確かに、かつて日本の電機産業は世界一の強さを誇っていた。私の身の回りには日本製がズラッと
並び、今でも一部海外ではmade in japanに対する評価が高い。しかし、今や世界的に見ればその
面影はない。巷には成功体験の本が多いが、敗者の本は殆ど目にしない。著者自身TDKに勤務し、
父親はシャープの副社長だった。本書は業界の最盛期と凋落期を体験した著者の改革の提言書だ。
日本の製品には差別化を図るため多機能なモノが多い。目の前にあるテレビのリモコンを見れば
一目瞭然だ。私が全く使わないボタンが多数存在する。安価でシンプルで直感的に使えるという
デジタル化の本質を日本の電機メーカーは見誤ったのだ。
日本もグローバリズムに呑み込まれ、雇用でも今までの常識が通用しない現状にあるが、その際
競争原理を導入する上で不可欠な公平性に欠けると言う。ダイバーシティの遅れが顕著で、著者
がアメリカ本社から来た出張者と意見交換の場に臨むと会議の後に、必ず「出席者が全員男だっ
たなあ。あんなの、日本と韓国だけだよ」と言われたという。
本質的な議論ができない日本企業、そして明快なビジョンによって社員の使命感に火をつけ、行
動変容促すリーダーの存在。経営者に対する厳しい評価制度、世界の中で最も低いエンゲージメ
ント(ビジネスでは主に従業員の会社に対する「愛着」や「思い入れ」を指す)の意味の向上を
図るために公平性を徹底させるなど、今の日本企業に必要な提言がなされている。
日本の電機産業はなぜ凋落したのか 桂幹 集英社新書
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