海外の解釈は日本と違う…? 宮崎駿『千と千尋の神隠し』の海外レビューを紹介。日本アニメ史上に残る名作の世界的評価を考察
映画チャンネルより 231018
宮崎駿監督が製作した映画『千と千尋の神隠し』(2001)。
夢の中のような不思議で壮大な世界、華やかなキャラクターや建物が次々に登場し、多大な人気を獲得した名作。
今回は、大人気の映画『千と千尋の神隠し』が,海外では一体どのように捉えられているか,現地メディアを参考に紹介していく。
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●日本を代表するアニメ映画。海外はどう解釈しているのか?
宮崎駿監督。彼は日本国内だけではなく、海外でも多くの注目を集めている。そんな宮崎駿監督が製作した、映画『千と千尋の神隠し』。興行収入316億円を記録。
劇場で公開を迎えた1995年から20年という実に長い期間、国内興行収入1位に君臨。日本を代表する映画作品の一つとなった名作。
しかし、私たちの日本という国の中だけでなく、海外では、どのように捉えられているのか、非常に気になる部分もある。
しかし、私たちの日本という国の中だけでなく、海外では、どのように捉えられているのか、非常に気になる部分もある。
日本文化の一つであるアニメの中でも、最も有名な作品である本作は、日本そのものを表現した作品と言っても過言ではないからだ。
今回は、現地メディアより、映画『千と千尋の神隠し』のレビューやコメントをいくつか紹介し、海外ではどのように捉えられているのかを紹介。
今回は、現地メディアより、映画『千と千尋の神隠し』のレビューやコメントをいくつか紹介し、海外ではどのように捉えられているのかを紹介。
まずは、海外の映画サイトでのコメントやレビューを見てみよう。
●「英The Guardian」
日本のアニメーター、宮崎駿の魅惑的な長編作品。視聴すると空気よりも軽い気持ちになる。優しく個性的で、抜け目のないキャラクターたちと一緒に、私たちをロケット噴射のように空想の旅へと連れていく。
そんな本作からは、西洋の影響や類似点がたくさんあるのを感じる。
●「英The Guardian」
日本のアニメーター、宮崎駿の魅惑的な長編作品。視聴すると空気よりも軽い気持ちになる。優しく個性的で、抜け目のないキャラクターたちと一緒に、私たちをロケット噴射のように空想の旅へと連れていく。
そんな本作からは、西洋の影響や類似点がたくさんあるのを感じる。
例えば、古代ギリシアの詩人ホメロスの『オデッセイ』。『不思議の国のアリス』のルイス・キャロル。『オズの魔法使い』のL・フランク・ボーム。フランシス・ホジソン・バーネットの『秘密の花園』などだ。
それでも本作が独自のジャンルを確立していることは間違いがない。その異質かつエキゾチックな特質は、“日本人”だけではなく海外の視聴者にとってより強烈なものだ。
そしてその全てが手描き。巧みな小ネタギャグや、個性的なキャラクターへのクローズアップ。情熱的で息を呑むパノラマ風景へと切り替わるその軽やかさ。
それでも本作が独自のジャンルを確立していることは間違いがない。その異質かつエキゾチックな特質は、“日本人”だけではなく海外の視聴者にとってより強烈なものだ。
そしてその全てが手描き。巧みな小ネタギャグや、個性的なキャラクターへのクローズアップ。情熱的で息を呑むパノラマ風景へと切り替わるその軽やかさ。
その高い能力をこれほど軽く、無造作に行う映画作品は他にない。夕暮れの水面、霧の中の日の出、月明かりや太陽の光など、視聴者を歓喜の渦に巻き込む。
英語の吹き替え版を視聴することは、コルクの無い、スクリューキャップワインのような、簡易的な体験となる。それはこの映画の楽しみを損なう愚かな行為としか思えない。『千と千尋の神隠し』は、展開がスピーディーで面白く、奇妙で素晴らしい。
⚫︎「間」を活用した宮崎駿マジック
「英The film magazine」
宮崎監督の映画には脚本などほぼない。ストーリー内容は、ほぼ全て絵コンテのプロセスで描かれていく。その工程で仕上がるアニメは、毛穴の無い人間の心臓へと轟く生の感情を孕み、子供から大人まで一変に別世界へと連れさらう。
作品の強烈なリアリズムと没入感は、宮崎監督の全ての作品にも見受けられる静寂の瞬間の「間」という概念を用いていることにも起因する。
英語の吹き替え版を視聴することは、コルクの無い、スクリューキャップワインのような、簡易的な体験となる。それはこの映画の楽しみを損なう愚かな行為としか思えない。『千と千尋の神隠し』は、展開がスピーディーで面白く、奇妙で素晴らしい。
⚫︎「間」を活用した宮崎駿マジック
「英The film magazine」
宮崎監督の映画には脚本などほぼない。ストーリー内容は、ほぼ全て絵コンテのプロセスで描かれていく。その工程で仕上がるアニメは、毛穴の無い人間の心臓へと轟く生の感情を孕み、子供から大人まで一変に別世界へと連れさらう。
作品の強烈なリアリズムと没入感は、宮崎監督の全ての作品にも見受けられる静寂の瞬間の「間」という概念を用いていることにも起因する。
映画評論家であるロジャー・エバートとのインタビューでは「一瞬の隙間さえあれば、映画の中で高まる緊張感はより広い次元へと成長することができる。常に80度のテンションを保っているだけでは、ただ麻痺してしまうだけだ」と宮崎駿は語っていた。
私たちは皆、この場所で見知らぬ者同士。それは主人公である千(せん)も同じ。だからこそ彼女の見ているものを見て、感じているものを感じることができる。千尋がハクから貰ったおにぎりを食べる時、彼女の疲労、恐怖、悲しみが涙として溢れた時、その理由の全てが視聴者に伝わっていく。喉に入っていくおにぎりが、痛々しく感じる。
そんな映画マジックに満ちた瞬間が他にあっただろうか?宮崎駿監督の少女の自立を描いた本作の静かな物語は、今なお多くの人に強く必要とされており、欧米のヒーロー達が続々と登場する巨人アニメにも負けていない。
●日本が世界に誇る唯一無二の作品
上記の2つのレビューを見る限り、映画『千と千尋の神隠し』は、海外でも絶賛されることが伝わる。
私たちは皆、この場所で見知らぬ者同士。それは主人公である千(せん)も同じ。だからこそ彼女の見ているものを見て、感じているものを感じることができる。千尋がハクから貰ったおにぎりを食べる時、彼女の疲労、恐怖、悲しみが涙として溢れた時、その理由の全てが視聴者に伝わっていく。喉に入っていくおにぎりが、痛々しく感じる。
そんな映画マジックに満ちた瞬間が他にあっただろうか?宮崎駿監督の少女の自立を描いた本作の静かな物語は、今なお多くの人に強く必要とされており、欧米のヒーロー達が続々と登場する巨人アニメにも負けていない。
●日本が世界に誇る唯一無二の作品
上記の2つのレビューを見る限り、映画『千と千尋の神隠し』は、海外でも絶賛されることが伝わる。
本作が国内で商業的に成功を収めた後、国際的な映画批評家からの賞賛の声が集まった。
2002年、ドイツで開催されたベルリン国際映画祭。
2002年、ドイツで開催されたベルリン国際映画祭。
ここで映画『千と千尋の神隠し』は、最優秀作品賞である金熊賞を共同受賞する。
長編アニメーションとして本作は、同映画祭史上最高賞を受賞した初めての作品となったのだ。
そしてその翌年の2003年。映画『千と千尋の神隠し』は第75回アカデミー賞で長編アニメーション賞を受賞。
そしてその翌年の2003年。映画『千と千尋の神隠し』は第75回アカデミー賞で長編アニメーション賞を受賞。
英語以外の映画作品でこの賞を受賞したのは初となり、そして今日に至るまで唯一の映画となった。それだけでなく、本作は、この栄誉を受賞した唯一の“手描きアニメーション映画”でもあるのだ。
2020年には、映画『千と千尋の神隠し』は、米国の配信サービスである「HBO Max」と、数十か国内での「Netflix」のカタログにも加わり、さらに世界中の人々が視聴することのできる映画作品へとなった。
●「宮崎駿は卓越した天才」来年にはロンドンで舞台上演決定
それだけには留まらず、世界的ヒットを記録したミュージカル『レ・ミゼラブル』の演出を行なった、名演出家ジョン・ケアードが『千と千尋の神隠し』の舞台化を監督。
2020年には、映画『千と千尋の神隠し』は、米国の配信サービスである「HBO Max」と、数十か国内での「Netflix」のカタログにも加わり、さらに世界中の人々が視聴することのできる映画作品へとなった。
●「宮崎駿は卓越した天才」来年にはロンドンで舞台上演決定
それだけには留まらず、世界的ヒットを記録したミュージカル『レ・ミゼラブル』の演出を行なった、名演出家ジョン・ケアードが『千と千尋の神隠し』の舞台化を監督。
この舞台は日本全国ツアーが行われ、2024年4月〜7月には、イギリスのロンドン・コロシアムにて上演される。
演出家ジョン・ケアードは「『千と千尋の神隠し』史上初の舞台化に携わることができて、とても興奮し光栄に感じている」と述べ、続けて「私は長年、宮崎駿を世界映画史上の卓越した天才の一人であり、アニメという形式の史上最大の提唱者であると考えてきました」と発言。
また海外には、日本の映画作品に関して多くのことが書かれている本も出版されている。
演出家ジョン・ケアードは「『千と千尋の神隠し』史上初の舞台化に携わることができて、とても興奮し光栄に感じている」と述べ、続けて「私は長年、宮崎駿を世界映画史上の卓越した天才の一人であり、アニメという形式の史上最大の提唱者であると考えてきました」と発言。
また海外には、日本の映画作品に関して多くのことが書かれている本も出版されている。
その一つが、『Japanese Cinema:Texts and Context(原題)』だ。翻訳すると『日本映画:テクストとコンテクスト』。
その中身は、小津安二郎監督の映画『晩春』、黒澤明監督の映画『七人の侍』、本多猪四郎監督の映画『ゴジラ』、北野武監督の映画『HANA-BI』、中田秀夫監督の映画『リング』まで、様々な日本映画を研究し、日本の監督達について語るといった内容だ。
この本の中の「The Global Markets for Anime:Miyazaki Hayao’s Spirited Away(アニメ世界市場:宮崎駿の『千と千尋の神隠し』)という章を執筆した、レイナ・デニソン博士(イースト・アングリア大学)という人物がいる。
彼は「1989年に公開された『魔女の宅急便』以来、スタジオジブリ作品は日本の興行収入を伸ばしてきた。
この本の中の「The Global Markets for Anime:Miyazaki Hayao’s Spirited Away(アニメ世界市場:宮崎駿の『千と千尋の神隠し』)という章を執筆した、レイナ・デニソン博士(イースト・アングリア大学)という人物がいる。
彼は「1989年に公開された『魔女の宅急便』以来、スタジオジブリ作品は日本の興行収入を伸ばしてきた。
しかし『千と千尋の神隠し』は、スピルバーグの『E.T.』や『ジュラシック・パーク』のような映画の記録を凌ぐ大ヒットを記録した」、「日本発の映画が、ハリウッドの大作映画と肩を並べることができることを証明したのです」と話している。
また、誰もが一度は耳にしたことのあるアニメーション映画である『トイ・ストーリー』や、映画『カーズ』、映画『バグズ・ライフ』などの監督を務めたピクサーのジョン・ラセター監督。
また、誰もが一度は耳にしたことのあるアニメーション映画である『トイ・ストーリー』や、映画『カーズ』、映画『バグズ・ライフ』などの監督を務めたピクサーのジョン・ラセター監督。
彼も、長年、宮崎駿監督が製作する作品を賞賛しているのだ。実は映画『トイ・ストーリー3』では、映画『となりのトトロ』のキャラクターであるトトロがぬいぐるみとしてカメオ出演している。
●引退に惜しまれる声。アニメの概念を変えたジブリ作品
ここまで評価されているのを知ると、同じ日本人として、宮崎駿監督には、映画『君たちはどう生きるか』(2023)で引退してほしくはない、
●引退に惜しまれる声。アニメの概念を変えたジブリ作品
ここまで評価されているのを知ると、同じ日本人として、宮崎駿監督には、映画『君たちはどう生きるか』(2023)で引退してほしくはない、
世界にその人間の醜い皮肉に関する考えや、その正反対の自然の美しさを表現し続けてほしいと思うのは筆者だけではないはず。
映画『千と千尋の神隠し』は、このように、日本の映画、アニメファンのみならず、多くの海外の映画ファンの好評も長い間獲得し続けている、世界的に影響力の大きな作品。
映画『千と千尋の神隠し』は、このように、日本の映画、アニメファンのみならず、多くの海外の映画ファンの好評も長い間獲得し続けている、世界的に影響力の大きな作品。
そして、アニメという存在を子供だけが視聴する、子供じみた作品から、世界の人々の心に響く“芸術作品”という認識に変えた作品でもあるのだ。