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貧乏石好き

つれづれなるままに石をめぐりてよしなきことを

道又の頑火輝石

2023-06-15 20:48:23 | 国産鉱物

前に国産アクチノライトの美しい放射状結晶標本を見つけてびっくりしたことは書きました。その後見つけた国産ヘデンバージャイトの放射状結晶も素晴らしいものでした。
そしたら今度は頑火輝石、エンスタタイトの放射状結晶というのが出ていて、うわあとなったのでした。で何とか落札。それほど高くはなかった。

わくわくしながら到着を待ちながら、ふと不安になりまして。ほんとにこれエンスタタイトなの?
エンスタタイトってうちのはこんなん。汎産の基礎的造岩鉱物。



mindat のギャラリーで見てもそんなエンスタタイトはない。
はて、と首をひねっていたら、ちょうどエヌズさんヤフオク版で似たようなのが出た。
「放射状結晶で産する道又の頑火輝石。黒い母岩に菊花状の結晶がよく映えます」とある。多くを語らんエヌズさんらしい素っ気ない記述だけど、エンスタタイトであることは確からしい。
で、道又でググると、「菊寿石」という言葉が出てきた。日本の愛石家の間では有名らしい。
菊花石というのはさすがにあちきでも知っている。岐阜のものは天然記念物になっているくらいだし。それとは違う。
知りませんでしたねえ。おまけに柿野のヘデンバージャイトのものも同じく菊寿石と呼ばれて愛好されたとか。どうも日本の愛石(水石・盆石)の文化伝統は一般石沼民にはあまり浸透していないようで。
で、さらに調べていったら、ツイッターの「A-Zearth日本の鉱物@A_Zearth」さんのツイートが出てきた。あちきもフォローしている方です。

《でも頑火輝石ってもっと暗緑色じゃない?と思ったんで、一応X線粉末回折にかけてもらいました。そしたら中身は頑火輝石+蛇紋石という結果でした。個体によっては滑石の混じっているものも。母岩も資料では蛇紋岩となっていますが、クロム鉄鉱を相当の量含んでいました。どうりで重いはずだ~》

ありがたいですね。国産鉱物マニアはすごい。あちきなんかは足元にも及ばない。

つまり蛇紋岩が変成(脱水)してできたものらしい。
エンスタタイト Mg2Si2O6
サーペンティン (Mg,Fe)3Si2O5(OH)4
火成岩由来ではなく、付加帯堆積物が溶融して生じた、ちょっと変わったエンスタタイトということでしょう。
この蛇紋岩というやつ、マントルの橄欖岩から水の作用で生じるもので、滑石を始めいろんな鉱物・岩石を生み出す。実に怪しく暗躍する岩石なのです。こんなエンスタタイトも生み出すとは恐るべき活躍。

そんな有名鉱物をわりと安く入手できたことは嬉しい。
おまけにこの標本、長方形に近い形なのですが、その六面全部に大きな結晶が出ている。実に贅沢な標本なのです。しかもけっこう金色っぽく輝く。





母岩に一際黒く固まっているのはクロム鉄鉱だったりして。



けれど、細い針針がどんなふうにして結晶したのか、この石はどうやって取り出したのか、うまく想像できなくて悩む。


ところでこの産地。エヌズさんには「下閉伊郡川井村道又」とあるけど、下閉伊郡は宮古市に合併されて今はもうない。道又という地名もなくバス停名があるだけ。
宮古といっても三陸海岸ではなく山間部で、早池峰山のすぐ近くらしい。けれど鉱山があったというような情報もない。
要するにさっぱりわからないのです。有名だとされる石の産地なのに、奇妙。ちなみに宮古市川井村でググってはいけません。(余計なことを)
いっそ「早池峰山の頑火輝石」とかにしたら素敵かも。

いろいろと迷走しましたが、太陽ルチルやパイライト・サンほどキンキラではないにしても、発散する線模様がピカピカと輝いて、実に美しい石です。
ひょっとしてこれ日本特産?


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