まえがきで著者本人が「ぶっちゃけて自分で言いますが、ものすごく面白いです」と書いていま
すが、本当に面白かった!著者は大学在学中22歳の時に劇団「第三舞台」を旗揚げし、しばらく
たった頃に役者たちが続けるかどうかという事態に直面し悩みます。その時に偶然会った先輩に
「考えることと悩むことは違う」と言われ衝撃を受けました。そう現実認識と現状分析し、切り
開くことをおしえられ、一日中悩んでいても始まらないと諭されたのです。
著者は統一教会に取り込まれた二人の人間を体を張って奪還した経験もあります。彼の家で口論
している間に裏口から逃がしたり、居所がばれて、相手と数分違いで、脱出したこともあるそう
です。その時の結論は、一人の人生を救うには、もう一人の人生が必要だ。ということ。相手側
の教義や活動の矛盾を語るよりも、「あなたが人生に求めているのはないのだ」と言い続けたと
書いています。
吃音の人たちとのワークショップには感動しました。参加者は60人ほどで殆どが「どもる人」で
彼らは”予期不安”があり「どもったらどうしよう。今は大丈夫でも、いつどもるかもしれない」
という不安に捕らわれて、なかなかそういう場に参加しないそうです。それが著者発案の「椅子
取りゲーム(最初に自分に該当することを発言する)」で真ん中に立つ人は、軽くどもったり、
顔を真っ赤にしてどもったり、体全体をくねらせてどもったりして大盛り上がりを見せます。ど
もってもいいんだという状況がそこにあったのです。
吃音の人たちとの話にウルウルしたり、声が出そうなくらい笑える話も合って、電車の中で読ん
でいて困りました。心揺さぶられる体験を一冊の本でしました。
人生ってなんだ 鴻上尚史 講談社+α新書