白石勇一の囲碁日記

囲碁棋士白石勇一です。
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AlphaGo Lee対Zero 第8局

2017年11月19日 21時41分59秒 | AI囲碁全般
皆様こんばんは。
最近、右肩の痛みに悩まされています。
マウスを触っている間が酷く、これが主な原因でしょうか・・・。
確かに、ここ数年でパソコンを使う仕事が増えてました。
スマホなどの影響も考えられ、いずれにしても現代病でしょうね。
私は病院嫌いなのですが、一度診て貰うことにします。
差し当っては、マウスを左手で操作することにしました。

また、明日は有楽町囲碁センターで指導碁を行います。
ご都合の合う方はぜひお越しください。
碁を打つことに支障は無いので、どうぞご遠慮無く!(笑)。

さて、本日はAlphaGo Lee対Zeroの対局をご紹介します。



1図(テーマ図)
ここでZero、黒△と白△がくっついた所から離れて白1と打ちました。
調子が外れた手のようですが、棋士の対局でも打たれることがあります。
黒Aから小さく生きるならどうぞということですね。
そして、黒が他に打ったのを見て白3と手を入れました。

ただ、この打ち方をするためにはある問題があります。
それは・・・。





2図(実戦)
黒1から動いてきたらどうするのか? ということですね。
白4までと取りに行って、確かに生きるためのスペースは足りません。
しかし、白の外勢にも隙があり、本当に取れているかどうか?
こういう状況を、専門用語で味が悪いと称します。

取れていそうに見えるけれども、実は黒から上手い手があって生きられたり、あるいは捨て石で大きな利益を上げられてしまうかもしれない・・・。
棋士はそんな状況はなるべく避けたいですし、もし打つなればしっかりと読み切った上でのことと考えます。
しかし、本図の後の変化は多く・・・。





3図(変化図1)
例えば黒がこのように動いてくることが考えられます。
この図はAの所でのコウ争いになりますが、そうなった時の判断が必要です。
また、白2で他の手を選び、丸取りにできるかどうかも読まなければいけません。





4図(変化図2)
黒にはこんな手も考えられます。
もしこうなってしまうと逆に白が取られるので、白は他の打ち方を考えなければいけません。





5図(実戦)
実戦は黒が隅の石を捨て、上辺に展開する作戦を採りました。
そちらでプラスが得られますし、また隅の石もまだ盤上に残っているので、何かの拍子に黒Aからの救出が実現するかもしれません。
となるとこの周辺で白は打ち方が制限されることになり、それも黒にとってプラス要素です。
こういった展開で実は白が良くないということも多く、白としてはこの進行にも気を付けておかなければいけません。

これらの図は一例ですが、つまり1図は白にとって心配が多い形なのです。
時間をかけて読みと判断の裏付けを取っておかないと、選びづらいのではないでしょうか。

しかし、Zeroは1手を0.4秒で打っているそうです。
そんな時間で読み切れるのでしょうか?
それとも、勘で大体分かってしまうのでしょうか?
こんなところからも、Zeroの部分戦での強さを感じ取れますね。

私の勘違いでした。
公開された対局は持ち時間2時間だそうです。