貧乏石好き

つれづれなるままに石をめぐりてよしなきことを

オートゥナイト 長垂のペグマタイト

2023-06-04 14:52:49 | 国産鉱物

ヤフオクの国産鉱物の続き。
燐灰ウラン鉱(オートゥナイト、Ca(UO2)2(PO4)2・10-12H2O)を含む標本があったので、ポチっ。

UVライトでオートゥナイトの微細な脈が鮮やかな、というか妖しい黄緑の蛍光を見せる。ビビビっと放射線も出てるかな。



商品説明には「燐灰ウラン石、インディゴライト、亜鉛スピネル」とある。
産地は福岡市長垂。
ネットサイト「空想の宝石結晶博物館」さんによると、

《福岡市から西へ20㎞程の長垂の海岸付近に日本では稀なリチウム・ペグマタイトがあります。
詳細な地質調査によると、中生代(およそ1億年昔)に起こった地殻変動で糸島花崗閃緑岩帯に含角閃石黒雲母岩(早良花崗岩)の貫入があり、特に長垂の南3㎞程の叶岳から長垂山塊では南東から北西方向に多数のペグマタイト岩脈が存在するとの事です。
長垂の海岸のペグマタイトは明治25年ころから知られていて、1939年(昭和14年)に天然記念物に指定されました。
更に長垂山の地下を走る筑肥線のトンネル工事にて採掘された岩にも大きなペグマタイト鉱脈が含まれていて、ここから採集された数百点に及ぶ鉱物標本が福岡市内の博物館に展示されています。
こうした採掘に伴い、リチア雲母、ピンクや青緑のリチア電気石、モルガナイト、ペタル石、モンテブラ石、ポルックス石、ガーノスピネル、コルンブ石、等々、希元素鉱物を含む70種余りの鉱物が発見されるという、鉱物収集家垂涎の鉱床でした。
かつての採掘後に残されたずり石等もすっかり採りつくされて、今では標本採集は不可能です。
ところが、最近、インターネット市場に、かつての採集品が少しづつ姿を見せるようになり、幻の長垂のペグマタイト鉱物がどんなものであったのか、入手することができるようになりました。》

そう、ペグマタイトなのです。ペグマタイトの現物は欲しかったんですねえ。まあこれは花崗岩の変種みたいですけど。
インディゴライトが入っているなんて本当かしらと思っていたけど、インディゴライトは青いリチア電気石=エルバアイトなので、あってもおかしくない。
実際、美しい青です。



亜鉛スピネル=ガーナイトは薄青緑のものがそうらしい。ガーナイトなんて国産であるんですねえ。


薄赤はアルマンディンですかね。他の所で売っていた同じような標本には鉄礬柘榴石との説明がありました。

鑑別能力がほぼゼロなので確かかどうかはわかりませんけど、盛り沢山で実に面白い。今は稀少となったペグマタイトを手にすることができて、とても嬉しい。

ところで、この長垂(ながたれ)という地名は面白いですね。神功皇后=オキナガタラシヒメ(『日本書紀』では気長足姫、『古事記』では息長帯姫)と関係しているのかな。あのあたりは神功皇后伝説と密接な関わりがある場所。そんな歴史の香りもいいです。

どうもヤフオクは手順がややこしくて面倒くさいけど、こうやってペグマタイトやスカルン鉱物を安価で入手できたのだから、ありがたいと言わなければなりませんな。


大陸地殻をめぐって ⑥花崗岩や水成鉱物は徒花?

2023-06-04 11:37:33 | 地球のお話

ところで、こうした大陸生成論に、登場してこないものがあります。
そう、花崗岩。巽先生の上記二冊に、花崗岩という言葉はたぶん一回くらいしか出て来ない。
花崗岩は、大陸地殻のかなりの部分を構成しているという見解もあるらしい。そして前にも書いたように、われら石好き民が愛玩する美石の多くは花崗岩とそれに付随する熱水によって作られる(水成鉱物)。
けど、どうも花崗岩は地球本体の生成発展には、あまり関係ないみたいなんですね。どちらかというと、玄武岩・安山岩によって作られた基体の上に咲いた徒花、枝葉末節みたいな感じ。
花崗岩というのは、マントルを構成する橄欖岩から、鉄やマグネシウムなどをごっそりとそぎ落とした「シリカ主体(70%)岩石」。「上澄み」と言えば言える。重要な骨格はもっと下の方にある。
けれど、そこには水を始め、玄武岩や安山岩では排除されてしまうような元素が凝集する。そしてペグマタイトや熱水鉱脈で多様な色と姿の鉱物を作り出す。

確かに地球固体の生成変化は、核(鉄など)、マントル(橄欖岩)、地殻(玄武岩・安山岩)、そして水が担っている。花崗岩や熱水鉱物はその「進化」にはほとんど絡まない。
けれど、それとは別の「進化」があるかもしれない。基体地球の進化を利用した、何か別の進化が。われら人類もまた地球基体の進化には絡まない。けれど、地球生命の進化の先端としてここに存在している。花崗岩や水成鉱物も、そういう別ルートの創造進化の担い手、それも先端かもしれない。

遠い未来、地上の水はすべてマントルに取り込まれ、地上生命は滅びるかもしれないという仮説もあるようです(巽先生はその説の主唱者らしい)。それもまた地球固体の生成進化なのかもしれません。そこでは別ルートの進化、基体を利用して展開した進化は、消え去るのでしょう。それはただ消え去るのか、どこか他の場所へ移るのか、それは不明。

われらはこの物質世界に生まれてきているのだから、この物質世界の真実が知りたい。はるか果ての宇宙の秘密もいいですけど、われらが立っているこの「地べた」がどうやって作られてきたのか、それはぜひとも知りたい秘密ではないでしょうか。