著者は経産省在職中に新エネルギー・産業技術総合開発機構で電気・IT分野の国家プロジェク
トの立案およびマネジメントを担当しており、現在は太陽光発電などの再生可能エネルギーにつ
いてコンサルティング等を行っています。本書ではそもそも「電気」とは何か、という基礎から
始まり、電気はどういうエネルギーか、電気料金はどのように決まっているのか等々、私たちの
疑問について丁寧に説明してくれています。
その上で東日本の電力不足に関して、安定供給が難しい再生可能エネルギーを補助していくため
には老朽火力発電所の維持と、さらには原子力の使用に関してもその可能性に言及しています。
ただ大型工場、倉庫においては自家消費型発電設備が進み、いくつかの地域においては小規模発
電システムでその地域の電力を賄う動きもあり、電力の地産地消も進んでいます。
さらには原発では燃料を冷やすために海水を使うということ。その水は温まり、それを海に捨て
ている。入れたときより7度〜10度温まった状態で棄てられるため、海水温を上昇させ、排水口
付近の生態系に影響を与えているという点も考慮すべきでしょう。
電力がひっ迫している状況でも、例えば新宿、渋谷でいくつもの駅前オーロラビジョンが過剰と
も思える音、映像を流しています。あれを制限しても誰も困らないと思いますが。
電力危機 宇佐美典也 星海社新書