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粗銅の晩年 身近で世話をした 子光 素堂句集 序文(漢文)子光

2024年08月14日 14時18分33秒 | 俳諧 山口素堂 松尾芭蕉

素堂句集 序文(漢文)子光

夫レ人ニ生有レバ必ズ殂落スル也。

唯ダ言語有リテ文辞ヲ紙上ニ載ストイヘドモ千歳ハ久シ難シ。

猶其人ノ面ニ接スルニ奥有ル也。

粤有隠逸山口素堂信章ハ、

盧ヲ江城ノ東北浅草川(隅田川)両国橋ノ傍ラ、

下総ノ国葛飾ノ郡ノ内ニ結ビ、歳月ヲ経テ久シ。 

良性(生まれながら)野(朴質う志シ多ク、

固トョリ貨財(金銭)ヲ以ッテ世事ヲ経ズ、

心偏ラズ雪月花ノ風流ヲ弄ブ。弱冠自リ四方(諸方各地)ニ遊ビ、

名山勝水或イハ絶レタル神社、或イハ古跡ノ仏閣ト歴覧セザルハ無シ。

亦タ数適ノ師ナリ。

詩歌ヲ好ミ猿楽ヲ嗜ム、和文俳句及ビ茶道ニ長ズル也。

其ノ作「蓑虫記」ハ風俗文選ニ載セ、俳句ヲ載す。

于(ココ)俳諧糸屑シテ行ク世ナリ。

天質疏通(天性さわりなくとおり)強(彊)記(物覚えが良く)往ク所ノ詩歌和文等ハ、

咸(スベテ)胸中ニ於テ之レヲ暗誦シ、

人卜紙硯ヲソナヘテ之ヲ請ヘバ則書シテ其ノ筆書ヲ与ウ也。

左ノ如キ草稿ハ貴顕之レヲ召シ、好事ノ者ハ最モ鐘愛ス。

従ツテ他ノ人ノ寓ニ招カレテトヾマルコト或ハ三日四日、或ハ十日、

然ルニ阿邑(思いへつらい分け隔てる)ノ意モ無ク、

与人ニ非ズ対話シ、則ク黙シテハ泥塑ノ如シ、

人ニ其ノ説ク話シハ固ヨリ多言ニアラズ也。

其ノ庵中ニ所蔵スル書ハ数巻、

及ビ茶器ニ爨炊(煮炊き)ノ鍋釜、面シテ又タ己レニハー力肋有リ、薪水ノ労ナリ。

予、幸イ親灸シテ既ニ十有余年を得ル。

其ノ和文詩歌発句等数十帋(紙)ヲ悉ク匣(箱)底ニ蔵ス、

然ルニ其レハ蟲害ヲ患ラフ、旦ニ好欲ノ者使スル(費ヤス)頗(偏)ヨツタ蒐輯ハ冤ニシテ、

以テ写シ別ニ楮(こうぞ・紙)ヲ積ミテ一帙(一冊)ト成スナリ。

恨ムラクハ其ノ他ノ文詞ハ人ノ手ニ在リテ得ズ。

矚省ニ亦タ多クノ許シヲ焉(エン)嗟嘆此ノ人コレ謂ユル善キ隠逸者ナルベシ、

享年七十有余ニシテ病ヲ嬰ジ、享保元丙申歳八月十五夜遂ニ世ヲ謝スナリ。

武江城ノ北東隅ノ谷中感応寺中随音院内に於テ埋葬ス。

為ニ号シテ広山院秋厳素堂居士ト為ス。

享保六年辛巳年辛巳氷荘中旬(八月中旬) 子光詩


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