武本比登志の端布画布(はぎれキャンヴァス)

ポルトガルに住んで感じた事などを文章にしています。

087. ヴァイデンを観るために -パリ・ボーヌ・ディジョン旅日記-(下)-Paris-Beaune-Dijon-

2018-12-17 | 旅日記

ヴァイデンを観るために-パリ、ボーヌ、ディジョン旅日記- (上)へ

 

2010/11/11(木) 曇り時々雨 / Beaune-Dijon

 ボーヌ近代美術館は残念ながら工事のため閉鎖されていた。


20.ボーヌのオテル・ド・ヴィレの菊飾り


21.オテル・ド・ヴィレの中庭

 今回の旅で唯一予約をしていないのが、ボーヌからディジョンへの切符だけだ。列車にしてもバスにしても良いと思っていたが、バスの姿が見えなかったので列車にした。
 先日、来る時は各駅停車だったが今回は途中の駅には殆ど停まらない。たかだか30分たらずの道のり。
 ディジョンは駅前のホテルに予約を取っている。機能的なビジネスホテルだ。


22.ディジョンのホテル


 駅前のインフォメーションで「ふくろうの道案内」を購入。早速、美術館に行ってみたがあいにく祭日で休館。11月11日は第一次世界大戦の戦勝記念日だ。
 サロン・ドートンヌやル・サロンでフランスに来るとたいていこの日とぶつかる。そう言えばボーヌを発つとき胸に勲章をたくさん着けた古い軍服を着たおじさんとすれ違った。
 ディジョンを2日間取っておいて良かった。
 「ふくろうの道案内」とは各国語で作られたディジョンの観光冊子で日本語版もある。道にも同じ番号、矢印のプレートが埋め込まれそれに従って歩けば、主たるポイントを見逃すことはない。それに従って歩くが雨で傘が手放せず思うように写真が撮れない。
 でもかつての一眼レフに比べれば片手でも写真が撮れるデジカメは素晴らしい。
 途中のマルシェはかなり大規模でブルーの鉄枠とガラスのアールヌーボー建築が美しい。
 昼食はマルシェ前のブラッセリ。今日の定食には前菜に牡蠣が6個付ずついている。それと羊のステーキ。


23.牡蠣を半分食べてしまってから撮影


24.ディジョンのマスタード


25.ポワソン料理


26.羊のステーキ

 

2010/11/12(金) 曇り時々雨 /Dijon

 

 昨日は休館だったディジョン美術館へ。
 ここにもヴァイデンの「天使」と「聖マリア」「聖人の肖像画」の小さいが素晴らしい作品があった。


27.ヴァイデンの作品


28.ヴァイデン作の聖人肖像画


 本当にヴァイデンの駄作というのは観たことがない。
 それにロレンツオ・ロットの秀作。イコンの数々。
 ルーブルに移されたといえやはりかつてのブルゴーニュ公国。良い作品がまだまだ残されている。
 1階の古いものから順次2階、3階へと観ていくうちに未だ11時半だというのに追い出されてしまった。昼休みだ。逆に1階2階は昼休みなしで、それなら3階から観れば良かったのに…。
 朝食はたっぷり食べるのであまりお腹が空かない。
 もう一軒のマニン美術館も昼休み。
 美術館カタログを先に買って一先ずホテルに置きに帰ることにし、一休みしてから遅めの昼食を摂る事にした。
 MUZは「寒いし風邪気味なので温かいシュクルートが食べたい」などと言っている。
 マルシェの周りにはたくさんのブラッセリ・レストランがある。
 表の黒板に今日のメニューが書かれている。昨日入ったブラッセリの今日のメニューは何とMUZが食べたいと言っているシュクルートである。
 でも昨日と同じブラッセリではどうも…。と思う。
 ずっと見て歩くと、ここディジョンの郷土料理「コック・オ・バン」(鶏の煮込み)をメニューに出しているところがあったので迷わずそこに入った。コック・オ・バンならシュクルート以上に温かいに違いない。

 若者や中高年のお客で一杯で流行っている店である。前のお客が出たところを片付けてもらってようやく座った。
 これは期待できる。と思ったのも束の間。「コック・オ・バン」は売り切れ。「ステーキかチーズ・バーガーなら出来ます。」とのことだったが後ろ髪を引かれる思いで出た。
 ウエイトレスは「ごめんなさいね~」と愛想が良い。フランスはパリから離れると感じの良い人が多い。あまりぐずぐずしても昼食を逃してしまう。

29.マルシェ前のブラッセリ

 仕方がないので昨日と同じブラッセリに飛び込んだ。通された席は昨日の隣。大急ぎでシュクルートを注文して…気が付くとお隣から日本語が聞こえてくる。NISSANのパリ駐在員の方で連休を利用してご夫婦でドライブ旅行とのことであった。少しの時間であったが会話も弾み楽しいひと時を過す事ができた。
  早速、パリからポルトガルまでメールも頂いた。

 ここではシュクルートの写真を撮り忘れてしまった。シュクルートは今までもたびたび食べています。
 MUZのエッセイ「アルザス・ロレーヌ旅の味」の下の方、ストラスブールのところにシュクルートについての写真と文を載せていますので良かったらご覧下さい。
 午後からは美術館の3階の残り。ミレー、テオドール・ルソー、クールベ、ドラクロワ、ジェリコーなど観るものが多い。それに珍しくモンチセリの作品が3点あった。ルオーの作品も良かったが、ヴィエラ・ダ・シルバの大作を含め多くの作品が展示されていた。ヴィエラ・ダ・シルバはポルトガル人画家だがポルトガルでもこれ程多くの作品をまとめて観たことがない。と言うよりフランスの地方美術館ではどこででも観るがポルトガルではほんの少ししか観ることが出来ないのが現状だ。
 ピカソや藤田嗣治などと同時代パリで活躍した女流画家でポルトガルでも人気が高い。
 藤田嗣治作品の多くが戦後の高度成長期に日本人愛好家にフランスから買い漁られたのとは違い、
 ポルトガル人愛好家はヴィエラ・ダ・シルバをフランスから買い漁ることは未だ出来ないでいるのかも知れない。


30.ヴィエラ・ダ・シルバの大作


31.モンチセリの作品


 古いブルゴーニュ時代の作品のみならず新しい近代の作品にも地方の美術館には見逃せないものが多くある。
 マニン美術館にはペーテル・ブリューゲルの秀作があった。
 只、宮殿の調度品などと一緒に絵画も展示されていて、2段掛け、3段掛けでキャプションはなく絵画だけ観るには少々観にくかった。でもここでも膨大なコレクションである。

 

2010/11/13(土) 曇り時々雨 /Dijon-Paris


 ディジョンからパリへのTGVからの車窓風景はうっとりするほど美しい。
 紅葉はもう過ぎていたが、空は明るい灰色で全てをパステルカラーに調合して牧場や畑の様々な緑はそのまま抽象絵画になってしまいそうだ。
 パリのホテルは先日と同じ、本来なら4人まで泊れる部屋だがその部屋を用意してくれた。バスタブはあるし広々とした屋根裏部屋である。
 この日もパリの美術館を予定していたが、少々疲れたので止めにした。
 又もやベルビルまで北京ダックラーメンを食べに行くことにした。雨模様で寒いしで温かいラーメンに触手が動く。リヨン駅からメトロで比較的簡単に行ける。


32.パリ・リヨン駅


33.ベルビルの北京ダックラーメン


 サンミッシェルに泊ればバスの便が良く殆どメトロは使わないで済んでいたが、リヨン駅からはバスが使いづらくメトロとRERばかりになってしまう。
 ラーメンで腹ごしらえしてサロン・ドートンヌへ。
 入場した時には詩の朗読が行われていたが、帰ろうと思う時にピアノコンサートが始まった。
 弦を直接引っかくなどの前衛的なピアノ演奏だったが面白かった。


34.真ん中の赤いのが僕の出品作


35.ドートンヌ会場でのピアノコンサート

 

2010/11/14(日) 曇り時々雨のち晴れ /Paris-Lisbon-Setubal


 植物園を予定していたが雨なので諦め、ゆっくり朝食を済ませ帰るだけ。
 RERの切符売り場には長い行列。自動販売機で買おうとも思ったが、列に並んだ。でもRERの空港行きの切符くらいは自動販売機で買える様にしておかないと…。以前にはカルネ(回数券)を買った経験はあるのだから。

 今回の旅では当初懸念していたストライキの影響が全くなくて良かった。
 リスボン行きのイージージェットは満席だった。通路を挟んで2人の席は別れた。
 でもその方が真ん中の狭苦しいのよりかえって開放感がありトイレにも立ちやすいし悪くはない。
 リスボンに着いて久しぶりに太陽を見た気がした。上着を1枚脱いだだけでは汗が収まらなかった程だ。


-Epilogue-

 

 ポルトガルに戻ってからの天気は連日晴である。
 僕たちがフランスを去ったその日から1週間のフランスの天気予報も晴れである。それが恨めしくもある。
 今までは予報で目的の日が雨でも当日になれば晴れることが多かった。そんな訳で我々は「晴れ男・晴れ女」を自負してきた。それが今回のフランス旅行でみごとに崩れ去った。
 雨と言っても僕たちはぽつりと降り始めるとすぐに傘を広げたが、フランス人や観光客などの半数ほどは傘をささず、それでも道行くことができる程の小雨ばかりであった。
 薬局の景品で貰った雨傘とシェルブールのスーパーで買った折りたたみ雨傘がこれ程役に立った旅もない。
 行列や工事中そして雨で予定の3分の2程しかこなせなかった旅となったかも知れない。
 旅人にとって雨よりも晴れるほうがありがたいに違いないが、雨に洗われた木々の緑と石畳の鮮やかさを愛でることが出来た旅にもなった。
VIT

 

(この文は2010年12月号『ポルトガルの画帖』の中の『端布れキャンバスVITの独り言』に載せた文ですが2019年3月末日で、ジオシティーズが閉鎖になり、サイト『ポルトガルの画帖』も見られなくなるとの事ですので、このブログに転載しました。)

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087. ヴァイデンを観るために -パリ・ボーヌ・ディジョン旅日記-(上)-Paris-Beaune-Dijon-

2018-12-17 | 旅日記

-Prologue-

 

 サロン・ドートンヌの搬入日が11月8日。それに合わせてのパリ行き。
 今までは画家誰かの足跡を辿る、というテーマの旅が多かった。そして少しずつ新しい、現代に近い画家が望ましいのではと思っている。
 一昨年はルオー、昨年はアンドレ・ドランだったから次はアンドレ・ドランと同時代のマルケかそれともデュフィか。
 でも日程のこともあるし、マルケならボルドーが外せないだろうし、デュフィなら又、コート・ダジュールか?
 距離と言うこともある。パリからあまり遠くへ離れるのも経済的な負担にも繋がる。
 いずれは企画をしたいと思っているが、クールベやドラクロワは時代が遡るので今回は「ちょっと」と避けたい。
 画家とは関係なく、フランスの地図を広げてみて1~2時間で行くことの出来る範囲。
 かつてのブルゴーニュ公国の首都、ディジョンが浮かび上がった。そしてもう一箇所ディジョンの南ボーヌという町である。ディジョンの北東にクールベゆかりのオルナンがあるがあえて避けた。
 ディジョンへは1974年頃行った記憶はあるのだがあまりの年月の隔たりに初めて訪れるのと同じだ。
 結局、今回はパリ3泊、ボーヌ2泊、ディジョン2泊、パリ1泊、全部で8泊の例年より1泊長い旅となった。
 かなり早いうちから全ての予約をネットで取っておいた。イージージェットの往復航空券。TGV。パリ、ボーヌ、ディジョンのホテル。予約をしてしまってからボーヌに重要な絵があることが判った。

 

2010/11/06(土) 晴れのち雨 / Setubal - Lisbon - Paris

 

 自宅を始発から一つ、1時間遅い6時発のバスで出発。リスボン空港であまり時間をもてあますこともなく、丁度良かった。
 パリに着くとやはり予報通り雨だった。
 サロン・ドートンに出品の100号の作品を預けムッシュ・Mのクルマでホテル近くまで送っていただく。
 今回はネットで見つけた初めてのホテルでディジョン方面に行くには都合の良いパリ・リヨン駅からすぐのところだ。
 今まで使っていたサンミッシェルより少し安いので不安だったが想像以上に良かった。良かったので [Booking.com] の口コミ評価で僕は10点満点を付けてしまった。
 グラン・パレで大規模な「モネ展」が開かれていると言うことは前もってインターネットで調べていたし、パリ在住の画家溝口典子さんから「モネ展は評判が良いですよ」というメールも頂いていたので、これは是非観なくてはと予定に入れていた。早速、メトロでモネ展が催されているグラン・パレへ。
 でも雨の中長い行列。しかも少しも前へ進まない。
 諦めることにした。いくら大規模とは言えモネはこれまでいやと言うほど観ている。いや「いや」、と言うことはないが、相当観ている。
 当初はモネを今年のテーマ…とも考えてみた。
 モネゆかりのジベルニーとルーアンやノルマンディ地方へは数年前も訪れているし、オランジュリーとマルモッタン美術館へもつい最近も訪れているので足跡を訪ねる旅は済んだも同然ではないだろうか?でも体系的に纏めることまではしていない。
 再びメトロで IKUO さんの店へ。ちょうど IKUO さんも居られたし、KEIKO さんもお元気そうな様子でゆっくり話すことも出来て良かった。

 

2010/11/07(日) 曇り時々雨 / Paris


 朝食を早くに済ませ歩いて1駅のバスティーユの朝市に出掛けた。ホテルからサン・マルタン運河がセーヌに注ぎ込んでいるところから運河沿いに歩く。
 寒いけれど雨にも降られず気持ちの良い朝の散歩だ。
 サクランボほどの小さな真っ赤な姫りんごだろうか?見上げる木にたくさん鈴なりに生っている。紅葉の残りと菊の植栽が美しい。
 フランスの朝市は見ているだけでも楽しい。場所によっても少しずつ個性があり見飽きることはない。
 きょうはパリの美術館は殆どが無料だ。
 バスティーユの朝市が途切れたところにメトロの入り口があった。メトロとRERを乗り継ぎオルセーに行った。
 ここでも行列があるかも知れないとも思ったが、それ程でもなかったし、どんどん進んでいる。
 上がっていた雨が少し降り始めたと思ったらすぐに傘売りが数人何処からともなく出現したがだれも買う人はいない。
 陳列の様子が様変わりしていた。上階は工事で閉鎖され、下の階に主だった絵が陳列され、作品数はかなり少なく、しかもぎっしりと陳列されていたからか?撮影は禁止になっていた。
 一角でジェロームの特別展が行われていた。Jean-Leon Gerome [1824-1904] は新古典派の画家で彫刻家でもある。当時台頭してきた印象派と対峙したサロン(官展)の大御所である。コルモンやカバネルなどと共にたびたび近代美術史に名前を馳せる人物で、印象派や後期印象派など当時の革新派、ゴッホやロートレックなどからすれば悪名高き?と言うことになる。
 でもデッサン力は勿論のこと色彩の冴えハイライトの使い方などさすがと言わざるを得ない。
 昼食はオルセーのカフェテラスで。と思っていたがここでも長い行列。諦めざるを得ない。
 小雨の中歩いてルーブルに。ルーブルには長い行列が出来ていた。入り口の整列枠をはみ出してガラスのピラミッドをすっぽり1周取り巻き更に裏側のルーブル・リボリ方向へと列は延びていた。


01.雨の中ルーブルは長い行列

 ルーブルでこれ程の行列を見たことがない。しかもあまり進んでいない。ここでも諦めることにした。
 ルーブル・リボリ駅からメトロでベルビルまで行き北京ダックラーメンで遅い昼食。ベルビルは昼食、夕食以外の時間帯でも食べられるから便利だ。
 午後からはポンピドーセンターにした。行列は全くなかった。
 ここもいつ来ても陳列替えがあり実験的な面白い構図のアンドレ・ドランやピカソ、ブラック、レジェなど新たな作品もたくさん観ることができた。


2010/11/08(月) 曇り時々雨 /Paris

 

 ホテルからバスティーユまで歩き更に一駅ほど歩くとピカソ美術館だ。
 バスティーユの朝市が今日もやっているかなと期待して歩いたがやっていない。この日の午前中は久しぶりにピカソ美術館を予定していた。前まで行ってみると閉まっていた。閉ざされた門には張り紙があり、2012年春まで工事で閉鎖とのこと。
 インターネットで何でも調べることの出来る時代。これは迂闊であった。
 途中カフェに立ち寄りながらルーブルまでゆっくり歩くことにした。
 昨日は長い行列で諦めたルーブルだったが、きょうは少しの行列で殆ど待たずに入ることができた。
 外は雨模様だし、ルーブルで丸1日過ごすのも悪くない。
 ルーブルに入ってもテーマを持って観る事が最近は多いが、今日は別にテーマはない。まあ、しいて言えば絵画を中心にというところか。
 シャルダンなどは今までに観たことのない作品が多く展示されていた。
 何人もの画家が模写をしているが観光客が多くて落ち着いて描くことが出来ないのではないだろうか。年々、パリの美術館の観客が多くなっている様な気がする。


02.ルーブルで模写をする人


03.ルーブルのルーベンスの部屋

 ドラクロワ、ジェリコー、クールベなど古い画家と現代の変なプリズム的な写真とを対比させた奇妙な企画の展示スペースがあった。昨年アングル美術館で観た企画と共通する様なもので、贅沢な企画だが、観ていてあまり良い気持ちはしない。昔の画家を冒涜している様にも見える。
 現代の学芸員の資質を疑ってしまう。そう思っているのは僕だけだろうか?
 久しぶりにモナリザとミロのビーナスも観たがモナリザなど以前とは陳列も変わってえらい人だかりに面食らってしまった。あれではジョコンダさんも赤面してしまわれる。

 

2010/11/09(火) 曇り時々雨/ Paris-Beaune

 雨ばかりで仕方がない。朝は市立近代美術館で過すことにした。美術館前にはまたしても長い行列。
 とりあえず一番後ろに並び、前の人に聞いてみると特別展の行列だとのこと。一番前の整理係りの人に更に聞いてみると、常設展の入り口は別だとのことでそちらに行ってみると、ガラ空き。

 今年の夏ごろだったか?この美術館からモディリアニなどの作品が数点盗難にあったことはニュースで大きく取り上げられた。さぞセキュリティは厳重だろうな。とは思っていたが、空港よりもオルセーよりも至って簡単で、上着を脱ごうとすると「そのまま通って」と言われた程であった。
 ここでも特別展のため、会場は縮小されていたが、今まで観たことのないルオー、スーティン、モディリアニなどがあって良かった。
 例によってデュフィの大壁画を観る。これを観るだけでも毎年この美術館へは訪れる値打ちがある。


04.デュフィの大壁画「エレクトリックシティ」一部


05.大壁画の一部 (おおよそ 1/100 か?)
 地階の会場でガザの写真展が行われていた。Kai Wiedenhöterというドイツ人フォトジャーナリストの個展で、目を背けたくなる様な場面も多く写真の訴える力に凄みを感じた。そして構図が一貫していて個性を感じると共にパネル1枚1枚の芸術性が非常に高い。

 

06.


07.ガザの写真展

 午後のTGVでボーヌへ。ディジョンでTGVからローカル線に乗り換え。リヨン近くで事故があったらしくディジョンからの電車にダイヤの乱れ。30分遅れでボーヌに着き、道行く人に尋ねながらホテルに到着。
 ホテルは元修道院の一部と言うだけあって雰囲気は良くしかも現代風にリメイクされていて快適。


08.ボーヌのホテル


09.ホテルの寝室

 

2010/11/10(水) 曇り時々雨 / Beaune

 ビュッフェ式の朝食もグレードが高くて全てが美味しかった。ボーヌ名物のジャンボン・ペルシェなどもあり、試食できて良かった。そしてたっぷり食べ過ぎてしまった。
 早速、オテル・デューへ。入り口前のマルシェには小さな朝市が出ていた。


10.オテル・デュー中庭

 オテル・デユーとは「神の館」という意味だ。あでやかな屋根をもつこの病院は1443年、ブルゴーニュ公の大法官であったニコラ・ロランと彼の妻によって建てられた。今も15世紀当時の病棟がそのまま残されており、当時の教会や第二次世界大戦中も使われた病室、厨房、調剤室などを見学することができる。またこの病院が所有していたブドウ畑は当初1300ヘクタールもあったが現在58ヘクタールと縮小されてしまったとか。それでもグラン・クリュ(特級)のワインとして人気は高く、売り上げは建物の修復などに使われている。見逃せないのは、サン・ルイの間にあるロジェ・ヴァイデン作「最後の審判」の装飾屏風。-後略-(地球の歩き方「フランス」ダイヤモンド社より)
 ということでこの ロジェ・ヴァイデン Rogier van der Weyden [1399/1400-1464] の絵を観ることを今回の旅のメインテーマとした。
 ロジェ・ヴァイデンの作品はリスボンのグルベンキャン美術館にも小さいのが2点ある。
 以前にカーンの美術館で聖母子像を観て感激もした。
 今までに観たどの作品も素晴らしいものばかりで最も好きな画家の一人だ。特にヴァイデンの小品、肖像画には絶大な魅力を感じている。
 レオナルド・ダ・ヴィンチより更に53年古く、今、人気の高いフェルメールより233年も昔の画家だ。
 3人の画家に共通して言えることは描く人物(神)に崇高な気品が漂っていることではないだろうか。
 当初、古いからと敬遠したクールベやドラクロワどころではない、クールベより420年も、遥かに古い画家が今回の旅のテーマとなってしまった。ここまで古いと「まあ、ええか」と納得せざるを得ない。
 暗く閉ざされたサン・ルイの間ではヴァイデンの「最後の審判」に正に神々しいばかりの照明で作品を浮かび上がらせ観るものを圧倒する。
 今までに観たヴァイデンでは最大の作品だ。(215x560cm)
 代表作はルーブルやプラド美術館にもあるがこのボーヌの祭壇画も代表作の一つだ。
 観ているのは「ボンジュール」と笑顔で挨拶を交わした監視員のお嬢さんと僕たち2人の3人だけ。パリの美術館の行列、モナリザの人だかりが嘘のように感じる。

 


11.ヴァイデン作「最後の審判」中央部分。両端が1枚ずつ切れている。


12.下段左部分


13.下段右部分
 その他、タピストリもわざわざ行ってでも観る価値があると感じた素晴らしいものが数多くあった。


14.タピストリ
 ブルゴーニュ公国が繁栄した時代、この地にフラマン派の画家を招請し、たくさんの歴史的価値の高い絵画がこのブルゴーニュ地方で生れた。その多くはその後ルーブル美術館などに移されたが、少しはこの地に残されている。
 ホテル近くのブラッセリでブルゴーニュワインと共に遅い昼食。


15.ポワソンのテリーヌ


16.ミートボールのミートソースパスタ


17.ショコラタルト

 午後からはワイン博物館を見学。ブルゴーニュ地方といえばブルゴーニュワインとしても名高い。11月の第3週にはここボーヌでブルゴーニュ最大のワイン祭りが催され世界各地からバイヤーや観光客が集まるとのこと。我々にとってはそれと重ならなくてかえって良かった。
 ワイン博物館の展示もやはりセンスが良く見応えがある。各部屋には説明文のプリントが各国語で配され日本語までもがあった。ワイン好きの日本人観光客も多く訪れるのだろう。昔の樽造りの様子をドキュメントした白黒映画が上映されていて面白かった。


18.ワイン博物館


19.ワイン博物館の展示

 

087. ヴァイデンを観るために -パリ・ボーヌ・ディジョン旅日記-(下)-Paris-Beaune-Dijon-へつづく。

 

(この文は2010年12月号『ポルトガルの画帖』の中の『端布れキャンバスVITの独り言』に載せた文ですが2019年3月末日で、ジオシティーズが閉鎖になり、サイト『ポルトガルの画帖』も見られなくなるとの事ですので、このブログに転載しました。)

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