あまの鍼灸院ブログ

鍼灸院での毎日の様子をアップしています。
鍼灸院ってどんなところ?と知っていただけたらうれしいです。

感謝の額を買ってきなさい‼️

2022-02-20 20:34:00 | ブログ
こんにちは😃今日は気持ちよく晴れましたね☀️
毎週日曜日は、院長の自伝です😊

江戸時代に将軍徳川綱吉の病を治し総検校まで上り詰めた杉山和一検校(鎌倉
の江ノ島弁財天に和一検校が祈願した洞窟がある)は石に躓いて管針法を発明し
たが、東洋はり医学会会長の福島先生はその石を蹴り飛ばす程の勢いのある先生だった。
気骨があり、豪放磊落、頭脳明晰で記憶力抜群。講師にお招きした先生に対して
も毒舌を放ち、鍼の道一筋に強い信念を持っていたことが思い出される。
その一方人情にも厚く、会員に対して大衆の面前で一喝入れることがあっても、
その後に電話でフォローすることも忘れなかった。
私が入会した20期生は定員40名に対して60名が入会する東洋はり医学会の
絶頂期であった。1年目を終了する3月には刺鍼技術のテストがあり、全員が会長
に鍼を行い点数が付けられる。一昨年先生の治療院を見学した際、「君は鍼を学
ぶ資格が無いと言われていたので、ドキドキしながら補法と瀉法(後述)の鍼を行
った。そして結果発表を待つ。60名中一番だった。1年間の研修である程度手
応えは感じていたが、先生の愛弟子も数名いたのでまさか一番になるとは思って
もいなかったのである。気分は上々だ。学術修得に更に拍車がかかったのは言うまでも無い。
ある時、福島先生の講義で、治療成績が上がらない患者さん(正確には良くな
っているが良くなっている所を見ずに悪い所ばかり主張する患者さん)に対して
「あなた! 伊勢丹に行って、感謝の額を買って来なさい!」と喝破したと言う話を聞いた。
この時は、先生らしいな。患者さんに対して、よくぞ、そんなことを言えるなと
苦笑したものである。

それから四十年過ぎた今、先生の気持ちがすごく理解出来るのである。
「疾病利得」と言われる言葉がある。病からは解放されたいが病であることによ
り優しくしていただけるから治りたいけど治りたくない・・・いやはや困った患者さんだ。
そのいくつかの例を箇条書きに記してみる。

①当院には初診者カードが有り、必要事項を書き込む様になっているが、それ以
外にA4用紙全面に症状が書かれているが、一つ一つ聴いていくと、そのほとんど
が取るに足りない症状である。勿論患者さんにとっては苦痛の種だが……
②私の治療中は苦しげに色々訴えるが、スタッフとは笑いながら美味しい店やシ
ョッピングの話などを楽しそうにしている。
③治療後これで良いだろうと思い患部を動かそうとすると体を硬くして痛い痛い
と訴えるので、全く違う部位を触りそちらに意識を集中させて患部を動かす
とさっと動くのである。
④完全健康体を求め、良くなっているところには目も向けず悪いところばかり主張する患者さん。
⑤医療器具を買い求め、一日中ご自分の体と向き合い検査結果に一喜一憂している患者さん。

 これらの患者さんには「感謝の額を買って来なさい」と言いたくなるのだ。
少しでも良くなったところを見つけて「おかげさまで」「ありがとうございま
す」と言われる患者さんは、その時点で一割ほどしか良くなっていなくてもどんどん快復していくのです。
 一方、最初に比べたら七割も改善、あるいは全治しているのに、その事にはふれず
に悪い所を新たに見つけては訴える患者さんがある。治療院経営から考えれば有
りがたい患者さんですが、治療家泣かせの困った患者さんで有る。

 ここまで書けばおわかり頂けたでしょうか。プラス思考の患者さんとマイナス思
考の患者さんでは病気の治り方が格段に違うのです。
現代医学では病を見てはいますが病気は診ていないと感じています。
「病気」つまり「病は気から」と言われているように「気」の作用、
心の持ち方によって病の治り方は格段に違うのである。
今、私はマイナス思考の患者さんに「感謝の額を買って来なさい」と大きな声で訴
えたい患者さんが何人もいますが、それを言える日がいつ来るのか。それは患者
さんの事を深く考えての言葉であるからだ。
 「感謝の額を買って来なさい!」を初めとして、「正しい認識は体験によっての
み与えられる」「議論に非ず実行」「学よりも術」「学は術の担い手」「学と術
は車の両輪」など、福島会長の名言が再び蘇るのである。
また、先生は脉状についても切診についても造語を生み出す名人でもあった。そ
の診察所見は今でも臨床に生かされている。
しかし、その『技』に行き詰まる時が来たのである。


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