茅ヶ崎の海岸通りの国道沿いにエルビスと言う名前の店がある。週末にはライブバンドも登場するが、平日は昔のレコードで常にエルビス・プレスリーの曲が流れる。平日は何故か妻に逃げられた男達が集まる。それも世間一般には、顔やスタイル、身長から判断すればかっこいいと思われる男達。でも皆、どこか寂しそうである。侘しさが漂う、おばさん達には母性本能をくすぐられるかもしれない。妻に逃げられ、子供達にも会えない、仕事は出来るし、会社での地位も高い、決して人生に失敗した訳ではないのに、何故か寂しい。
今日はカップルがやって来た。男が女にエルビスの曲が流れるとその曲の解説をしている。
「Are you lonesome tonight?、今夜は一人かい、寂しいならヨリを戻そうよなんて歌う姿は、男の身勝手さがプンプンしている。こんな独りよがりな男と別れた女は、楽しくやっているに違いない。それでも妄想の激しかった学生時代は、これでもカッコイと信じていたプレスリーが歌う身勝手で自信満々の男に、自分もなろうと努力していたんだ」
「Love me tender、今でもこの曲が究極のラブソングだと思う。プレスリーが歌うのがいい、彼自身は少しフラット気味で、レコーディング時には不満だったと言われているが、その部分も含めて最高傑作である。このフラット気味も曲を採用したレコーディングディレクターも最高だろう」
「好きにならずにいられない。英語のタイトルはCan't Help Falling In Love、これもいいバラードだ。これも究極のラブソングだと思うよ」
「この胸のときめきをって歌、英語のタイトルYou do not have to say you love me.よりずっと日本語のタイトルがいいと思う。いかにも君に心底ときめいているようでいい」
「そんなに、プレスリーが好きだった?」女が初めて口を開いた。
「You are always on my mind. この歌が一番好きかな?妻を大事にしなかったことを後悔することを切々と歌い上げる。妻と別れて始めてわかる家庭の大事さ。仕事よりも、もっともっと大事なものがあることを、離婚したプレスリー自身が身をもって思い知らさせてくれるんだ」
「今さら後悔しても遅いわ」
「確かに仕事ばっかりで、君を大事にしなかったことは認める。でももう一度やり直せないか?」
「今更何を言っても無駄だって事は、もうわかっているんでしょ。さようなら」女は、振り向きもせずに出て行った。
「マスター、その今流れているYou are always on my mind、もう止めてくれないかな」
今日はカップルがやって来た。男が女にエルビスの曲が流れるとその曲の解説をしている。
「Are you lonesome tonight?、今夜は一人かい、寂しいならヨリを戻そうよなんて歌う姿は、男の身勝手さがプンプンしている。こんな独りよがりな男と別れた女は、楽しくやっているに違いない。それでも妄想の激しかった学生時代は、これでもカッコイと信じていたプレスリーが歌う身勝手で自信満々の男に、自分もなろうと努力していたんだ」
「Love me tender、今でもこの曲が究極のラブソングだと思う。プレスリーが歌うのがいい、彼自身は少しフラット気味で、レコーディング時には不満だったと言われているが、その部分も含めて最高傑作である。このフラット気味も曲を採用したレコーディングディレクターも最高だろう」
「好きにならずにいられない。英語のタイトルはCan't Help Falling In Love、これもいいバラードだ。これも究極のラブソングだと思うよ」
「この胸のときめきをって歌、英語のタイトルYou do not have to say you love me.よりずっと日本語のタイトルがいいと思う。いかにも君に心底ときめいているようでいい」
「そんなに、プレスリーが好きだった?」女が初めて口を開いた。
「You are always on my mind. この歌が一番好きかな?妻を大事にしなかったことを後悔することを切々と歌い上げる。妻と別れて始めてわかる家庭の大事さ。仕事よりも、もっともっと大事なものがあることを、離婚したプレスリー自身が身をもって思い知らさせてくれるんだ」
「今さら後悔しても遅いわ」
「確かに仕事ばっかりで、君を大事にしなかったことは認める。でももう一度やり直せないか?」
「今更何を言っても無駄だって事は、もうわかっているんでしょ。さようなら」女は、振り向きもせずに出て行った。
「マスター、その今流れているYou are always on my mind、もう止めてくれないかな」