河野氏、外相会談で中国に反転攻勢の背景 苦しい外貨不足、『日本なら外貨を取りやすい』と歩み寄り
夕刊フジ
2018.1.30
安倍晋三政権が、中国への外交攻勢を強めている。
28日の日中外相会談では、中国の原子力潜水艦が今月中旬、沖縄県・尖閣諸島の接続水域を潜航したことに、河野太郎外相が強く抗議した。
いつもなら猛反発するはずの中国だが、逆に日中友好強化を進める方針を確認した。
中国の不可解な変化には、外交的に「八方塞がり」となっていることに加え、経済的に外貨不足に陥り、日本への接近を強めているとの見方が浮上している。
「日中関係改善を阻害しかねない事態を引き起こすべきではない」
河野氏は28日、北京の釣魚台迎賓館で中国の王毅外相と会談した際、中国潜水艦による暴挙について厳重抗議した。
通常ならば、日本に猛反発してくる中国だが、この日は違った。
王氏は、尖閣諸島が中国の領土だとする見解を示しながらも、両外相は、東シナ海での偶発的衝突を防ぐ「海空連絡メカニズム」の早期運用開始に向け努力することを確認したのだ。
不自然だったのは王氏だけではない。
チャイナセブン(共産党中央政治局常務委員)ナンバー2である李克強首相も「中日関係は改善の勢いが表れ始めているが、寒いところも残っている。
平和友好条約締約40周年を、真に中日関係が正常発展の軌道に向かうチャンスにしなければならない」と、河野氏との会談で語った。
対日強硬路線を維持してきた「中華外交」は影を潜め、中国の融和姿勢が目立った。
背景には、米国やインド、北朝鮮など、中国外交が「見かけ以上に四苦八苦している」(北京の外交筋)現状があるとの見方がある。
中国が最重要視する対米関係では、米国防総省が今月、「国家防衛戦略」を発表し、中国を「現状変更勢力」と位置づけた。
17日には、南シナ海のスカボロー礁(中国名・黄岩島)の近接海域で、ドナルド・トランプ米政権が「航行の自由」作戦を実施した。
米国が対中戦略を転換した一環として受け止められている。
朝鮮半島でも、中国の優位性は失われつつある。
金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長率いる北朝鮮は保護者的存在である中国を無視するかのように、「核・ミサイル開発」に邁進(まいしん)している。
中国に接近しているかのように見える文在寅(ムン・ジェイン)大統領の韓国も、米国の顔色も伺う玉虫色の外交でどっちつかずだ。
歴史的に国境をめぐって摩擦の続く大国・インドとの関係も好転していない。
インド、中国、ブータンの国境付近のドクラム地区では昨年6月、中国軍が道路建設に着手したことを契機に中印両軍のにらみ合いが発生し、1962年の国境紛争以来、「軍事衝突の恐れが最も高まった」とも指摘されている。
中国が経済的苦境から、日本に接近してきたという見方もある。
国際政治学者の藤井厳喜氏は「中国経済は現在、外貨不足に苦しんでおり、特に米ドルが厳しい。
このため、外国企業の中に共産党の支部を作って介入し、日本企業が中国でもうけても窓口規制で送金させないという現象も起きている。
『日本なら外貨を取りやすい』とみて、歩み寄りを見せているのではないか」と指摘する。
前出の王氏は日中外相会談で、安倍首相の訪中、習近平国家主席の来日についても、「着実に進めていくことの重要性」を改めて確認したが、見せかけの友好ムード演出に過ぎない可能性もある。
日本は今後、中国にだまされないため、何をしていくべきなのか。
藤井氏は「中国に一時的なおべっかを使っても、真の友好関係は築けない。
自国の政治・外交方針を明確に示すべきだ。
(中国潜水艦や艦船の侵入を阻止するため)尖閣諸島に自衛隊を置いた方がいい。
それができないなら海上保安庁の常駐施設でもいい。世界に対して、『尖閣は日本の領土である』というアピールになる。
中国が反発してくるなら、それは日中友好ではない」と話している。
夕刊フジ
2018.1.30
安倍晋三政権が、中国への外交攻勢を強めている。
28日の日中外相会談では、中国の原子力潜水艦が今月中旬、沖縄県・尖閣諸島の接続水域を潜航したことに、河野太郎外相が強く抗議した。
いつもなら猛反発するはずの中国だが、逆に日中友好強化を進める方針を確認した。
中国の不可解な変化には、外交的に「八方塞がり」となっていることに加え、経済的に外貨不足に陥り、日本への接近を強めているとの見方が浮上している。
「日中関係改善を阻害しかねない事態を引き起こすべきではない」
河野氏は28日、北京の釣魚台迎賓館で中国の王毅外相と会談した際、中国潜水艦による暴挙について厳重抗議した。
通常ならば、日本に猛反発してくる中国だが、この日は違った。
王氏は、尖閣諸島が中国の領土だとする見解を示しながらも、両外相は、東シナ海での偶発的衝突を防ぐ「海空連絡メカニズム」の早期運用開始に向け努力することを確認したのだ。
不自然だったのは王氏だけではない。
チャイナセブン(共産党中央政治局常務委員)ナンバー2である李克強首相も「中日関係は改善の勢いが表れ始めているが、寒いところも残っている。
平和友好条約締約40周年を、真に中日関係が正常発展の軌道に向かうチャンスにしなければならない」と、河野氏との会談で語った。
対日強硬路線を維持してきた「中華外交」は影を潜め、中国の融和姿勢が目立った。
背景には、米国やインド、北朝鮮など、中国外交が「見かけ以上に四苦八苦している」(北京の外交筋)現状があるとの見方がある。
中国が最重要視する対米関係では、米国防総省が今月、「国家防衛戦略」を発表し、中国を「現状変更勢力」と位置づけた。
17日には、南シナ海のスカボロー礁(中国名・黄岩島)の近接海域で、ドナルド・トランプ米政権が「航行の自由」作戦を実施した。
米国が対中戦略を転換した一環として受け止められている。
朝鮮半島でも、中国の優位性は失われつつある。
金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長率いる北朝鮮は保護者的存在である中国を無視するかのように、「核・ミサイル開発」に邁進(まいしん)している。
中国に接近しているかのように見える文在寅(ムン・ジェイン)大統領の韓国も、米国の顔色も伺う玉虫色の外交でどっちつかずだ。
歴史的に国境をめぐって摩擦の続く大国・インドとの関係も好転していない。
インド、中国、ブータンの国境付近のドクラム地区では昨年6月、中国軍が道路建設に着手したことを契機に中印両軍のにらみ合いが発生し、1962年の国境紛争以来、「軍事衝突の恐れが最も高まった」とも指摘されている。
中国が経済的苦境から、日本に接近してきたという見方もある。
国際政治学者の藤井厳喜氏は「中国経済は現在、外貨不足に苦しんでおり、特に米ドルが厳しい。
このため、外国企業の中に共産党の支部を作って介入し、日本企業が中国でもうけても窓口規制で送金させないという現象も起きている。
『日本なら外貨を取りやすい』とみて、歩み寄りを見せているのではないか」と指摘する。
前出の王氏は日中外相会談で、安倍首相の訪中、習近平国家主席の来日についても、「着実に進めていくことの重要性」を改めて確認したが、見せかけの友好ムード演出に過ぎない可能性もある。
日本は今後、中国にだまされないため、何をしていくべきなのか。
藤井氏は「中国に一時的なおべっかを使っても、真の友好関係は築けない。
自国の政治・外交方針を明確に示すべきだ。
(中国潜水艦や艦船の侵入を阻止するため)尖閣諸島に自衛隊を置いた方がいい。
それができないなら海上保安庁の常駐施設でもいい。世界に対して、『尖閣は日本の領土である』というアピールになる。
中国が反発してくるなら、それは日中友好ではない」と話している。