白石勇一の囲碁日記

囲碁棋士白石勇一です。
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AlphaGo Lee対Zero 第6局

2017年11月03日 23時59分59秒 | AI囲碁全般
皆様こんばんは。
本日はAlphaGo Lee対Zeroの棋譜紹介シリーズです。



1図(テーマ図)
Leeの黒番です。
白△とつないだところですが、ここまで第3局と同一の進行です。
人間には向きが違っていることが気になりますが、Alには関係無いようです。

さて、第3局では黒A、白Bと進みました。
黒△が要石なので、当然そうやって守りたくなります。
ところが・・・。





2図(実戦)
なんと、手抜きで黒1!
すると当然ながら白2と切られ、黒の外勢が崩れました。
白4の後に白Aとでも打たれれば、黒はますます悲惨な姿になります。
こうなってはいけないということは、初級者の方でも教わっていることが多いでしょう。

しかし、黒はあくまで右上には構わず、黒5と左下白への攻撃を続行しました。
この黒の打ち方を単純に説明しますと、「元々右上白は生きている石なので、そこから地を増やしても大したことがない」と主張しているということになります。
とはいえ、景色が大きく違うので、なかなかこの打ち方はできませんね・・・。

Leeは登場当時残した棋譜が少なく、その打ち筋は一面しか見ることができませんでした。
しかし、こうして見ると、この時点でも人間の打ち筋とは大きく異なりますね・・・。
5線に肩ツキするとか、人間が打たないノゾキを打つといったこともありましたが、そんなレベルではない違和感を覚えます。
第3局では人間的な打ち方をしているので、これが絶対の正解と判断している訳でもないのでしょうが・・・。

さて、左下白の対応ですが、棋士の対局ではほとんどの場合白B~Dのいずれかが選ばれます。
これらについては「やさしく語る 布石の原則」でも解説しています(宣伝)。
ところが・・・。





3図(実戦)
Zeroの対応はそのどれでもない、白1、3でした。
これはそう難しい手ではありませんが、棋士の対局ではあまり現れていないでしょう。
と言うのは・・・。





4図(実戦)
黒1、5のポン抜きを許してしまうからです。
ポン抜きによって1眼できた黒の厚みは強力です。
白も黒2子を取って生きたとは言え、厚みが外側に向いている黒が有利に見えます。

ただ、白は結果的に黒△の位置がおかしいと主張しているのですね。
ポン抜いた黒と黒×では後者の方が弱いので、そちらに寄せて黒Aの方が良いのです。
実戦では白から隙間への打ち込みを狙われます。

この打ち方を選んだ理由はそれだけではなさそうですが、まあ私なりに理解したつもりにはなれます。
それでも、この打ち方には抵抗がありますね。
AIにはポリシーネットワークがあってもポリシーは無く、そこが人間の碁に比べてドライに感じる理由でしょうか。