貧乏石好き

つれづれなるままに石をめぐりてよしなきことを

スペクトロライトはラブラドライトとはちょと違う

2023-09-10 11:10:14 | 単品

スペクトロライトは、スナイプし損なったりピンと来なかったりで、手に入れていなかったのですけど、今回ついに念願の原石を。
スペクトロライトと言えばパーフェクトストーンさん。この石屋さん、サイト名が「スペクトロライト」で始まるのでブックマークするとスペクトロライトになる。で、お店の名前はパーフェクトストーンで会社名はアール企画と実に複雑。最初の頃は覚えられなかった。(余計な話をw)
で、パフェさんいわく。(その略名はよせって)
《スペクトロライトはフィンランドの神話「カレワラ」の舞台となった土地で発見された北欧産の中性長石です。
光の干渉効果によって見える様々な色模様(スペクトル=虹色)はフィンランドだけで産出される種類です。
最新の解析では、スペクトロライトは中性長石(アンデシンの仲間)と言われています。
スペクトロライトが他の産地のラブラドライト(曹灰長石)と違う独特の色と光り方をする原因はまだあまり解明されていません。ユレマーでは御影石やハイパースシーン(紫蘇輝石)も産出されるためにそれらの鉱物との関連性もあるようです。》

ともあれ、ご尊顔。

確かに、ラブラドライトとはちょと違う。何が違うかというとよくわからないのだけれど、色が多彩で、輝きが金属的で、実に鮮やか。写真にはなかなか写らないんだけど。

ラブラドライトは、ラブラドライト(曹長石)とオリゴクレース(灰曹長石)とが微細な層をなしていて、そこで光が屈折干渉して燦光を発すると言われている。
スペクトロライトはそのあたりがちょっと違うような感じ。写真の中央下あたりに青緑の部分に混じり合うように紫の部分がある。ラブラドライトはあまりこういうぐにゃぐにゃな混じり方はしない。ある面はある色で光る。ような気がする。
スペクトロライトは層の重なりによって発色するのではなくて、一つの層の中に光を屈折させる構造があるのかもしれない。あるいは層がものすごく薄いか。まあ素人の想像に過ぎませんけど。
アンデシンというのも、千変万化、わけのわからない石ですねえ。こちら

ついでに言えば、長石の成分比というのはあんまり当てにならなくて、ラブラドライトとされているものが詳しく分析するとペリステライトだったりアンデシンだったりするとか。そのせいか現在の鉱物学では斜長石の細かい名称区分は廃止されちゃっている。全部「プラジオクレース」。カリ長石なんか、もう成分比による分類は廃止で結晶形による命名になってる。みんなやになっちゃたんじゃないかな。(ねえよw)
まあ細けえこたぁいいんだよ。AA略。

ところでフィンランドというのは、太古代の造山帯が残っている場所らしい。
これは丸山茂徳「太古代付加帯と新しい地球史」(『プルームテクトニクスと全地球史解読』岩波書店、2002年所収)にある図。

フィンランドはほぼ全域が黒い。ほかにはカナダ、内モンゴル、南アフリカなどが大きい。
素人なので確かなことは言えないけれど、古いのが残っているということは、いろいろと変動があったプロセスが垣間見られるということでしょう。変わった石も見られるのかもしれない。地球で最も古い岩石「アカスタ片麻岩」はカナダ北部で出るし、30億年前と言われる美しい「ヌーマイト」なんかはグリーンランドで出るし。
その「古い造山帯」で出るスペクトロライト。何か不思議な謎を秘めているのかもしれませんね。


半透明ペグマタイト? ユニコーンストーン

2023-09-06 21:22:37 | 単品

「ユニコーンストーン」という名前で売られていたもの。Comrose さんより。



《近年マダガスカルで発見されたペグマタイトの一種です。……ユニコーンストーンはレピドライト、ピンクトルマリン、スモーキークォーツ、そして白雲母の一種であるクリーブランド石(クリーブランダイト)が含まれていると言われています。》
クリーブランダイトは長石で雲母じゃないですね。特殊な結晶形のもので、こういう石に含まれるかどうかはちょと疑問。別の英語サイトには「レピドライト、ピンクトルマリン、スモーキークォーツ、クリアクォーツ」とある。

しかしペグマタイトが半透明になる?
よくわかりませんけど、石英が多くて、その透明度が高ければ、あり得ない話ではないでしょうね。長石が入っていないということなのか。
見栄えをよくしているのはピンクトルマリン。トルマリンの独立結晶は最近えらく高くなっているみたい。これは他の石とまじゃっちゃってるから値は付かないのでしょう。
トルマリンはペグマタイトでしか採れないそうです。これは美しい結晶ではないけど、この石は確かにペグマタイトなのでしょう。
青黒く見えているのは何か。レピドライト? クロム系の何か? こういうのがうまく散らばっていたら、より美しいものになるかもしれません。

しかし「ユニコーンストーン」とはこれいかに。ユニコーンという地名はアメリカにあるけれど、産地はマダガスカルなので関係ない。いかにもニューエイジ的命名ですけど、あんまり流行っている気配はない。これからかな。
名前はともかく、なかなか美しいし、何より異色のペグマタイトとして、とても面白い石だと思いますよ。


オプシディアンとガラス

2023-09-02 21:46:24 | おべんきょノート

「ブルー・オプシディアン」という名でヤフオクにお安く出ていたもの。



とても美しい。けど「(人工)ガラスじゃね?」と誰もが思う。
出品者さんいわく。
《コレクターが約30年程前に入手された石と聞いています。詳しい産地はよく分からないとの事ですが、中国の広西地方の火山地帯の地下深くから産出されたそうです。
譲り受けた時は一つの大きな石でしたが、重量がある為細かく割りました。割る前の原石には奥に秘めたハッキリとした虹色の発色が見られ、ここまで透明感のあるブルーの黒曜石は珍しいとの事です。》
あえて疑うつもりはない。ちょっと中国というのが気になるけど。元の大きな塊のままだったら人工ではないとはっきりしたかもしれない。

     *     *     *

オプシディアンと人工ガラスはどう違うか。何度も書いたけど、化学組成的には「流紋岩=花崗岩=オプシディアン=軽石」であって、含まれる元素は多様。
オプシディアンの組成の一例(名寄系朝日川、%)。( )内は岐阜県苗木の花崗岩組成。

SiO2    75.70    (76.83)
Al2O3   12,86    (12.47)
Na2O     3.80    (3.54)
K2O      3.56    (4.71)
FeO      1.72    (0.57 Fe2O3  0.33)
CaO      1.18    (0.70)
MgO      0.20    (0.037)
TiO2     0.12    (0.044)
MnO      0.03    (0.016)
P2O5     0.02    (0.002)

(出典:「北海道・東北地方を原産地とする黒曜石の定量・定性分析」。花崗岩はウィキペディア)
なお1%程度の水を含んでいることが多い。

一方、標準的な人工ガラス(ソーダ石灰ガラス)の組成は以下。

SiO       70~74
Na2O   12~16
CaO       6~12
MgO      0~4
AI2O3    0~2

(出典:SANSHIBAガラスコラム

チタン、鉄、マンガン、カリウム、リンなどは通常のガラスには含まれない。ただし色を出すために鉄やマンガンを入れることはある。
じぇんじぇん違いますね。化学組成を分析すれば容易にオプシディアンとガラスは区別できるということですね。こやつも……まあいいか。

     *     *     *

ともあれ、これは薄い青緑の色光がとても美しい。
人工ガラスでは青を出すにはコバルトや銅を添加するというから、これもコバルトか銅が入っているのだろうか。
けれど、他の石と並べると、全然趣が違って浮く。「鉱物」の質感がないから。何か別物ですな、こりゃ、という感じ。
でもそれもまた味わいと言えるかもしれません。

     *     *     *

おまけ。つか自分のためのメモ。安山岩の一般的化学組成。森北書店『化学辞典 第2版』より。

SiO2    59.59
Al2O3   17.31
Fe2O3    3.33
FeO      3.13
CaO      5.80
Na2O     3.58
MgO      2.75
K2O      2.04
TiO2     0.77
P2O5     0.26
MnO      0.18
H2O      1.26