救急車! 早く救急車をお願いします!
若い女性が
後ろから来た男の人に刺されて倒れています
え?あ、その人は慌てて走って行きました
はい、はい、わかりました
とにかく早くお願いします!
血が、ものすごく出ています!
子供はいつまでも泣き叫び
母親はオロオロしながらただ立ち尽くすしかなく
母親の声を聞いて駅から出て来た何人かの人が
あたしの周りを取り囲んでいた
血だらけになって倒れているあたしは
もちろん刺されたなんて思ってもいない
早く花を探さなければ、と駅へと急いでいたのだ
もうその場所には行けないなんて思いもせずに…
その後救急車と共にパトカーもやって来た
あたしを刺した男は
明らかに沢山の人とすれ違っているはず
すぐに見つかるであろうと言われていたのに
走り去った先にある
駅周辺のカメラには、
全く映っていなかったようだ
まるで神隠しにでもあったように
その場所から忽然と消えていたようだ