白石勇一の囲碁日記

囲碁棋士白石勇一です。
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仲邑菫-井山裕太戦

2019年01月06日 22時42分27秒 | 囲碁界ニュース等
<本日の一言>
Youtubeの日本棋院囲碁チャンネルに、仲邑菫さんの記者会見映像が公開されています。
本当に可愛らしい小学4年生ですよね。
闘志は内に秘めるタイプでしょうか。
</本日の一言>

皆様こんばんは。
本日は井山裕太五冠と仲邑菫さんの記念対局が行われました。
手合割は定先です。
これがどのぐらいのハンデなのか、囲碁を知らない方向けに表現するのは難しいのですが・・・。
例えば、かつて頂点の棋士とその他の一流棋士のハンデが定先という時代がありました。
定先というのは、そのぐらい小さなハンデなのです。

対局の模様は日本棋院囲碁チャンネルや日本棋院ネット対局幽玄の間でご覧頂けます。
ここでは、私の印象に残った場面をご紹介しましょう。



1図(実戦)
白1、3は流行の手であり、これ自体がどうということはありません。
ただ、これが普通の指導碁なら、白Aとのんびり開いて打っているでしょう。
井山五冠の本気を感じました。





2図(実戦)
黒△までの進行も、驚くべきところはありません。
ただ一つ言えるのは、最近の子供は知識も非常に豊富だということです。
情報化の時代、碁の勉強法は随分変わりました。





3図(実戦)
白1~5は、お手並み拝見といった意味もあるでしょうか?
捌きは経験がものを言う部分が大きく、した手が翻弄されてしまうことも多いです。





4図(実戦)
しかし、菫さんの対応は完璧でしたね。
この折衝、むしろ黒がポイントを上げたのではないでしょうか?
互先でも黒が勝ちそうな流れになっています。





5図(実戦)
白1に対して、即座に黒4、6と攻撃したのも頷けますね。
周囲には黒石が多く、棋理に適っています。





6図(実戦)
白1に対して、黒2からのモタレで形を整え、黒8、10の反撃!
これまた隙の無い打ち回しです。
強すぎますね・・・。
たとえ19歳でも、これだけ打てたら立派なものでしょう。





7図(実戦)
ただ、そうは言っても相手は井山五冠です。
白×などを処分し、先手を取って白△の大場に先回りしてしまいました。
いかにも白が苦しそうに見えたのに、綺麗に捌くものです。





8図(実戦)
さらに、中央の要所である白△に回ると、もはや黒のリードは消えています。
井山五冠、流石の大局観ですね。
結局、本局は白勝勢で打ち掛けになりました。

井山五冠の打ち回しに敗れはしたものの、もはや菫さんの実力を疑う余地は無くなりました。
小学4年生で、ここまで強くなれるものなのですね・・・。