もう何十年も前の昔話
わたしは1歳になったばかりの娘を抱いていた。
電話が鳴って受話器を取る。
義母からだった。
「アンタ、できたんだってな!」
聞こえてきたのは怒声に近い声だった。
わたしはすぐには何のことだかわからず…(えっ?)となったが
すぐに子どものことだと気付き
「あっ、ええ、そうみたいです」
そう答えると
「いらないよ!!」
「もう男の子と女の子が一人ずついるんだし、もういいじゃない!」
「とにかくいらないからね!!」
怒りを含んだ声で電話は乱暴に切られた。
突然思いがけない言葉を投げつけられ、しばしぼんやりとした後、
悲しくて涙が出た。
自分の子や孫にあんなに優しい義母の言葉とは信じられない思いでショックだった。
たしかに、夫は仕事ばかりの人で、娘を出産する際も義母頼りではあったけれども。
それでも、なぜあんなことを言われなければならないのか。
妊娠がわかったのもつい先日ではないか。
夫は真っ先にに義母に報告したのか…
夫は義母を「俺のオカンは最高の女性なんだよ!」と、ことあるごとに言っていた。
わたしが義母のことを悪く言ってもいないのに、義母のことになると
ひどくムキになり、わたしを怒鳴りつけるので
わたしは義母の話をしないようにしていた。
それでも、これは夫に話さないわけにはいかない。
深夜帰宅した夫に義母からの電話の件を話した。
すると…
やはり夫はひどく不機嫌になり、わたしを怒鳴りつけた。
「どういうことですか?あなたは自分の子どもがいらないと言われて平気なんですか?」
「わたしの気持ちは考えないんですね?嬉しいですか?わたしがお母さんにそう言われて」
わたしは最初から泣いていた。
夫は
「ああ!嬉しいよ!オカンは俺のことを考えてくれてるんだからな!!」
もう耐えられなかった。
しかし出ていく場所などどこにもない。
息子も小さければ娘は赤ん坊であった。
日常は忙しく、考える時間もなく過ぎていく。
毎日がただ辛く、悲しく、今でもあの頃を思うと辛くなる。
この話は自分の恥でもあるし、誰にも話さない、
それこそ俗にいう「墓場に持って行く」ものだと思っていた。
そう、つい先月まで…
しかし、この話には続きがあったのだった…