ヴァイデンを観るために-パリ、ボーヌ、ディジョン旅日記- (上)へ
2010/11/11(木) 曇り時々雨 / Beaune-Dijon
ボーヌ近代美術館は残念ながら工事のため閉鎖されていた。
20.ボーヌのオテル・ド・ヴィレの菊飾り
21.オテル・ド・ヴィレの中庭
今回の旅で唯一予約をしていないのが、ボーヌからディジョンへの切符だけだ。列車にしてもバスにしても良いと思っていたが、バスの姿が見えなかったので列車にした。
先日、来る時は各駅停車だったが今回は途中の駅には殆ど停まらない。たかだか30分たらずの道のり。
ディジョンは駅前のホテルに予約を取っている。機能的なビジネスホテルだ。
22.ディジョンのホテル
駅前のインフォメーションで「ふくろうの道案内」を購入。早速、美術館に行ってみたがあいにく祭日で休館。11月11日は第一次世界大戦の戦勝記念日だ。
サロン・ドートンヌやル・サロンでフランスに来るとたいていこの日とぶつかる。そう言えばボーヌを発つとき胸に勲章をたくさん着けた古い軍服を着たおじさんとすれ違った。
ディジョンを2日間取っておいて良かった。
「ふくろうの道案内」とは各国語で作られたディジョンの観光冊子で日本語版もある。道にも同じ番号、矢印のプレートが埋め込まれそれに従って歩けば、主たるポイントを見逃すことはない。それに従って歩くが雨で傘が手放せず思うように写真が撮れない。
でもかつての一眼レフに比べれば片手でも写真が撮れるデジカメは素晴らしい。
途中のマルシェはかなり大規模でブルーの鉄枠とガラスのアールヌーボー建築が美しい。
昼食はマルシェ前のブラッセリ。今日の定食には前菜に牡蠣が6個付ずついている。それと羊のステーキ。
23.牡蠣を半分食べてしまってから撮影
24.ディジョンのマスタード
25.ポワソン料理
26.羊のステーキ
2010/11/12(金) 曇り時々雨 /Dijon
昨日は休館だったディジョン美術館へ。
ここにもヴァイデンの「天使」と「聖マリア」「聖人の肖像画」の小さいが素晴らしい作品があった。
27.ヴァイデンの作品
28.ヴァイデン作の聖人肖像画
本当にヴァイデンの駄作というのは観たことがない。
それにロレンツオ・ロットの秀作。イコンの数々。
ルーブルに移されたといえやはりかつてのブルゴーニュ公国。良い作品がまだまだ残されている。
1階の古いものから順次2階、3階へと観ていくうちに未だ11時半だというのに追い出されてしまった。昼休みだ。逆に1階2階は昼休みなしで、それなら3階から観れば良かったのに…。
朝食はたっぷり食べるのであまりお腹が空かない。
もう一軒のマニン美術館も昼休み。
美術館カタログを先に買って一先ずホテルに置きに帰ることにし、一休みしてから遅めの昼食を摂る事にした。
MUZは「寒いし風邪気味なので温かいシュクルートが食べたい」などと言っている。
マルシェの周りにはたくさんのブラッセリ・レストランがある。
表の黒板に今日のメニューが書かれている。昨日入ったブラッセリの今日のメニューは何とMUZが食べたいと言っているシュクルートである。
でも昨日と同じブラッセリではどうも…。と思う。
ずっと見て歩くと、ここディジョンの郷土料理「コック・オ・バン」(鶏の煮込み)をメニューに出しているところがあったので迷わずそこに入った。コック・オ・バンならシュクルート以上に温かいに違いない。
若者や中高年のお客で一杯で流行っている店である。前のお客が出たところを片付けてもらってようやく座った。
これは期待できる。と思ったのも束の間。「コック・オ・バン」は売り切れ。「ステーキかチーズ・バーガーなら出来ます。」とのことだったが後ろ髪を引かれる思いで出た。
ウエイトレスは「ごめんなさいね~」と愛想が良い。フランスはパリから離れると感じの良い人が多い。あまりぐずぐずしても昼食を逃してしまう。
29.マルシェ前のブラッセリ
仕方がないので昨日と同じブラッセリに飛び込んだ。通された席は昨日の隣。大急ぎでシュクルートを注文して…気が付くとお隣から日本語が聞こえてくる。NISSANのパリ駐在員の方で連休を利用してご夫婦でドライブ旅行とのことであった。少しの時間であったが会話も弾み楽しいひと時を過す事ができた。
早速、パリからポルトガルまでメールも頂いた。
ここではシュクルートの写真を撮り忘れてしまった。シュクルートは今までもたびたび食べています。
MUZのエッセイ「アルザス・ロレーヌ旅の味」の下の方、ストラスブールのところにシュクルートについての写真と文を載せていますので良かったらご覧下さい。
午後からは美術館の3階の残り。ミレー、テオドール・ルソー、クールベ、ドラクロワ、ジェリコーなど観るものが多い。それに珍しくモンチセリの作品が3点あった。ルオーの作品も良かったが、ヴィエラ・ダ・シルバの大作を含め多くの作品が展示されていた。ヴィエラ・ダ・シルバはポルトガル人画家だがポルトガルでもこれ程多くの作品をまとめて観たことがない。と言うよりフランスの地方美術館ではどこででも観るがポルトガルではほんの少ししか観ることが出来ないのが現状だ。
ピカソや藤田嗣治などと同時代パリで活躍した女流画家でポルトガルでも人気が高い。
藤田嗣治作品の多くが戦後の高度成長期に日本人愛好家にフランスから買い漁られたのとは違い、
ポルトガル人愛好家はヴィエラ・ダ・シルバをフランスから買い漁ることは未だ出来ないでいるのかも知れない。
30.ヴィエラ・ダ・シルバの大作
31.モンチセリの作品
古いブルゴーニュ時代の作品のみならず新しい近代の作品にも地方の美術館には見逃せないものが多くある。
マニン美術館にはペーテル・ブリューゲルの秀作があった。
只、宮殿の調度品などと一緒に絵画も展示されていて、2段掛け、3段掛けでキャプションはなく絵画だけ観るには少々観にくかった。でもここでも膨大なコレクションである。
2010/11/13(土) 曇り時々雨 /Dijon-Paris
ディジョンからパリへのTGVからの車窓風景はうっとりするほど美しい。
紅葉はもう過ぎていたが、空は明るい灰色で全てをパステルカラーに調合して牧場や畑の様々な緑はそのまま抽象絵画になってしまいそうだ。
パリのホテルは先日と同じ、本来なら4人まで泊れる部屋だがその部屋を用意してくれた。バスタブはあるし広々とした屋根裏部屋である。
この日もパリの美術館を予定していたが、少々疲れたので止めにした。
又もやベルビルまで北京ダックラーメンを食べに行くことにした。雨模様で寒いしで温かいラーメンに触手が動く。リヨン駅からメトロで比較的簡単に行ける。
32.パリ・リヨン駅
33.ベルビルの北京ダックラーメン
サンミッシェルに泊ればバスの便が良く殆どメトロは使わないで済んでいたが、リヨン駅からはバスが使いづらくメトロとRERばかりになってしまう。
ラーメンで腹ごしらえしてサロン・ドートンヌへ。
入場した時には詩の朗読が行われていたが、帰ろうと思う時にピアノコンサートが始まった。
弦を直接引っかくなどの前衛的なピアノ演奏だったが面白かった。
34.真ん中の赤いのが僕の出品作
35.ドートンヌ会場でのピアノコンサート
2010/11/14(日) 曇り時々雨のち晴れ /Paris-Lisbon-Setubal
植物園を予定していたが雨なので諦め、ゆっくり朝食を済ませ帰るだけ。
RERの切符売り場には長い行列。自動販売機で買おうとも思ったが、列に並んだ。でもRERの空港行きの切符くらいは自動販売機で買える様にしておかないと…。以前にはカルネ(回数券)を買った経験はあるのだから。
今回の旅では当初懸念していたストライキの影響が全くなくて良かった。
リスボン行きのイージージェットは満席だった。通路を挟んで2人の席は別れた。
でもその方が真ん中の狭苦しいのよりかえって開放感がありトイレにも立ちやすいし悪くはない。
リスボンに着いて久しぶりに太陽を見た気がした。上着を1枚脱いだだけでは汗が収まらなかった程だ。
-Epilogue-
ポルトガルに戻ってからの天気は連日晴である。
僕たちがフランスを去ったその日から1週間のフランスの天気予報も晴れである。それが恨めしくもある。
今までは予報で目的の日が雨でも当日になれば晴れることが多かった。そんな訳で我々は「晴れ男・晴れ女」を自負してきた。それが今回のフランス旅行でみごとに崩れ去った。
雨と言っても僕たちはぽつりと降り始めるとすぐに傘を広げたが、フランス人や観光客などの半数ほどは傘をささず、それでも道行くことができる程の小雨ばかりであった。
薬局の景品で貰った雨傘とシェルブールのスーパーで買った折りたたみ雨傘がこれ程役に立った旅もない。
行列や工事中そして雨で予定の3分の2程しかこなせなかった旅となったかも知れない。
旅人にとって雨よりも晴れるほうがありがたいに違いないが、雨に洗われた木々の緑と石畳の鮮やかさを愛でることが出来た旅にもなった。
VIT
(この文は2010年12月号『ポルトガルの画帖』の中の『端布れキャンバスVITの独り言』に載せた文ですが2019年3月末日で、ジオシティーズが閉鎖になり、サイト『ポルトガルの画帖』も見られなくなるとの事ですので、このブログに転載しました。)