量子コンピューター「黎明」とスパコン「富岳」の連携がスタート、世界初のハイブリッド量子スーパーコンピューター
Gigazain より
アメリカ・コロラド州に本拠を構える量子コンピューター企業・Quantinuum(クオンティニュアム)と、スーパーコンピューター「 富岳」を擁する国立研究開発法人理化学研究所(理化学研究所)が2025年2月12日に、クオンティニュアムの量子コンピューター「黎明(れいめい)」の設置を完了したことを発表しました。
今後、黎明は富岳と連携して科学の課題に取り組んでいきます。
量子コンピュータ「黎明」が理化学研究所で本格稼働、量子ハイブリッド高性能コンピューティング新時代を切り拓く
~理化学研究所の世界最高水準の施設に設置された量子コンピュータ「黎明」は、物理、化学、その他の応用分野における量子コンピューティング技術の進歩をリード~ | Quantinuum – クオンティニュアム株式会社
https://quantinuum.co.jp/20250212-2/
量子コンピュータ「黎明」が理化学研究所で本格稼働、量子ハイブリッド高性能コンピューティング新時代を切り拓く | 理化学研究所
https://www.riken.jp/pr/news/2025/20250212_1/index.html
World's 1st hybrid quantum supercomputer goes online in Japan | Live Science
https://www.livescience.com/technology/computing/worlds-1st-hybrid-quantum-supercomputer-goes-online-in-japan
兵庫県神戸市の理化学研究所計算科学研究センターで稼働している「富岳」は、記事作成時点では世界6位の計算速度ですが、かつては世界的な性能ランキングを総なめしたこともあるスーパーコンピューターです。
日本のスーパーコンピューター「富岳」が4つの世界ランキングで1位を獲得 - GIGAZINE
そして、2025年2月12日に埼玉県の理化学研究所和光キャンパスに設置されたクオンティニュアムの黎明は、電磁場で荷電粒子(イオン)を保持することで、現行の量子コンピューターとしては最も高い精度での基本演算を行うことが可能な20量子ビットの イオントラップ型量子コンピューターです。
クオンティニュアムの社長兼CEOであるラジーブ・ハズラ氏は「今回のマシン設置完了は、私たちの量子技術がアメリカ国外で初めて運用が開始されることを意味し、
弊社の世界戦略においても極めて重要な一歩です。理化学研究所の卓越した研究者の皆様に弊社の開発したマシンをご利用いただくことにより、前例のない科学的ブレークスルーの達成に貢献できると信じています」とコメントしました。
製造が比較的容易な「超伝導量子ビット」で動作するほとんどの量子コンピューターとは異なり、黎明は電磁場でトラップしたイオンをレーザーで制御するイオントラップ方式を採用しています。
トラップされたイオンを量子ビットとして使うことにより、量子ビット間の接続を増やし、量子ビット同士の重ね合わせや量子もつれ状態が安定して続く時間である コヒーレンス時間が長くなるため、量子コンピューターはより安定した性能を発揮することができます。
クオンティニュアムの量子コンピューターが富岳の連携相手に選ばれたのは、量子ビットを物理的に移動させる「イオンシャトル」により、複雑なアルゴリズムを柔軟に実行させることが可能なのが理由だとのこと。
ノイズによる計算エラーが課題となる量子コンピューターでは、量子ビットの精度である「忠実度」を高めるエラー訂正技術が不可欠です。
そこで、クオンティニュアムはイオン量子ビットをグループ化して「論理量子ビット」とすることで、従来の物理量子ビットに比べてエラー率を800分の1に抑えることに成功しています。
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理化学研究所計算科学研究センターの佐藤三久氏は「黎明の低いエラー率と全結合性により、我々の量子ハイパフォーマンスコンピューティング(HPC)ハイブリッドプラットフォームの研究の可能性を大きく広げることができると考えています。
クオンティニュアムの量子コンピュータ『黎明』を富岳と連携させることで、科学研究の新境地を拓(ひら)くことができるものと期待しています」とコメントしました。