1月7日は「七草がゆ」を食べる日とされています。江戸時代、幕府が公式行事と定めた1月7日の「人日(じんじつ)の節句」を祝って食べるおかゆのことで、「春の七草」と呼ばれる7種類の草を入れます。食べると、その年の邪気を除いて万病を防ぐほか、疲れた胃を癒やす効果もあるとされます。ごちそうを食べることが多いお正月から1週間後に七草がゆを食べることは、理にかなっているのでしょうか。料理研究家で管理栄養士の関口絢子さんに聞きました。

健胃、滋養強壮、利尿などの効果も

Q.そもそも、七草がゆにはどのような草を入れるのですか。

関口さん「七草がゆの代表的な物は、『セリ』『ナズナ』『ゴギョウ』『ハコベラ』『ホトケノザ』『スズナ』『スズシロ』です。これらは、『若菜摘み』という日本古来からあった習慣と関係しています。

若菜摘みとは、年の初めに雪の間から芽を出した草を摘むことです。新春に若菜を食べると邪気を払って病気が退散すると考えられていました。元々は古代中国で、1月7日に七種菜羹(ななしゅさいのかん)という7種類の野菜を入れた温かい汁物を食べて、無病息災、立身出世を願ったとされており、若菜摘みと中国の伝統的な習慣が融合して七草がゆになったと考えられています。

日本でも、地域によって七草の内容はさまざまで、雪深い地域では先の7種類がそろわなければ、別の野菜や油揚げ、こんにゃくなどを入れるところもあるようです」

Q.七草がゆには、胃を癒やす効果もあるとされていますが、本当でしょうか。

関口さん「本当です。代表的な七草の効能には、整腸作用以外に、健胃効果、滋養強壮、利尿作用、せき止め、風邪予防、解毒作用などがあり、体調を整えて体を癒やすのに役立ちます。そもそも、おかゆ自体が胃に負担が少なく、消化吸収がよいものです。疲れた胃腸を休ませるのに役立ちますが、これら七草のそれぞれが持つさまざまな薬効が相乗的に作用するため、体にとても優しい食べ物です」

Q.最近は、昔からの風習が失われつつあるとよく言われます。七草がゆを食べる風習も失われつつあるのでしょうか。

関口さん「七草がゆに限らず、最近はお節料理も家庭で作る習慣が失われているようです。一昔前は、お節作りは年末の大仕事で保存食として食べられていました。しかし、今ではお飾り的な食べ物となりつつあります。ライフスタイルが多様化し、昔の習慣が現代の生活になじまなくなっていることが理由の一つかと思います」

Q.お正月には、お節料理や雑煮などごちそうを食べる機会が多いと思います。胃を休めるためにも、お正月からおよそ1週間後に、七草がゆを食べることは理にかなっているのでしょうか。また、3食のうちでいつ食べることが理想的ですか。

関口さん「正月から日常への切り替えの食事として、胃を休め、新たな活動に備えるという意味では理にかなっているでしょう。習わしでは、1月7日朝に七草がゆを食べます。6日夜に七草を細かく刻んで準備し、翌日朝にかゆを炊いて食べるというのが本来の食べ方です」

Q.「おかゆは質素で味気ない」という人もいます。七草がゆを食べるとき、どのようなおかずと組み合わせるとおいしく食べられるのでしょうか。

関口さん「疲れた胃腸を癒やし、体に優しい七草がゆの効果を妨げず、さらに栄養バランスを高めて、おいしく食べるのにおすすめの食材やおかずは以下です。一例ですが、参考にしてください」

【温泉卵をトッピング】
添付されているたれも一緒にかけて食べると、だしの香りもプラスされ、おいしいです。

【しらすおろし】
消化酵素のジアスターゼを含む大根おろしと、しらすにしょうゆをかけて食べてください。

【大根やカブの葉のごま油炒め】
七草の中に含まれる野菜は、おかゆに入れなくても、おひたしやごまあえにして食べてもよいものです。

【干物や漬け魚】
適度な塩気やうま味がおかゆによく合います。

【肉豆腐】
豆腐にシュンギクや肉を入れると、食べ応えのあるおかずになります。