財務省は「官庁の中の官庁」と呼ばれ、元々大蔵省として律令制時代に朝廷の財産管理をつかさ
どった役所だった。それが1998年に発覚した過剰接待スキャンダルで「大蔵」という名を剥奪さ
れ、財金分離によって権限を削がれた。さらに記憶にも新しい2018年の財務省の公文書改ざん問
題、福田淳一事務次官によるセクハラ問題で地に落ちた感がある。
大蔵省は「霞が関のエリート集団」であった。いまも大蔵省(財務省)の権力の源泉は「予算編
成権」にある。「米国でいえば、財務省、行政管理予算局、証券取引委員会、連邦取引委員会の
権限の大部分が含まれているほか、欧米の同種官庁がもたない権限も保有している。すなわち、
大蔵省は主計局と主税局を通してマクロ経済を支配し、中央銀行である日本銀行に対しても強い
影響力を行使できる(元ニューズウィーク誌マイケル・ハーシュ氏、1993年12月号)」という。
大蔵省過剰接待スキャンダル後、自民党では「大蔵省を解体せよ」の意見が大きくなった。しか
し、大蔵省の巻き返しにより、当時の橋本首相による行政改革は空洞化してしまった。メディア
でも最終報告を「腰砕け」「竜頭蛇尾」と評されている。
今や自民党は財務省の完全な言いなりで、財務省主導の度重なる消費税増税で深刻な景気悪化を
招いている。財政健全化を目標としながら先行きは暗く、森永卓郎氏には「ザイム真理教(売れ
てます、是非一読を!)」と揶揄され、日本を貶める根本原因とされている。日本の為ではなく
自らの出世と天下りだけが財務省で働く人々の希望になってしまったようだ。
財務省の黒い霧 歳川隆雄 宝島社新書