量子コンピューター超えの計算能力…東京理科大が開発した「LSIシステム」がスゴイ
ニュースイッチ by 日刊工業新聞 231127
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東京理科大学の河原尊之教授らの研究チームは、回路線幅22ナノメートル(ナノは10億分の1)の相補型金属酸化膜半導体(CMOS)を使い、現在の量子コンピューターを超える計算能力を持つ大規模集積回路(LSI)システムを開発した。
創薬や材料開発などに生かせる「組み合わせ最適化問題」を低消費電力かつ高速に解く。複数のチップを並列動作させることで機能を拡張し、大型の設備が必要なクラウドサービスを使わずに大規模な計算を可能にする。
河原教授らが開発したのは、複数のLSIチップをつないで機能を拡張できるスケーラブルな全結合型の「イジングLSIシステム」。
河原教授らが開発したのは、複数のLSIチップをつないで機能を拡張できるスケーラブルな全結合型の「イジングLSIシステム」。
これまで1チップ内に収まっていた演算機能を、複数の汎用CMOSに分けて接続することで拡張可能なことを実機で実証した。
22ナノCMOSで作製した演算LSIチップ36個と制御用FPGA(演算回路が自由に書き換えられる半導体)1個を搭載。
22ナノCMOSで作製した演算LSIチップ36個と制御用FPGA(演算回路が自由に書き換えられる半導体)1個を搭載。
現状のゲート方式の量子コンピューターを上回るビット数が4096個の大規模システムを試作した。
チップ数を約半減できる新たな実装方式を採用して集積度を高めた。組み合わせ最適化問題の一つである4096頂点の「頂点被覆問題」が解けることを確認している。
2030年ごろまでにビット数を2メガ(メガは100万)個程度まで増やし、50年ごろに実現するとされる同方式量子コンピューターと同等以上の計算能力を目指す。
量子コンピューターは組み合わせ最適化問題を解くのが得意だが、超電導方式では極低温に冷やすために大規模な装置が必要。
2030年ごろまでにビット数を2メガ(メガは100万)個程度まで増やし、50年ごろに実現するとされる同方式量子コンピューターと同等以上の計算能力を目指す。
量子コンピューターは組み合わせ最適化問題を解くのが得意だが、超電導方式では極低温に冷やすために大規模な装置が必要。
これに対し、既存のシリコン半導体によるLSIで同様の計算が可能になれば、創薬や材料開発、物流や金融、マーケティングなど幅広い領域において、現場で手軽に使えるなど応用の可能性が広がる。