今週号(10月17日号)の週刊東洋経済に、『食料自給率のからくり』という面白い記事があったので、ここで食料自給率の話を少々。
そもそも、日本の食料自給率が40%を切った!と大騒ぎしたのは2年前のお話。2006年度のカロリーベース自給率が39%を記録したことが注目を浴びたわけです。その後、カロリーベース自給率は若干持ち直し、2007年度は40%、そして昨年は41%になっています。
この自給率について巷でよく論争になるのは、果たして「カロリーベース自給率」が食料自給に関する政策を考察する上で適切なのかどうか、という点です。例えば、農林水産省は毎年、「カロリーベース」と「金額ベース」という2種類の食料自給率を公表しているのですが、金額ベースだと、日本の自給率は61%(2008年度)なのです。
(資料:農林水産省/日本の食料自給率)
ところで、週刊東洋経済の記事で興味深かったのは、このカロリーベース自給率の算出方法についての「からくり」の話です。
カロリーベース自給率を算出するためには、当然ながら、『分母』が必要なのですが、これは「国民1人に供給される一日分のカロリー(熱量)」です。2008年度は、これが2,473カロリーだったそうで、このうち1,013カロリーを国内生産分で賄っているので、自給率は41%になるわけです。
ところが、私たちは、一人あたり平均で2,473カロリーも摂っていないですね。一日2,500カロリー以上摂取するのは、かなりきつい労働に従事しているか、身体の大きい男性ぐらいでしょうか。実際に私たちが摂取しているカロリーの平均値は、2007年度で1,898カロリーなんだそうです。あれ? それでは、自給率の計算に使われている2,473カロリーとの差、652カロリーはどこへ行っちゃったんでしょうか?
その答えは、「廃棄」なんだそうです!
これもよく社会問題として取り上げられていますが、今、年間で1,900万トンもの食品が廃棄されているとのこと。さらに悪いことに、この供給カロリーと摂取カロリーの差(ムダの部分)は、年々拡大しているそうなんです。つまり、この廃棄食料(もったいないムダ)の部分を除けば、自給率はカロリーベースでも54%ぐらいになるってことなんですね。
「日本人は、国内の食料供給力を上げると同時に、廃棄を減らすことも考えなければならない」と記事は訴えています。その通りですね。何せ、1,900万トンという廃棄量は、「世界で実施される食料援助量(約600万トン)の約3倍」なのですから!