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韓国経済の先行きに不透明感が高まっている3つの理由

2019-02-22 19:37:42 | 日記
韓国経済の先行きに不透明感が高まっている3つの理由


2/21(木) 17:51配信

ニューズウィーク日本版



韓国経済の先行きに不透明感が高まっている3つの理由


真壁昭夫(法政大学大学院教授)


世界経済の減速懸念もあり、韓国経済の先行きについて不透明感が高まっている。

特に、近年の経済成長を支えたスマホ関連の半導体の輸出が急減している。

韓国経済の大黒柱ともいうべきサムスン電子の半導体事業の悪化のマグニチュードは大きい。

半導体輸出という経済の土台がもろさを増すにつれ、韓国経済の成長率は一段と低下する恐れがある。

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それに加えて、文在寅政権の支持率が低下しており、政治面での不安も懸念される。

大統領就任後、文氏は最低賃金引き上げ(所得の再分配機能の発揮)を重視し、有権者に寄り添う姿勢を示した。

また、財閥企業の経営にメスを入れるなど、表向きは改革を標榜した。

当時、文氏の主張が支持されたのは、景気が持ち直していたことに加えて、改革への期待が高まったことがある。

景気が良ければ、有権者の心理には改革を受け入れるゆとりができる。

ただその後、企業の反発に遭い、文政権は経済政策の目玉である賃上げ目標を撤回せざるを得なくなった。

また、財閥依存型の経済運営が続いてきた韓国にとって、実際に財閥解体などに着手することは容易ではない


それは、経済成長率の低下に直結する。

その上、景気減速が鮮明になっている。大統領就任直後の状況と対照的だ。

外交面でも、韓国の孤立感が深まっている。

文大統領がこの状況をどう乗り切るのか、先行きはかなり見通しづらい。
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世界的な半導体市況の急減速

韓国の経済には二つの特徴がある。

まず、貿易への依存度が高い。

世界銀行によると、2005年の韓国の貿易依存度(国内総生産〈GDP〉に占める輸出と輸入の割合)は70%程度だった。

2011年に貿易依存度は110%まで上昇し、2017年は80%程度となっている。

資源が乏しい韓国は、わが国などから資材や部品を仕入れ(輸入)、それを用いて半導体などを生産し、輸出することで成長を遂げた。

輸出が増加すると、韓国経済の成長率は高まる。反対に、輸出が減少すると、景気には急ブレーキがかかる。

二つ目の特徴は、経済に占める財閥企業の存在感が圧倒的に大きいことだ。

サムスン電子と現代自動車の売上高を合計すると、韓国GDPの20%程度に達する。

韓国の景気は財閥企業の業績動向に大きく左右される。

韓国の輸出競争力は現在、半導体産業の動向と表裏一体の関係にある。

2017年、韓国の輸出は約5700億ドルだった。

うち、半導体の輸出が20%程度を占める。

同年、韓国の半導体輸出は前年から50%超増加した。

自動車やフラットパネルディスプレーの輸出伸び悩みを半導体が補い、輸出全体が増加した格好だ。

その半導体の輸出をけん引したのが、サムスン電子だ。同社の営業利益の約75%が、半導体事業から得られている。

2016年ごろから、中国のモノのインターネット(IoT)投資増加などを受けて世界的に半導体需給が逼迫(ひっぱく)した。

この結果、サムスン電子が手掛けるDRAMやNAND型フラッシュメモリーの生産量が増加しただけでなく、価格も上昇した。

それが、サムスン電子の業績拡大と韓国の輸出増加を支えた。

しかし、2018年の年央ごろから半導体の価格上昇は一服し、秋口以降は下落が鮮明化した。

韓国企業などの生産能力増強を受けた供給過剰感や需要の落ち込みも重なり、2018年10~12月期、サムスン電子の営業利益は前年同期比で約30%減少した。

韓国の輸出は下り坂を転がるような勢いで減少し、2018年の韓国実質GDP成長率は2.7%増と、6年ぶりの低水準に落ち込んだ。

最低賃金引き上げの目標を撤回

需要項目別に2018年の韓国経済の成長率をみると、輸出と個人消費、および政府支出が増えた。一方、設備投資は減少した。

今後、輸出の増加は見込みづらい。半導体市況の悪化に加え、韓国にとって最大の輸出先である中国経済も減速している。

それは、韓国経済が「逆回転現象」に直面することを意味する。

韓国は外需の落ち込みと、それを受けた財閥企業の業績悪化に直面する可能性が高いということだ。

個人消費の持続性は高くはないだろう。

2018年の個人消費増加は、文政権の政策に支えられた。

文大統領は所得の再分配機能を発揮するために、2020年までに最低賃金を1万ウォン(1000円程度)にすることを公約に掲げた。

それに向けて2018年に最低賃金を引き上げたことが大きかった。2018年の賃上げ率は16.4%に達した。

しかし、急速かつ大幅な賃上げは企業の反発を招き、文政権は公約の2020年の目標を撤回せざるを得なくなった。

輸出環境が悪化し、半導体セクターを中心に減益リスクが高まる中、個人消費にも下押し圧力がかかるだろう。

皮肉なことに、政府主導による賃上げは韓国の失業率を押し上げている。

すでにサムスン電子などは半導体生産能力の増強に向けて巨額の資本を投下し、今後の設備投資も増えづらい。

こうした中、韓国の雇用環境は一段と悪化する恐れがある。

韓国がこの状況をどう乗り切ることができるか、妙案は見当たらない。

最低賃金引き上げによる所得再分配策が頓挫したことを受け、文政権は財閥企業の成長力を高め、経済の底上げを実現しようとしている。

ただ、成長のけん引役である半導体の輸出にブレーキがかかる中、効果は期待しづらい。

文政権の経済政策は行き詰まった。

残された策は、公共事業など政府の支出を拡大しつつ、中国経済の回復を祈ることと言っても過言ではない状況だ。

米国との自由貿易協定(FTA)では、ウォン安誘導を禁止する為替条項が導入され、韓国が自国に都合の良い為替レートを目指すことも難しい。

文政権が直面する内憂外患

さらに悪いことに、これまで韓国が経済・外交の両面で頼ってきた中国は、わが国との関係を重視し始めた。

なぜなら、米国との貿易戦争に直面する中で、中国はわが国を味方に付け、発言力を高めたいからだ。

支持率挽回のために、文大統領は北朝鮮との融和を推進したい。

一方の北朝鮮は、米国との関係が冷え込む中国から庇護(ひご)を得た。

加えて、米トランプ政権にとって、北朝鮮政策は大統領選挙に向けた支持獲得(点数稼ぎ)の手段だ。

トランプ大統領は2回目の米朝首脳会談を実現し、北朝鮮の非核化に向けた協議を進めているとの成果を世論にアピールしたい。

これは、北朝鮮にとって実に都合が良い。

金正恩朝鮮労働党委員長にとって、文大統領の要請に応じる必要性は見当たらないと言ってよい。

極東地域において、韓国は孤立している。

苦境を打開するために、韓国はわが国への強硬姿勢を強め、有権者の支持をつなぎ留めたい。

韓国の対日貿易収支は赤字だ。

韓国にとって、わが国の素材や部品は、輸出材の生産に欠かせない。

貿易のパートナーを批判しても良いことはないはずだが、そうでもしなければ文政権は成果を示すことが難しい。

文大統領はかなり追い込まれている。

ここから先、一体どのようにして文大統領が韓国の経済を安定させることができるか分からない。

判明している情報を基にベストナレッジベースで韓国経済の展開を考えると、成長率の低迷を回避することはかなり難しいだろう。

文大統領の支持率低迷が深刻化し、政治不安が高まる恐れすらある。

北朝鮮の核の脅威に直面するわが国にとって、それは無視できない問題だ。

わが国は韓国に対して、過去の協定などの順守と安全保障面での米国との連携強化の重要性を伝えればよい。

同時に安倍政権は、アジア新興国などへの経済支援を強化し、わが国の主張への賛同を獲得すべきだ。

それが、国際社会におけるわが国の発言力を高め、極東地域の安定にも無視できない影響を与えるだろう。

※当記事は時事通信社発行の電子書籍「e-World Premium」からの転載記事です。
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真壁昭夫(法政大学大学院教授)


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