています。
奈良は古(いにしえ)の都がおかれ、日本の源流、日本人の精神的な原点であると言われています。県政発展の原動力を表現する言葉である「やまとぢから」に示されているように、本県には、1300年を超える悠久の歴史をもつ、素晴らしい伝統文化が息づいています。今年度より、全ての県立高等学校において、「奈良TIME~郷土奈良の伝統、文化、自然等に関する学習~」を実施しています。郷土奈良が育んできた全国に誇れる伝統や文化を知り、愛し、語れる子どもを育てることは大変意義のあることです。
学校は、豊かな心と確かな学力、健やかな体という、人としての生きる力を育む大切な場であります。生きる力を身に付けられてこそ、将来を生き生きと過ごすことができるようになると考えます。
私は、20数年間この奈良の地で県立学校教員として勤めさせていただきましたが、教え子から子育ての話や仕事の話を聞くと、何とも暖かく嬉しい気持ちになります。教職を離れてからは、その職業の素晴らしさをより強く感じます。自身の経験を生かし、他の委員とも力を合わせながら、子どもたちと日々真剣に向き合い頑張っている学校現場を全力で支えていきたいと思っています。解決すべき教育課題はたくさんありますが、知事や関係機関との連携を図りつつ、教育委員会が一丸となり、責任をもって、これらの課題の解決に取り組んでいきたいと考えています。
奈良県教育の推進・発展のために、今後とも、ご理解とご支援を賜りますようお願い申し上げます。
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関連情報:http://www.pref.nara.jp/34293.htm#02
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