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 面白研究に下ネタ 科学の裾野を広げる「イグ・ノーベル賞」の奥深さ 202109

2021-09-28 13:36:56 | なるほど  ふぅ〜ん

 面白研究に下ネタ 科学の裾野を広げる「イグ・ノーベル賞」の奥深さ
  Newsweek より サイエンス・ナビゲーター  210928

 2017年に物理学賞を受賞したマーク・アントワン・ファルダン氏と名物の「照明係」(。授賞式まで全力で楽しむのが「イグ・ノーベル賞」流(2017年9月14日) 

<猫は固体であると同時に液体で、セックスは鼻づまりを解消する? ノーベル賞のパロディ版として30年前に始まり、多くの笑いと問いを提供してきた「イグ・ノーベル賞」の真価を、作家で科学ジャーナリストの茜灯里が解説する>

 バケツや金魚鉢などの容器に応じて変幻自在に姿を変える猫は「液体」である──そう言われたら、どう思いますか?
「そのとおりだ」と肯定する人も、「液体」は猫の身体の柔軟性の比喩であることは十分に承知しているでしょう。けれど、フランスの流動学者マーク・アントワン・ファルダン氏による「猫は固体と液体の両方になれるのか?」という論文は、2017年イグ・ノーベル物理学賞を受賞しました。

「イグ(ig)」は英語で否定を意味する接頭詞なので、イグ・ノーベル賞はいわば「裏ノーベル賞」です。この賞は、ノーベル賞のパロディ版として1991年に始まりました。毎年9月に、ノーベル賞の科学3分野(生理学・医学、物理学、化学)や、年ごとに変わる独自分野(心理学賞、科学教育賞など)で受賞者が選出されています。

 30年の歴史で、日本人の受賞は27回。今年も「歩きスマホが周囲の歩行者に与える影響」の実験で、京都工芸繊維大学助教の村上久氏らが運動力学賞を受賞しました。

⚫︎不名誉な賞なのか
 有名な賞のパロディ版というと、「米アカデミー賞」に対する「ゴールデン・ラズベリー賞(ラジー賞)」がよく知られています。ラジー賞は米アカデミー賞授賞式の前日に「最低の映画」を選んで表彰するものです。

 ならば、イグ・ノーベル賞は「最低の研究」に与えられる賞なのでしょうか。賞の創設者で科学ユーモア誌「Annals of Improbable Research」の編集者であるマーク・エイブラハムズ氏は、「最初は笑えるが、その後考えさせる科学研究に贈る賞」と説明します。

 実際、「なぜこの研究は笑えるのか」を考えると、身近な疑問を科学で解明する面白さや、疑似科学の危うさなどが浮き彫りになります。受賞者に名誉を与えるだけでなく、一般の人に楽しみながら「科学とは何か」を考えさせる、とても知的な賞なのです。

⚫︎受賞理由で笑って、真の研究目的に納得する
 イグ・ノーベル賞の日本人初受賞は、1992年に資生堂の研究員たちが獲得した医学賞です。受賞理由は「『足の悪臭の原因となる化学物質の解明』。特に『自分の足が臭いと思っている人の足は臭く、思っていない人の足は臭くない』という結論に対して」。
 足が臭い人は自覚しているという指摘に、クスッと笑う人は多いでしょう。
 ですが、この研究はデオドラント(臭いのケア)商品の開発のために、足が臭い人と臭くない人のグループに分けて靴下から化学物質を抽出して、足の悪臭の原因物質「イソ吉草酸」を世界で初めて解明した、という至極真っ当で意義深いリサーチです。

 2011年は、滋賀医科大学や医療ベンチャー企業が「火災などの緊急時に眠っている人を起こすのに適切な空気中のわさびの濃度を発見し、わさび警報装置を開発した」ことに、化学賞が与えられました。
 わさびで眠っている人を起こすと聞くと「TVのドッキリ企画で使うのか?」などと考えたくなりますが、「非常ベルが聞こえない聴覚障害者に危険を知らせるために考えた技術」と知れば「実用性の高い研究だ」と腑に落ちます。

 冒頭で紹介した「猫は液体」も、力が加えられた状態で材料がどのように流動し変形するかを研究する「流動学」の専門家が、従来の固体・液体の定義に疑問を投げかけたことが本質です。難しい数式ではなく「猫は液体」の言葉のインパクトで、一般の人々にも定義の問題点を分かりやすく説明したことが評価されたのです。

⚫︎疑似科学や下ネタに賞を与える意味を考える
 イグ・ノーベル賞は、疑似科学に風刺の効いたコメントとともに賞を与えたり、性的な現象や排泄物を扱った研究に面白おかしく理由をつけて受賞させたりすることもあります。そのため、「悪ふざけが過ぎて、まともな研究を不当に貶めるおそれがある」という批判は常にあります。

 イギリス政府の主席科学顧問であるロバート・メイ氏は1995年、「市民が科学研究に対して間違ったイメージを持ち、真剣な研究を笑いものにする恐れがある」と主張し、イグ・ノーベル賞の運営者に対して、今後、イギリス人研究者には賞を贈らないように要請しました。もっとも、この主張に対してイギリスの科学者の多くは反発しました。ある研究者は「どんな形であれ、自分の研究が評価され、世間に知られるきっかけを奪わないでほしい」と反論しました。

 1991年と98年に化学賞を受賞したジャック・バンヴェニスト氏は「水は知性を持つ液体で、現在、1分子も抗体が溶けていないほど希釈しても、かつてたくさん抗体が溶けていた記憶を残していて抗原抗体反応を起こす」「水は以前溶けていた物質の情報を電磁波として放出するので、インターネットを介して情報を送ることができる」と論文で主張したことが評価されました。

 科学の実験は、「再現性」が求められます。つまり、正しい主張であれば、同じ実験を誰がやっても基本的に同じ結果が得られるはずです。バンヴェニスト氏の主張は、イグ・ノーベル賞受賞前に多くの科学者によって「再現性がない」ことが示されていました。もちろん、賞の運営側もその事実は知っており、疑似科学を主張するバンヴェニスト氏と、論文掲載を許した科学誌に対する皮肉を込めて賞を与えました。

 もっとも、一般の人がこの受賞が面白いと分かるには、「科学リテラシー(科学を理解する基礎能力、科学情報の取捨選択能力)」が必要です。バンヴェニスト氏の受賞は、ニュースで知る私たちにも「科学とは何か」を考える機会を与えたのです。

 イグ・ノーベル賞には「下ネタ枠」があると信じられているほど、性や排泄にまつわる研究は頻繁に受賞します。

 昨年は「様々な国の国民所得の格差とキスの頻度との関係を定量化しようとしたこと」に経済賞が与えられ、「ヒトの凍った大便から製造したナイフは機能的ではないと証明したこと」に材料工学賞が与えられました。
 今年は「セックスでオルガズムに達した後は、薬を使ったときと同じくらいに鼻づまりが改善されることを解明した」研究が医学賞を受賞しました。

 イグ・ノーベル賞の 公式ホームページは、賞の目的を「奇妙なものを讃え、想像力の豊かさに敬意を表し、科学、医療、技術への関心を高めること」と説明しています。
 誰もが身近に感じる「下ネタ」がテーマになることで、私たちは科学により興味を持ち、科学は専門家だけのものではないことを実感します。さらに、奇妙な疑問を真剣に研究して成果を出す科学者は、私たちに敬意と親しみを感じさせます。

 本家のノーベル賞は「人類の発展に最も貢献した研究」に賞を与え、"裏"ノーベル賞であるイグ・ノーベル賞は「身近で奇妙な研究」に賞を与えます。けれど、「科学者の想像力の豊かさに敬意を表する」「一般の人の科学、医療、技術への関心を高める」ことは、本家のノーベル賞もイグ・ノーベル賞も同じなのです。

◇ ◇ ◇
 現在、日本では3年ぶりに「イグ・ノーベル賞の世界展」(11月3日まで、福岡市科学館)が開かれています。近くにお住まいで、本コラムでこの賞のことが気になった方は、足を運んでみてはいかがでしょうか。

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