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なぜ日本のマンガは、次々に「メガヒット」するのか  202410

2024-10-14 00:33:00 | なるほど  ふぅ〜ん

なぜ日本のマンガは、次々に「メガヒット」するのか
  ITmediaビジネス Online より菊池健


 この記事は『漫画ビジネス』(著・菊池健/クロスメディア・パブリッシング)に掲載された内容に、編集を加えて転載したものです。


⚫︎ 「裾野広ければ頂(いただき)高し」
 実は、この言葉は、名作『あしたのジョー』を世に送り、現在は日本漫画家協会会長のちばてつやさんが、ことあるごとに使っていた言葉なのです。首相や政府へのロビー活動の際にも使っていたのだとか。
 漫画家がたくさんいて、あらゆる種類の作品が生み出される環境が発展するほど、面白い作品ができて業界が発展するという意味です。これは、当たり前のことのように聞こえますが、日本のマンガが発展してきた真理なのだと私は考えます。

 2024年現在、日本に何人のプロ漫画家がいて、年間何作品が生まれているか、正確な数字は算出できないのですが、参考となる情報として、2010年頃、書店で漫画単行本を発刊する漫画家は約6000人、単行本のアイテム数は1万2000冊強あったようです。
 プロとして生計を立てている人だけでなく、漫画家志望者の人数も加えると、その裾野はさらに広いことが分かります。例えば、大学で漫画を教えているところが28校、専門学校が68校を超えており、合わせて推計で5000人超の漫画家志望の学生がいます。

 また、日本最大規模の同人誌即売会であるコミックマーケットが、コロナ禍前で最大規模を誇っていた頃には、1回の開催での参加サークル数が3.5万、申し込みベースだと5.1万という巨大な開催だったこともありました。

 しかも、漫画家や作品の数は、この数字が発表された2010年以降、さらに拡大の一途をたどっています。要因としては、主に3つが考えられます。

⚫︎拡大の要因
 1つ目は、スマホの普及により、電子書籍プラットフォームやマンガアプリから生まれた漫画の数が大きく増えていること。

 2つ目は、出版社などを介さない、個人による漫画販売が増えたこと。これは、コミックマーケットのような同人誌即売会で同人誌を発売するクリエイターや、Kindleインディーズマンガをはじめとしたデジタルプラットフォーム上で発信するクリエイターも当てはまります。

 3つ目は、いわゆるWebtoon(ウェブトゥーン)と呼ばれる縦読みのマンガを制作する、ウェブトゥーンスタジオの設立ブームが起こったこと。2年ほどの間に、70~80ほどのウェブトゥーン制作スタジオができたことが公表されました。また、それ以上の数の編集プロダクションや個人が、無数に新しいジャンルのウェブトゥーンに進出しました。

 紙で印刷して店頭に並ぶアイテム数だけで、年間で約1万5000ほどです(※1)。デジタル作品はこうした一元管理がなされておらず、年間の作品数で見ても、1万5000~2万ほど生み出されているのではないかという肌感です。

 これは、日本で映画が年間で676作品(※2)、近年の日本のテレビアニメ制作本数が300前後で推移している(※3)ことと比べると、かなり多いことが分かります。
 さらに、海外と比較してみても、年間で生まれる作品数は、米国のアメコミの新刊点数は不明ですが市場規模で半分ほど、韓国ではウェブトゥーンが2617作品(※4)ですので、日本のマンガの数は突出しているようです。

 漫画業界では、ヒット作品が生まれる確率は「千三つ」と言い、1000作に3作ほどの割合でヒット作品が生まれると言われています。つまり、ヒット作品をつくる唯一無二の方法はたくさんの作品をつくるということになります。

 生み出される作品が多いほど、ごくわずかな確率で生まれるとんでもないヒット作品が出て来る可能性が上がるのです。ごくわずかな作品を制作し、狙いすましてヒット作品をつくろうにも、なかなかそうしたことは起きません。

⚫︎週刊漫画誌という発明
 では、なぜ日本でここまでたくさんのマンガを生み出すことができたのか? 
それは、漫画雑誌、とりわけ週刊漫画雑誌という存在が大きく寄与しています。

 現在の漫画雑誌は、今から60年以上前の1959年に小学館の週刊少年サンデー、講談社の週刊少年マガジンが、同時に創刊したところから形づくられました。のちに集英社の週刊少年ジャンプ、秋田書店の週刊少年チャンピオンなども創刊し、それがマンガ発展の基礎となる、多数かつ多様な作品を産む土壌となり、ヒット作品を産み出す基盤になっています。

 これより前、貸本や漫画少年などその原型になるものはありましたが、今回は今のヒット漫画にフォーカスするため、あえて週刊漫画誌あたりから話をスタートします。

 週刊漫画雑誌というのは、世界に類のないユニークなものでした。

 紙のマンガの時代、先行していた米国のマンガであるアメコミの世界でも日本の「連載」の概念に近いかたちで、1話1話を20~32ページの冊子で販売する「リーフ」という形態をとっていました。また、週刊ペースに近い形態で発刊することもありますが、その場合は奇数話と偶数話で制作チームが違うなどといった、並列制作が可能な制作スタジオ形式を取るなど、1作に1漫画家と1編集者という日本のスタイルとは少し違うかたちとなっています。

 フランスのマンガ「バンドデシネ」にいたっては、芸術性を評価されるお国柄があるからか、1作家が1年間かけて単行本(日本で言うと新書1冊というようなページのボリュームのもの)1冊を作って発表するというようなかたちが多いようです(ヒット作家さんのインタビューによると、ネームや下書きを描かないなど、日本と違う所も多いようです)。

⚫︎週刊漫画誌の特徴
 日本の週刊漫画誌は、1誌当たりおよそ20作品が掲載され、1話20ページ前後のマンガを原則1カ月に4~5本、漫画家1人当たり年間で40~50本ほど掲載します。
 2024年現在の今でこそ、週刊連載は適宜1カ月に1週休載を入れるなどして、作家の体調を維持するようになりましたが、70年ほどの漫画雑誌の歴史のうち、ほとんどの期間は、毎週休まず漫画家が描き続けることが当然となっていました。

 先述の通り、アメコミなども早いペースの連載はありますが、1人の作家と1人の編集者が、読者が読んで満足するボリュームの作品を週に1度描いて出し続けるというのは、世界に類を見ないとんでもないハイペースでの作品の量産となり、これが日本マンガの豊かな裾野となっています。

 現在も出版され続けている複数の週刊少年漫画誌のほかに、ヤングジャンプ、ヤングマガジン、ビッグコミックスピリッツといった、少し上の世代を狙った青年向けの週刊漫画誌や、多数の月刊誌、隔週刊誌などが生まれ、漫画雑誌はピーク時で200を優に超える数となりました。

 一つひとつの媒体の発行ペースも早いですが、前出の「アメコミ」や「バンドデシネ」に比べると、そのレーベル数もはるかに凌駕します。よって、諸外国に比べるとはるかに膨大な作品を生み出し続けてきたこととなりました。

 そして、漫画雑誌はさまざまな読み手の属性を持っています。

 大きい括りとして、少年誌、青年誌、少女誌、女性誌、児童誌や成人向けの年齢層別、ファンタジーや歴史ものなどカテゴリーに特化するもの、BL(※5)やTL(※6)などのジャンルに特化するものなど、その中で多様な作品を育んできました。この膨大なジャンルの数も前出の「裾野」を構成する大事な要素です。

 これらの膨大かつ多様な媒体は、作品の多様性を生みました。

 この多数の編集部が子ども向けから大人向け、趣味嗜好性癖を広くカバーする豊穣なる多産の仕組みとなり、裾野を広める起点となっています。


▶︎著者プロフィール:菊池健(きくち・たけし)
一般社団法人MANGA総合研究所所長/マスケット合同会社代表
 1973年東京生まれ。日本大学理工学部機械工学科卒。商社、コンサルティング会社、板前、ITベンチャー等を経て、2010年からNPO法人が運営する「トキワ荘プロジェクト」ディレクター。東京と京都で400人以上の新人漫画家にシェアハウス提供、100人以上の商業誌デビューをサポートし、事業10周年時に勇退した。同時に、京都国際マンガ・アニメフェア初年度事務局、京まふ出張編集部やWebサイト「マンナビ」など立ち上げた。その後、マンガ新聞編集長、とらのあな経営企画、SmartNewsマンガチャンネル、コミチ営業企画、数年に渡り『このマンガがすごい!』(宝島社)の選者を務める。クリエイター支援やデジタルコミックの事業での事業立ち上げ、営業、企画、イベント、編集、ライティング等を得意とする。noteにて毎週日曜日に「マンガ業界Newsまとめ」を発信。共著『電子書籍ビジネス調査報告書2023』(インプレス総合研究所)のウェブトーンパートを担当した。2024年3月に、一般社団法人MANGA総合研究所を設立。

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