私は長年アパレルに勤めていましたが、会社が商品を廃棄したことは一度もありません。勤めて
いたのが中小マンションメーカーでしたので、生産量もそこそこ、利益もそれなりだったからで
しょうか(充分な利益を得ていたと思います)。その頃にも有名ブランドでは売れ残り商品の廃
棄の噂は聞いていました。原価は有名ブランドと普通のメーカーでそれほど違う訳ではないので、
ブランド価値を守るためにしていたのかもしれません。
営業をしていて大きな変化は、ユニクロの拡大とファストファッションの隆盛により、その安さ
に驚いたこと。安倍政権下の消費税増税が小売りの現場に大打撃を与えたこと。当時自由が丘の
店長が「やたら値札を見て回る客が増えた」「何枚も試着しても購入に至らない」とズイブン愚
痴を聞きました。
アパレルに関して大量廃棄が発生したのは2000年代に入ってからではないでょしょうか、売価が
極端に低下すれば、原価を下げるしかありません。大手アパレルは安い労働力を求め、劣悪な環
境を無視し、大量製造に走ったことが原因でしょう。流行りは短サイクルすぎて、誰もキャッチ
アップできません、おしゃれは自分らしさを見直すことで、量ではない事に気づけば変化するは
ずです。
本書の帯の裏に「知っていますか?あなたも毎日、お茶碗一杯のご飯を捨てているということを」
とあります。個人の気づきも大事ですが、関わる人全員が責任を負うことを強調しすぎるのはど
うかと思います。日本では責任の所在を曖昧にする傾向があります。大手アパレルも大手食品メ
ーカーもあまりに利益追求が過ぎる、地球環境に対する配慮が必要でしょう。
大量廃棄社会 仲村和代 藤田さつき 光文社新書