白石勇一の囲碁日記

囲碁棋士白石勇一です。
ブログ移転しました→https://note.com/shiraishi_igo

国民栄誉賞!

2018年02月13日 23時06分00秒 | 囲碁界ニュース等
皆様こんばんは。
本日、将棋の羽生善治永世七冠と囲碁の井山裕太七冠が国民栄誉賞を受賞しました。
おめでとうございます!
江戸幕府の保護により、囲碁棋士・将棋棋士という職業が確立されてから約400年・・・。
感慨深いものがありますね。

井山さんは主に七冠独占を2回も達成したことを評価されました。
今回はその難易度を説明してみようと思います。

七大棋戦・・・棋聖・名人・本因坊・王座・天元・碁聖・十段は、基本的に全棋士が参加する棋戦です。
先程数えてみたところ、日本棋院の現役棋士は338人。
関西棋院の棋士は157人ということで、500人近くが参加していることになります。
この人数の中で競争に勝ち抜くということは、尋常な難易度ではありません。

例えば、名人戦挑戦者決定リーグは9人で争われますが、この9人は500人の中から選ばれた真の強者です。
その強者の中の争いで、他の8人を押さえて優勝する事でようやく挑戦者になれます。
そして、七番勝負で名人に勝つことでようやくタイトル獲得が成るわけですね。
熾烈な争いを勝ち抜き、七大タイトルを1回でも取ったことのある現役棋士は、私が数えた限りでは25人しかいません。

井山さんはそのような厳しい道のりを乗り越え、タイトルに挑戦・獲得してきました。
そして、王者としては挑戦者を悉く蹴散らしてきました。
挑戦者になることはとてつもなく大変であり、単に実力があるだけではなく、その時に最も調子の良い棋士が出てきます。
そんな相手が次から次へと現れるのですから、休む暇が全くありません。

過去にも、その時代に圧倒的な強さで頂点に立っていた棋士は沢山います。
しかし、全冠独占に近付いた棋士はほとんどいませんでした。
何故なら、彼らはいつも圧倒的に強いわけではなかったからです。
体調不良、精神の不安定などをはじめとして、様々な要因で人間の打つ碁は乱れます。
時の第一人者であっても、1割か2割は不本意な碁を打ってしまうものではないでしょうか。

しかし、井山さんは圧倒的な強さを年間通して維持しました。
時には苦しい碁を打つこともありますが、そんな時も凄まじい追い込みで逆転してしまうのです。
集中力が常に研ぎ澄まされているのですね。

何故そんなことができるのか考えてみると、やはり世界戦の存在でしょうか。
何年も前から井山さんは日本の第一人者ですが、守りの姿勢に入ったことをほとんど見たことがありません。
世界チャンピオンを目指し、常に自分の限界に挑戦し続けてきたのでしょう。
その貪欲な向上心が、井山さんの強さを支えているのだと思います。

井山さんはまだまだ世界に挑戦する機会がありますし、希望もあると思います。
ぜひとも世界チャンピオンになるという悲願を達成して欲しいですね。

また、当然ながら井山さんにタイトルを独占されて悔しい思いをしている棋士は数多いです。
口には出さずとも、独占を崩すのは自分だと思っているでしょうね。
人は明確な目標があると努力しやすいものです。
今後は打倒井山で棋士の世界が盛り上がっていって欲しいですね。