韓国経済に「家計負債」の死角 GDP回復も危うさ 半導体けん引 THAAD影響は続く
2017/10/26 23:30
韓国経済の「危うい回復」が続いている。
韓国銀行(中央銀行)が26日発表した7~9月期の実質国内総生産(GDP、速報値)は、前期比1.4%増と市場予想を大きく上回った。
絶好調な半導体メモリー輸出が成長率を押し上げた。
17年通年では3年ぶりに3%台に乗せそうだが、家計負債の急増が一見すると堅調な景気を冷やすリスクも潜んでいる。
成長率が市場予想(0.6~0.8%)を大きく上回った主因は、韓国企業が高い世界シェアを握る半導体メモリー輸出の急増だ。
半導体メモリーの需給が逼迫。世界2強のサムスン電子とSKハイニックスが輸出を急拡大し、輸出は前期の2.9%減から、6.1%増に転じた。
予想以上の高成長率にもかかわらず、市場の反応は鈍かった。
26日の韓国総合株価指数(KOSPI)は前日比0.47%下落の2480.63で引けた。
半導体の好況は織り込み済み。むしろ市場は持続力に目を向ける。
懸念材料の1つが、家計負債の急増リスクだ。
負債の大半が不動産融資で、首都ソウルの江南地区や釜山など大都市圏の一部地域では不動産投資が過熱。マンションや商業施設を投資目的で購入する人が、金融機関からの借り入れを膨らませている。
家計負債は15年から急増しはじめ、16年末時点で1566兆ウォン(約158兆円)とGDP対比で96%に達した。
16年だけで139兆ウォンも増え、07~14年の平均(60兆ウォン)に比べて2倍以上となった。海外の格付け会社や投資家も、急激な増加幅を問題視する。
韓国政府は24日、「家計負債総合対策」を発表した。複数の住宅を所有する人への融資規制の強化が柱だ。
融資を絞って不動産投資の過熱による家計負債の増加を抑える狙いだ。
「すぐに(金融)システム問題につながる可能性は低いが、急激な増加が続いているため先制的な対応が必要な状況だ」。
金東兗(キム・ドンヨン)経済副首相兼企画財政相は記者会見で、家計負債の膨張が危機的な状況に陥っているわけではなく、あくまで予防的な措置だと強調した。
しかし、すでに家計負債の総額は可処分所得を大きく上回り、消費の下押し要因となっている。
家計負債問題を軟着陸できれば消費にはプラスとなるが、今度はマンション建設が減って建設投資が下振れする可能性もある。
一方、米軍の地上配備型ミサイル迎撃システム(THAAD)の韓国配備に反発する中国から観光客が激減し、マイナスが続いたサービス輸出は、同4.3%増と6四半期ぶりにプラスとなった。
「THAADの影響は続いている」(韓銀)ものの、「増えない中国人観光客の代わりに、中国人バイヤーの大量購入が目立つ」(ロッテ免税店)との声もある。
韓銀は18年の成長率を2.9%と、拡大基調を見込む。
韓国野村証券の権英善(クォン・ヨンソン)専務は7~9月期の成長率発表を受け、18年の予想を従来の2.3%から2.7%に上方修正した。
ただ、「輸出が伸びても、政府の家計負債対策で建設投資が萎縮することにより相殺される」と分析。韓銀より慎重な見方を崩していない。
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