ノーム・チョムスキーは言う「破綻国家」とはアメリカを指している。破綻国家とは自国民のみ
ならず他国にとっても脅威となり、国際法を破り、国民の生活を維持する内部構造を発展させる
ことが出来ないなどの特徴を持つ国家だ、と。コロナが脅威となりつつある時、当時のトランプ
大統領は「コロナなどたいしたことはない、たちの悪い風邪のようなものだ」と請け合っていた
が、株価が暴落すると「これはパンデミックだ!私は誰よりも先にそれに気づいた!」と語って
いる。そしてその後アメリカの感染者数と死者数は世界の中でもけた外れに多い結果になった。
アメリカ全体を「被害妄想」が覆っている。多数の人々が「進歩主義のファシストが、われわれ
まっとうなアメリカ人を排除しようとしている」という陰謀論を支持する。これに対処するには
追い出すのではなく、話し合いの場を設けることしかないとノームは指摘する。
ノーム・チョムスキーは決して手放しで民主党を支持しているわけではない。トランプ後のバイ
デン政権にも批判の手を緩めない。ただトランプよりはずっとマシだという認識だ。
大幅に後退する民主主義だが、想像を絶するほどの厳しい環境下でも、人々が権利を獲得しよう
と奮闘している。インドの農民も、ホンジュラスで貧困にあえいでいる人々も決してあきらめな
い。だから、彼らよりはるかに恵まれているわれわれがあきらめることはできない。最善をつく
そう。そうすればひょっとして、恥じることなく生きられるという感じられる、まともな世界を
実現できるかもしれない、と締めくくっている。
壊れゆく世界の標(しるべ) ノーム・チョムスキー NHK出版新書