ジム・ロジャーズ「今から『日本終了』に備えよ」
東洋経済オンライン より 220825 花輪 陽子:ファイナンシャルプランナー
先進国の政府や中央銀行は必死になって危機を封じ込めようとしている。これからうまく行ったように見える瞬間があるかもしれない。だがロジャーズ氏は「最悪の結末が待っている」と言う
シンガポール在住、ファイナンシャル・プランナーの花輪陽子です。引き続き、『世界大異変 現実を直視し、どう行動するか』から日本人のための資産防衛術をお伝えします。
⚫︎2040年の出生数は70万人、70歳を迎える人は200万人
ジム・ロジャーズ氏は「このままでは20年後の『日本終了』が現実になる」と警告しますが、それはどういうことなのでしょうか。
「人口推計はあらゆる将来予測の中で、もっとも精度が高い予測と言われる。日本の国立社会保障・人口問題研究所の推計によると、2021年に生まれた日本の子供の数(出生数)は、約81万1000人で、前年より3万人減少している。2040年には出生数は70万人前後にまで落ち込む見通しだ」
「その一方で、2040年に70歳になる1970年生まれの人は約200万人もいる。その頃には、70歳は高齢者に区別されていないかもしれないが、このまま現行の社会保障制度が維持できるとは思えない。これは私の意見や感想ではなく、数字が示す事実なのだ」
現在、日本の公的医療保険制度は世界一充実しているとも言われています。アメリカやシンガポールなどは医療費が高額なことで知られていますが、例えば、少し前にシンガポールで難病になった外国人ヘルパーの医療費の請求が18万シンガポールドル(約1800万円)にもなったというニュースを見かけるほどなのです。
どうしてここまで違うのでしょうか。日本では外国人労働者も条件を満たせば日本人と同様に社会保険に加入をすることができます。しかし、シンガポールでは外国人労働者は自分で民間医療保険を購入して高額な医療費に備える必要があるのです。
日本のような高額療養費制度もありません。そのため、総額の医療費が数千万円に及ぶ場合もあります。一方で、国民に対しては助成があるために公立病院の医療費負担は緩和されています。
しかし、利用する側からすると素晴らしい日本の医療制度ですが、国民医療費は財政を圧迫しています。
令和元年(2019年)度の国民医療費は44兆3895億円(保険診療の対象とならない費用や、正常な妊娠・分娩、健康診断、予防接種など、傷病の治療以外の費用は含まない)と、前年度に比べ9946億円、2.3%の増加となりました。
医療費は毎年約1兆円ずつ増え続けており、このままだと2040年には67兆円になるとの予測もあるほどです。今のところ、財源別の国民医療費は公費負担が約4割、保険料からが約5割、患者負担が約1割ですが、国が医療費負担をまかないきれなくなれば将来的にシンガポールのように患者負担が増えるリスクもあります。
ロジャーズ氏は「月まで届きそうなほどの債務額」の増大、世界一のスピードで進む少子高齢化、保護主義(移民を受け入れない、存在価値が薄れた「ゾンビ企業」を延命させる、規制緩和をしない)等が20年後に日本を滅ぼすと言います。
また、深刻な危機の影響を一番受けるのは中流階級です。「仕事もお金も失い、子供の教育機会も失ってしまうリスクが高い」と指摘します。日本人の多くは人生で繁栄と平和しか経験をしていませんが、10年後にはその状況が変わり、20~30年後には日本終了のリスクが高まるだろうと言うのです。
「円建ての年金」は将来大幅に目減りする危険がある
さらに、ロジャーズ氏はもし額面通り年金がもらえたとしても、インフレと円安で実質的な価値が大きく目減りするリスクがあると警告をします。
現在、夫婦でもらえる標準的な年金額は月22万円程度ですが、アメリカでは標準的なサイズのカップ麺が約600円、スイスでビックマックセットを注文すると約1700円という記事が話題になっています。
しかし、利用する側からすると素晴らしい日本の医療制度ですが、国民医療費は財政を圧迫しています。
令和元年(2019年)度の国民医療費は44兆3895億円(保険診療の対象とならない費用や、正常な妊娠・分娩、健康診断、予防接種など、傷病の治療以外の費用は含まない)と、前年度に比べ9946億円、2.3%の増加となりました。
医療費は毎年約1兆円ずつ増え続けており、このままだと2040年には67兆円になるとの予測もあるほどです。今のところ、財源別の国民医療費は公費負担が約4割、保険料からが約5割、患者負担が約1割ですが、国が医療費負担をまかないきれなくなれば将来的にシンガポールのように患者負担が増えるリスクもあります。
ロジャーズ氏は「月まで届きそうなほどの債務額」の増大、世界一のスピードで進む少子高齢化、保護主義(移民を受け入れない、存在価値が薄れた「ゾンビ企業」を延命させる、規制緩和をしない)等が20年後に日本を滅ぼすと言います。
また、深刻な危機の影響を一番受けるのは中流階級です。「仕事もお金も失い、子供の教育機会も失ってしまうリスクが高い」と指摘します。日本人の多くは人生で繁栄と平和しか経験をしていませんが、10年後にはその状況が変わり、20~30年後には日本終了のリスクが高まるだろうと言うのです。
「円建ての年金」は将来大幅に目減りする危険がある
さらに、ロジャーズ氏はもし額面通り年金がもらえたとしても、インフレと円安で実質的な価値が大きく目減りするリスクがあると警告をします。
現在、夫婦でもらえる標準的な年金額は月22万円程度ですが、アメリカでは標準的なサイズのカップ麺が約600円、スイスでビックマックセットを注文すると約1700円という記事が話題になっています。
日本だけ物価が少し抑えられていたとしても、外に出れば円の価値の目減りを痛感することになるのです。日本でほそぼそと生活をすることはできるかもしれませんが、海外旅行に行くことが以前と比べて難しくなるでしょう。
「歴史上、財政赤字で窮地に陥った国はたくさんあるが、いずれもきちんと返済できた例はない。ブルボン朝時代のフランス、20世紀の2度における大戦間期のドイツ、戦後の日本、最近では財政破綻した旧ソ連がそうだ。
「歴史上、財政赤字で窮地に陥った国はたくさんあるが、いずれもきちんと返済できた例はない。ブルボン朝時代のフランス、20世紀の2度における大戦間期のドイツ、戦後の日本、最近では財政破綻した旧ソ連がそうだ。
みな猛烈なインフレに襲われ、国民の資産価値は大きく失われることになった」
インフレの怖さを気にし始める頃には手遅れになるリスクもあると言います。そのために早期から「プランBへの準備が必須だ」と言います。
⚫︎必ずやって来る日本の危機に備えた「プランB」とは?
私は、シンガポールで仕事や学校関係でアメリカ人と関わる機会も多く、アメリカに住んでいる友達も多いのですが、彼らと話していると、どんな小さなことでも、当初の計画がうまくいかない場合に備え「プランB」(次の手、代替案)を持っていることに気づかされます。たまに準備をしておらず、動揺している人も見かけますが、その際もすぐに「プランB」を考え、実行しています。
例えば、新型コロナウイルスが流行りだした2020年のはじめでも、学校では対面授業が難しくなったと見るや、いつのまにか「次の日からオンライン授業を始めます」という通知が来るなど、とにかく決断と行動が早いのです。
ロジャーズ氏は日本人に対してもプランBを準備しておくようにと強く言います。大きな危機が目の前に迫ってきた場合、すぐに手を打たなければ手遅れになるからです。今後の日本には、財政などマクロ的な危機のほかにも、地震などの自然災害、さらには台湾有事など地政学リスクの高まりなどが予想されるからです。
「大恐慌のような未曾有の危機に見舞われた場合に備えて、
インフレの怖さを気にし始める頃には手遅れになるリスクもあると言います。そのために早期から「プランBへの準備が必須だ」と言います。
⚫︎必ずやって来る日本の危機に備えた「プランB」とは?
私は、シンガポールで仕事や学校関係でアメリカ人と関わる機会も多く、アメリカに住んでいる友達も多いのですが、彼らと話していると、どんな小さなことでも、当初の計画がうまくいかない場合に備え「プランB」(次の手、代替案)を持っていることに気づかされます。たまに準備をしておらず、動揺している人も見かけますが、その際もすぐに「プランB」を考え、実行しています。
例えば、新型コロナウイルスが流行りだした2020年のはじめでも、学校では対面授業が難しくなったと見るや、いつのまにか「次の日からオンライン授業を始めます」という通知が来るなど、とにかく決断と行動が早いのです。
ロジャーズ氏は日本人に対してもプランBを準備しておくようにと強く言います。大きな危機が目の前に迫ってきた場合、すぐに手を打たなければ手遅れになるからです。今後の日本には、財政などマクロ的な危機のほかにも、地震などの自然災害、さらには台湾有事など地政学リスクの高まりなどが予想されるからです。
「大恐慌のような未曾有の危機に見舞われた場合に備えて、
第1に、海外に一部資産をおいておくこと、
第2に、流動資産を常に持っておくことが必要だ。そして、
第3に、自分自身で考え、他人が推奨している銘柄をむやみに買わないことも重要になる。 さらに、もう1つ、プランBの一環として、子供に他国の言語を習わせることも、次の人生を広げてくれることになるだろう」
ロジャーズ氏が言うとおり、有事の際に備えて、手元の最低限の現金や、すぐにATMから引き出せる普通預金など、一定のお金は換金のしやすい形で置いておくべきでしょう。また、株式や債券などの流動資産も、数営業日で現金に変えることが可能です。
ロジャーズ氏が言うとおり、有事の際に備えて、手元の最低限の現金や、すぐにATMから引き出せる普通預金など、一定のお金は換金のしやすい形で置いておくべきでしょう。また、株式や債券などの流動資産も、数営業日で現金に変えることが可能です。
そして、もし、近隣諸国で有事が起きた場合でも、そこから離れた海外に口座や拠点があると、やはり安心感があるでしょう。それは保険のようなものです。
「もし明日、大恐慌が来て、そのときに元手の何倍も取引ができるレバレッジ取引をたくさんしていたり、流動性のない資産ばかり持っていたら、全資産を失う可能性がある。しかし、流動資産があれば大恐慌を生き残ることができる」
ロジャーズ氏は、経済危機について、賢い企業経営者なら、悪い膿を出し切らせ、復活するきっかけになる可能性があると言います。また一部の人にとっては大もうけするチャンスでもあります。そのため、危機やクラッシュは必ずしもわるいことだけではないとよく口にします。
「『危機』は、その文字の通り、危険の後にはチャンスが来るということでもある。一定の流動資産があれば、その機会を手に入れる原資にもなるはずだ」
プランBをしっかり準備をして、災い転じて福となすことができるようにしたいところですね。
(当記事は「会社四季報オンライン」にも掲載しています)
「もし明日、大恐慌が来て、そのときに元手の何倍も取引ができるレバレッジ取引をたくさんしていたり、流動性のない資産ばかり持っていたら、全資産を失う可能性がある。しかし、流動資産があれば大恐慌を生き残ることができる」
ロジャーズ氏は、経済危機について、賢い企業経営者なら、悪い膿を出し切らせ、復活するきっかけになる可能性があると言います。また一部の人にとっては大もうけするチャンスでもあります。そのため、危機やクラッシュは必ずしもわるいことだけではないとよく口にします。
「『危機』は、その文字の通り、危険の後にはチャンスが来るということでもある。一定の流動資産があれば、その機会を手に入れる原資にもなるはずだ」
プランBをしっかり準備をして、災い転じて福となすことができるようにしたいところですね。
(当記事は「会社四季報オンライン」にも掲載しています)