心のままに・・・

実体験をもとに小説仕立てでお話を書いています。
時々ひとりごとも…

想いは伝わる・・・2

2024-01-22 15:35:00 | 想いは伝わる


石川 知史は
ちょっぴりむくれていた

せっかく憧れの美菜ちゃんと
ゆっくりお近づきになれる
チャンスだったのに、と
「先輩が大きな声で
美菜ちゃんの名前を出すから
さっかくの飲み会が
あ~でもいいや、
そもそも千秋先輩を誘ったんだから」

「悪いね、石川!
ま、また今度ゆっくりね
今回は みんなで割り勘しよう
あ、でも美菜ちゃんの分は
ヤロウ達持ちでヨロシク!」

上田美菜 24歳 
ふわふわとした可愛い系女子
男ならほおっておけないだろうな
という容姿で
やや天然
しかしその雰囲気は
決して計算によるものではない。
実は 芯はしっかりしている
三人姉妹の長女だ



石川知史 26歳 
身長が高く ややマッチョ
本人は
わかっているのか定かではないが
かなりのイケメン男子で
学生時代はゴルフ部に所属していた
プロになれそうなほどの
腕前だったらしいが
腰を痛めてあきらめたそうだ


岡崎さんのお誘いどうしよう
私は 揺れていた 
誘われて飲みに行ったら
きっとまたあの人のことを 
思い出すだろう
そして
もしかしたら、また会える?
なんて期待してしまうかもしれない

早めの忘年会をする人も
多いだろうこの時期
石川が行きたかった店は
予約でいっぱいだったらしい
それでも根性で見つけた店は
どこにでもありそうな店だったが
女の子と二人で来たら
結構いい感じになれそうな
雰囲気のいい
こ洒落たイタリアンの店だった。

大いに盛り上がり
やや飲みすぎた感があったが
私はお酒
かなりイケる方で
後輩男子がいい気分に盛り上がる中
ある意味冷静に
周りを見渡し
気のきくいい女風を 演じていた。

千秋せんぱ~い 私ちょっとお手洗い
そう言って美菜が席を立つと
男たちは一斉に仕事での愚痴を 
こぼし始めた

ねぇ~君たち 
その話は
ここでなくてどこか他でやりなさい
そんな話美菜ちゃんが聞いたら
きっと呆れるわよ
情けないヤツってね

後輩たちは苦笑いして
話を途中で切り次の店へ移動する話で
盛り上がりだした。



・・・ったく
しっかりしてよ
後輩たち


美菜が戻ってきたと同時に
石川が会計を済まして戻ってきた。
どうやらこの後は
男同士でこれからの自分たちの立場やら
仕事の方向性やらあれこれ話すそうだ

店の外で後輩たちと別れた私たちは
駅へと向かった。

千秋先輩お疲れ様でしたぁ
私これから彼と待ち合わせなんです

そう言ってにっこりほほ笑んだ美菜は
駅の改札へ向けて歩きだした。

あ、そうなの
あなた男いたのね

そりゃそうよね
あなたみたいなかわいい子 
ほおっておかないわよね
と、ひとりつぶやき

ちょっぴり取り残され感で 
さみしくなった私は、
結局岡崎に連絡するために
懐かしいあの店へ向かうことにした。


想いは伝わる・・・1

2024-01-22 14:38:00 | 想いは伝わる


大好きな歌が 
似合う季節になった
似合う
というのは
私が勝手に思っているだけかも
しれないけれど

これからの季節
なんとなく人恋しく思うような
暖かいぬくもりを 
感じたい季節にきっと似合う

そんな歌


nothing's gonna change 
my love for you

この歌を聞くと想いだす
想い出すまいと思っても
ふと
心に残っている想い

そんな思いを
あなたはしたことがあるだろうか

~1995・初冬~

ラジオから聞こえるのは
Christmas song ばかり
はぁ もうそんな時期
忘れてたわ

いいえ
忘れることにしていた

きっと今年のクリスマスも
ひとりなんだろう
彼氏いない歴5年目の
さみしいクリスマス前
私は 毎日坦々と過ごしていた
29歳という微妙なお年頃 
仕事にもずい分慣れた
というより慣れ過ぎて
今やお局様状態かもね

それでも
嫌な顔しない信頼できる上司や
可愛い後輩がいる

唯一さみしいこと 
と言えば
つらい別れを 
いまだに引きずって
前へ進めない事くらいだろうか

いや でも実際表面上は
決してそんなことを表に出さず
男前な ねーさんを 
演じているのだった

今日も後輩のひとり
やんちゃぼーずを絵にかいたような
石川 知史が
「せんぱい!今夜おごりますよ
一緒に飲みに行きましょ」
と 頼もしいことを言ってくれている

その頃の男子は
今の草食系男子と違って
女性にお金払わせるなんて
と思う子が多かったように思う

「OK!」

でも全部って借りは
作りたくないから
少しは出させなさいよ

今夜は君のお気に入りの美菜ちゃんを 
連れて行くわ
嬉しいでしょう

後輩といえど
男と二人きりになるのに
少し抵抗があった私は
男子社員のアイドル的
存在である美菜に声をかけて
一緒に出かけることにした。

美菜が行くという話を聞きつけた
後輩男子達が僕も おれも 
と浮足立ち
結局3人ではなく
大所帯になってしまった

「石川 どこか予約入れといてよ!」

ったく
相変わらずいつの世も男たちは
可愛い子には弱いな
女が私だけなら 
きっとこんなに
集まらなかっただろうな

いや
あいつらは
私のことを“女”だなんて思ってないな
うん
そうだな きっと
などとひとりグチグチつぶやいていると

上司の岡崎 信也が
声をかけてきた。
「おい、森田 今夜一緒に飲まないか?」
「あっ すいません、
今夜は先客が
と言っても 
石川くんたちなんですけどね」

「そうか」 
そう言って立ち去るのかと思うと

「1次会が終わった頃
どこかで待ち合わせないか?」

いやいやいや
えっと
なんなんだ?
この人のこの誘い

ええっと
どうしよう

岡崎は、
上司であると同時に
私の元彼である男性と
学生からの友人で
私たちが
別れたことも当然知っている。
彼と同じく大人の男だ

きっと私が
いまだに忘れられない男性と
今でもたまに飲みに行く
というような仲だろう

即答が出来ず
あいまいな態度をとっていると
「おい、千秋
心配すんな
オレはお前をくどこうってんじゃないんだ
この季節
いまだにひとりでいる美しい後輩を
後輩の話を 
たまにはじっくり聞いてやりたい

心底それだけだ!
まぁ よかったらポケベル鳴らしてくれ」

と クールな笑顔を見せて立ち去った。

岡崎信也 35歳独身 

私の同僚・先輩女子からは
かなり狙われているだろう(笑) 
なぜいまだ独身なのか?
定かではないが
仕事も遊びもデキル男 
渋さも増したいい男だ
彼のような人が
そばにいたら

きっと私は
安心して幸せな日々を送れるのかも
しれない



ひとりごと〜お話紹介〜

2024-01-22 14:00:00 | ひとりごと
[想いは伝わる]

このお話は2012の年末頃から
2013の1月頃にかけて
書いていたお話です

背景は1990年頃
世間は華やかで
私もまだ若く
千秋のような恋愛をしていた
そんな頃の思い出に
少しエッセンスを加えて
物語にしたのものです

辛かった恋愛もありましたが
今では良い思い出

そんな想いをここに綴って
忘れないようにしたいな
と、思っています。





いつも心の中に・・・last

2024-01-22 13:44:00 | いつも心の中に


ユーコ
会いたい
いま 幸せにしているの?

ねぇ ヒロキ 覚えている?
“星の話”
東の空にオリオン座が輝く頃になると
毎年あなたのことを 
想いだしていたわ
あなたはもう
あの星たちのそばにいるんだと
勝手に思っていたから

言ったよね
僕たちには 何度も奇跡が起きるって

でも 奇跡は
簡単には起きないから奇跡なのよ

あれからもうずいぶん年月が経っている
あたしはもう 
あの頃とは変わったわ
あなたもきっと
変わったでしょう

話が出来ただけでよかったわ
そしてなにより
あなたが生きていてよかった
心からそう思う

ね ヒロキ
私たちはもう
会わない方がいいと思うの

会えばこの先…

「ねぇぱぱ?おでんわちゅー?」

電話の向こうで
かすかに幼い声が聞こえ
少し慌てたヒロキの様子がうかがえた

これでいい
これで良かったんだ
あたしは 心からそう思った

会えばきっと
自分でもどうなるかわからない
今の生活を全て失ってでも
あなたと一緒にいたいと思うに違いない
それは
沢山の人を傷つけることになる
穏やかなあの人をも傷つける
あたしは
自分の気持ちだけを優先して
まわりを振りまわす生き方は出来ない

あの時とは違う

心が大きく揺れたことは否めない
ヒロキの言う奇跡は起こらないけれど
生きていたという
事実がわかっただけでも嬉しかった
これもあたしの正直な気持ちだった

もうあの頃には戻れない
あの屈託のない笑顔は 
もう見れないけれど
あたしだけに向けて輝いている


いつも心の中に







いつも心の中に・・・vol.9

2024-01-22 13:36:00 | いつも心の中に


ユーコ大変
大変なのよ
ゆっくり話せないかしら

電話の主はリカコ

リカコは今
客室乗務員の仕事を辞め
CA時代の広い人脈を生かした
仕事をしていた。

彼女らしい生き方だ
あたしは
それなりに幸せに暮らしている。

あの事があってからしばらくは
何もする気が起きず
ただなんとなく日々を過ごしていた

それでも今はとても穏やかで 
あたしのすべてを
やさしく包んでくれる
そんな人が隣にいる。

周りからは
いつも羨望のまなざしで見られていた

実際あたしは
とても幸福だった

心にあいている小さな穴さえ
誰にも知られなければ
本当に幸せで何不自由なかった。


ユーコ ちょっと聞いてるの?
よくって?
電話では話せないのよ
近いうち
いいえ 今夜!
時間作りなさいよ

とにかく重大ニュースなのよ


うそ でしょう?


うそじゃないわよ!

心がざわついた
それもそのはず
いちばん大切だと思っていたその人が
生きている。
そうね
自分で勝手に思いこんでいた
きっと事故にでも
巻き込まれてしまったんだろうと
まだ知らないことが 
多すぎたとは言っても
あたしの名前くらい
出してくれると思っていたから

いい ユーコよく聞いて
あの彼ね
あの日やはりあなたが言っていたように
事故にあったらしいの
あのかわいいクルマは
使い物にならない程の状態だったけれど
彼 見た目には 
どこにもケガをしてなかったんだって
自分のことや仕事のことなんかは
ちゃんと話したそうなのよ

でも頭を 打っていたようでね

自分でもよくわからないけれど
何か忘れている感じが
いつもあったらしいのよ
それが
あなたのことね
出会っていたことすら
覚えてなかったみたい。

でもね、来月帰って来るそうよ!

こんな情報 
リカコはどこで仕入れたんだろう?
でも彼女の人脈の広さには
恐ろしいものがある
きっと偶然が重なったのだろう

先日アメリカでのパーティの席で
紹介された日本人を見て
びっくりしたのよ
まさか? ってね
彼もなぜか
私のことが気になったらしく
彼から話しかけてくれたのよ

“以前どこかでお会いしませんでしたか?”
ってね
で、
まさか記憶が飛んでるなんて知らないから
ユーコ あなたの話をしたら
初めは 怪訝そうな顔つきだったけど
ほらあなたがよく言ってた 
“星の話”あれを話したら
あなたのことを思い出したようで

“会いたい”と話していたわ

とりあえず
ケータイの番号聞いておいたから
教えておくわね!

リカコはニヤリと
笑みを浮かべ目の前で
ヒロキのケータイデンワの番号を
メールしてきた。