心のままに・・・

実体験をもとに小説仕立てでお話を書いています。
時々ひとりごとも…

いつも心の中に・・・vol.5

2024-01-19 16:43:00 | いつも心の中に


昨夜と同じ笑顔がそこにあった

そういえば、
日曜の昼間にデートなんて
もう長い間してなかったような気がする
なんだかやけに眩しいのは、
ヒロキの笑顔のせいだろうか?

いいえ

きっとあいつとの間には 
あり得ない
何の駆け引きも感じないこの状態を 
素直に楽しんでいるのだろう

リョウとの関係は 
決してこのまま続けられるものではなかった
あいつは、同期にして上司だ
そして何よりもあいつには、家庭がある。
あいつとは 
学生時代からの付き合いがあった

あいつとは 
きっとずっといつまでも
一緒にいるものだと
あの頃のあたしは 
信じて疑わなかった

遅めのランチを済ませると
車へエスコートされる 
ヒロキの車は、
おもちゃのようなかわいいものだった


どこへ行こうかな?と呟きながらも


もう行くところは決まっている 
そんな横顔
そこは
夜のドライブでは 何度か来たことのある
海辺へ 向かう道だった

いつも心の中に・・・vol.4

2024-01-19 16:31:00 | いつも心の中に

電話の音が かすかに聞こえた


おはよー!まだ寝てたの?っていうか
帰ってたんだ!!


朝から元気の良い声の主は、リカコ
彼女の仕事は客室乗務員 

そのすらっとした身長と
派手目な顔立ちでよく目立つ

実は、由緒あるお宅のお嬢さんで 
親の決めた婚約者がいたらしい
家で花嫁修業とやらを 
やらされるのが嫌で親の反対を押し切って
その頃流行りだったスッチーになった。




あの顔であの制服で

まわりの男たちは 
何人玉砕させられたんだろう・・・
ねぇ~? 聞いてるぅ~?
また週末には連絡するから

あの子犬のようなかわいい彼と
連絡取っておきなよ!!OK??
あーーっ?
あ、あ・・・わかった・・・
寝ぼけた頭を なんとか回転させながら
昨夜の出来事を思い出し


リカコのけたたましい電話に相槌を打って
それからまたしばらくあたしは、
夢の中へ
目が覚めたら とうに昼は過ぎていた。
なぜかとてもすっきりした気分で
いつもならきっとかけなかったはずだろう
電話も躊躇なくかけていた。

昨夜はどうも・・・
あたし、えっと ユウコです。  
すぐに出てきた子犬の彼は、
あ!!ユーコさん? 
よかった!!
電話かかってきた 
やっぱり思った通り奇跡が起きた!


電話の向こうで 
はしゃいでいる様子がよくわかった
あたしもなんだかその声につられて
ねぇ 近くにいい店があるの
まだランチやってると思う
近くまで来れる?
最寄りの駅を指定して会う約束をしていた。




そう
それが
あたしとヒロキとの最初のデートとなった






いつも心の中に・・・vol.3

2024-01-19 16:30:00 | いつも心の中に


あいつからはきっと・・・
今夜も電話なんてかかってこないだろう



きっと今頃いつもの顔とは違う顔で
食卓を囲んでいるのだろう


そんなことをぼんやり考えていると 
リカコに肩を叩かれた

大丈夫?酔ったの?



まさか・・・


こんな程度で酔うはずもない
相変わらず子犬は 
にこにこしながら見つめてくる
さてと・・・もう一軒行こうか
席を立とうとすると子犬もついてくる
この子どこまで付いてくるつもり?
内心そんな風に思ったが 
なんだかとても楽しくなってきていた。
楽しい時間というものは 
早送りのコマのように過ぎてゆく


気が付いたら終電まじかになっていた

とにかく今日は帰らなくちゃ!
慌てて地下鉄までの道を走った
やはりついて来ていた彼も
同じ電車に飛び乗った・・・


あれ?君は、違う路線じゃなかったかしら?



だってこのまま帰ったら
二度と会えないかもしれない
といいながら
何かの切れ端の裏に番号を書き込んで
私に強引に渡すと
にっこり微笑んで次の駅で降りて行った。



しばらく夢なのか?現実なのか?
よく判らなかった





そう・・あのころはまだ 
ケータイデンワなどという
便利なものはなかった





いつも心の中に・・・vol.2

2024-01-19 16:29:00 | いつも心の中に


どうしてシャンパンなの?

リカコが彼に聞いた
あたしも心の中で同じ事を考えた

だって逢えたことに奇跡を感じたから
  
一緒に乾杯したかったから…

ダメ?

その屈託のない顔

まだ10代かと思わせる程
あどけない笑顔

この笑顔が
あたしだけのものになるなんて

その時のあたしには
考えも及ばなかった

でも心のどこかでそれを
強く望んでいたのかもしれない

だってその頃のあたしは
つらく切ない恋に
疲れ果てていたから









いつも心の中に・・・vol.1

2024-01-19 16:29:00 | いつも心の中に



それは突然だった

秋の始めの
空が天まで届くほど
まっすぐに晴れ渡った日の午後

リカコとあたしの間に
するするっと滑り込んできた

まるで子犬のような目をした
屈託のない笑顔・・・

彼は 当たり前のように
冷たいシャンパンを注文した

驚く二人に笑顔を振りまきながら

この後どこかへ行くの?

明日のお休みは何しているの?

ねぇねぇ僕と遊ぼうよ

あたしは驚きながらも
その屈託のない笑顔に

ただ単純に見とれていた・・・







そう・・・それは、
はるか遠い記憶の片隅へ
想いだそうとしては
何度も消し去った記憶