悲劇、将軍の行方
最終話 [将軍の行方]
夜はまだまだ続きそうだった。
みつこは急に吐き気をもようした、
次郎丸は前に艶子がそうであったのを思いだし、
[娘、まさか、、]
みつこ
[はい、、お腹の中には一郎丸様のお子が、、]
なんということだ、
なんということだ、、!!
次郎丸はみつこに聞いた、
[俺は鬼を殺した男だぞ!憎くないか?]
みつこ
[はい、憎うございます、
しかし、あのことがあってからアカ様は毎日毎日なやんでおりました。
やはり、自分は鬼なのだと、、
その鬼からアカ様がやっと解放されたようにも、今は思います。]
しっかりした目で次郎丸を見た。
それから少したって次郎丸は脇差しを抜いた。
仁太は[な、なにを!]
次郎丸はその脇差しで、髷を切り落とした。
次
[仁太、頼みを聞いてくれるか?]
仁
[な、なんでしょうか?]
次
[この髷を持って国に帰り、そして鬼は退治した、相打ちだったと皆に伝えてくれ、俺は、、いや、蔵三か、蔵三は鬼と共に死んだ、と、]
仁
[なにをいってるのですか、帰りましょうよ、一緒にかえりましょうよ!]
仁太は泣きじゃくっている
次
[そして、娘、いや、みつこ殿、あなたは仁太と共に山を降りて暮らして頂きたい、
勝手ではあるが、もしよければ、そのお腹の子を育ててはくれないか、
にっくき男の、子ではある。
どうだ?]
みつこ
[私は山を降りません、ここには姉たちの霊がおります、いままでどうり、姉たちと暮らしていきます。]
[お腹の子もなにも知らずに生まれてくるのです、罪はございません、
大事に育てていこうと思っております]
次
[強いな、]
[しかし、その役は俺にくれぬか?
俺は兄の償い、そして俺自身の償いの為、
俺は兄の敵とばかりにアカ殿の本質を見抜けなかった、、
俺はこの場所であなたの姉たち、そしてアカ殿の霊を弔いながら、この世にとって大切なものは何か、探しながら暮らそうと思うのだ。
なぁ、ご老人、]
次郎丸は仁太のほうを見ていった。
仁太の隣にはいつの間にか、あの老人が座っていた。
仁[わっ!びっくりした!]
老人はにっこりわらって
[みつこや、そうさせてあげなさい、
おまえは山を降りてお腹の子とゆっくり暮らしなさい、
あの子らのことは大丈夫、わしもいるしな、]
[おじいさま]
みつこは泣いた。
次
[仁太、そうゆう事だ、みつこ殿と共に山を降りて、願いついでにもうひとつじゃ、おまえの家でみつこ殿の面倒をみてくれぬか?
仁太
[そりゃかまいませんが、おいらみんなになんて言うんですか?]
次
[いいか、よく聞け。
蔵三、冬力、鷹次には俺は死んだ、と伝えてくれ、探しに来たりしたら困る。
そして鬼は死んだ。これで民も安心するだろう。
蔵三にはそのまま次郎丸として居てもらってくれ、そして艶子の子がおおきくなったら時期を見て次郎丸は病死した、と言うぐあいにして家督を継がせてやってくれと、
ま、蔵三はその時もう一度名前を変えんといけないがな!
次郎丸は笑った。]
仁太は泣きながら言った。
[でも~~、でも~~]
次
[おい仁太!男仁太!できぬのか?]
仁
[やりますとも~!やってみせますとも~!男仁太!この約束守らせていただきます~!]
[えい!えい!お~!]
次郎丸は吹き出してしまった!
みつこもくすりと笑った
老人にいたっては大笑いである。
さっきまで泣いてた仁太も少し笑った。
別れの朝である。
老人はまたどこかに消えていた。
仁太はみつこに肩を抱えられ山を降りた。
仁太は何度も何度も次郎丸のほうを見た
その二人の後ろ姿をみながら次郎丸は心の中で[さらば、仁太]と言った。
みつこもふいに何か聞こえた気がして振り返った
[さよなら~、みっちゃん]
[みっちゃん~元気でね~]
たくさんの子供たちの声が聞こえた気がした。
二人は泣いた。
みつこの案内のおかげで山を降りるのには二日ほどで降りられた。
そして稲田村までたどりついた時、二人は何か聞いた!
岩木岳の方である、なんと山の上にはおおきな龍がゆっくりと空を舞っていた。夕日の中で美しかった。
そしてその龍は二人の方をしばらく見た気がした。
そして山の向こうに飛び去っていった。
仁太は言った。
[今の龍、次郎丸様でねぇべが、うちのばぁさまがいってたんだけど、龍神様の目は真実を見抜くんだって、
次郎丸様は龍神様になったんでねぇべか]
みつこは静かに頷いた。
それから十年はたっただろうか、、
将軍家には元気な男の子が生まれ、すくすくと育っているという。
ここは岩木岳の麓の稲田村、沢山の子供たちが前の子の肩をつかみ一列になって遊んでいる。
[アカはいい鬼おおき鬼~、今日はなにしてあそぼうか~、
りゅうじん様にまたがって~、となりの山までいきましょか~]
先頭の女の子がいった
[あっ、みっちゃんだ!みっちゃん、おはいんなさい!]
向こうから元気に走ってくる女の子がいた、ちいさな弟の手を引いて。
この国にはこの十年鬼は出ていないという。
終わり
長い間ご愛読ありがとうございました。
処女作ということで非常に素人臭い仕上がりになってしまいましたが!ドンマイ!
楽しかったです!
夏休みは本を読もう!
ありがとう!
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