白石勇一の囲碁日記

囲碁棋士白石勇一です。
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書評・第12回 石の形 集中講義 完全版

2017年11月02日 23時59分59秒 | 書評

皆様こんばんは。
本日は棋士の手合日でした。
幽玄の間でも多くの対局が中継され、その中には杉内夫妻(97歳、90歳)の対局も含まれていました。
残念ながら両者ともに敗れましたが、最後まで戦い抜いていたのは流石です。
皆様もぜひご覧ください。

さて、本日は書籍をご紹介します。
今回ご紹介するのは「石の形 集中講義 完全版」です。
原作が出版されたのは2006年であり、完全版は2012年です。
ということで、残念ながら現在は絶版になっています。

ですが、電子書籍版が出ているので、そちらは現在でも購入できます。
本書は352ページという超ボリュームなので、むしろ電子書籍版の方が扱いやすいかもしれませんね。
良い時代になったものです。
なお、マイナビの商品ページはこちらです。

さて、本書は表題通り石の形に特化した内容となっています。
私も常々お伝えしている通り、石の形は非常に重要です。
読みの力などと同様に、上達のためには欠かすことができない、土台となる分野なのです。
土台がしっかりしているかどうかで、上達のスピードは何倍も違ってきます。

本書の構成は、石の形を裂かれ形2目の頭空き三角などのパターン別に分類し、その良し悪しや何故そういった形ができるのかを解説していく形になっています。
この何故を知ることが非常に重要なのです。
形の名前やパターンを知っていても、実戦で出来上がり図を見て気が付くようでは遅いのです。
また、その直前で気が付いて回避できることもあるでしょうが、手遅れになっていることもしばしばです。
そうならないために、原因を知っておかなければなりません。
特に前述の名前の付く形については、しっかりと身に付けておきたいですね。

本書は非常に分量が多く、対象の棋力もかなり幅広くなっています。
初級者の方が必ず覚えるべき分野もあれば、高段者でも間違える問題も含まれています。
ですが、全てのパターンを理屈からきっちりと理解しようとする必要はありません。
示されている正解の手を繰り返し眺めるだけでも、十分に石の形を学べるのです。
むしろ考え過ぎは害になると言っても過言ではないでしょう。

これは石の形に限りませんが、上達のためには楽しく学ぶことが大切です。
肩肘を張らず、気楽に読み進めて頂くと良いでしょう。