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【イグ•ノーベル賞の日本人連続受賞は続くのか?】流行の分野に流れる研究開発費,目先の利益だけでは土台が崩れる 2024/11

2024-11-30 02:31:14 | 気になる モノ・コト

【イグ・ノーベル賞の日本人連続受賞は続くのか?】流行の分野に流れる研究開発費、目先の利益だけでは土台が崩れる
 Wedge より 241130 野口千里


 「3、2、1、GO!」その掛け声とともに、集まった人々が大量の紙飛行機を飛ばす──。「人々を笑わせ,そして考えさせる」業績をたたえる,イグ・ノーベル賞の授賞式の一場面だ。
 1991年から始まった同賞は、ノーベル賞を模した〝パロディー〟の賞で、日本人の受賞は今年で18年連続だ。


2015年のイグ・ノーベル賞受賞式。米国の科学雑誌『IMPROBABLE RESEARCH』の編集長のマーク・エイブラハムズ氏(写真中央)がイグ・ノーベル賞の主宰者だ(UPI/AFLO)

 「最初にイグ・ノーベル賞に選ばれたときは、喜ばしいことなのかもわからず、賞を受け取るかどうか悩んだ」。そう語るのは、2008年、10年にイグ・ノーベル賞を受賞した北海道大学電子科学研究所の中垣俊之氏。
 中垣氏は、単細胞生物から人間の行動を捉え直す「動物行動学」の研究を行っている。
00年、単細胞生物である粘菌が複数のエサ場をつなぐときに、①短い距離で、②外部の刺激にも耐えられ、③お互いに連絡がしやすい連絡効率の3つをバランス良く満たすことを発見した。
 中垣氏は言う。「〝単細胞〟はネガティブな意味で取られることがあるが、我々が考えているよりもずっと賢いことを示せた」

 イグ・ノーベル賞は一般の人にとって、多様な研究を知るきっかけにもなる。
大阪大学大学院人間科学研究科教授の西村剛氏は、ワニにヘリウムガスを吸わせてその声の出し方を調べたことで、20年にイグ・ノーベル賞を受賞した。
 普段はサルの研究を行っているが、ウィーン大学客員研究員だった際、手伝いとして参加した研究成果が認められ受賞した。
西村氏は「研究の世界は『何にお金を使っているのか』と思われることも多い中、研究内容を知ってもらういい機会になった」と話す。

▶︎話者の声を遅くして跳ね返し、話しにくい環境をつくる「スピーチ・ジャマー」
 なぜ日本人は連続してイグ・ノーベル賞を受賞できるのか。
12年、強制的に人が話す速さをコントロールできる機械「スピーチ・ジャマー」で同賞を受賞した津田塾大学学芸学部教授の栗原一貴氏はこう語る。

 「同賞の主宰者に『英国と日本は変わったことをする人を称賛する文化がある』と言われたことがある。
 日本人は本音と建前の『本音』の部分にも全力なため、ユニークな研究に対する抵抗感がないのではないか」

 日本人に希望を持たせる華やかな成績のイグ・ノーベル賞だが、今後も続くのか心配な面もある。
 文部科学省が発表する「科学技術指標2024」では、22年の研究開発費総額の対国内総生産(GDP)比は、日本は3.65%で米国を上回り、上位にいる。
 だが、例えば、04年に国立大学が法人化されて交付されることになった運営費交付金は、04年の1兆2415億円をピークに24年は1兆784億円と徐々に減少している。
 また、引用される回数の多い論文TOP1010%補正論文数)も20~22年の平均で世界第13位と、4位だった00~02年の平均と比べて下落している。

 東京大学大学院理学系研究科教授の合田圭介氏は「日本の研究現場では、科学技術研究費などで多くが競争的資金化していて、光熱費や場所代、技術職員などを保障するのに手いっぱいな状況だ。
 分野によっては、たとえ新しい発想が生まれても、+αで自由な発想を試す資金の余裕はないのではないか」と警鐘を鳴らす。

 「研究開発費の伸び悩みについて、内訳をみるとAIや再生医療など流行りの分野が重視され、基本原理を解明する『基礎研究』がどんどんおろそかになっている。目先の利益ばかりで、長い目で見た時に何も生まれなくなってしまう」(同)

▶︎日本の研究現場の実態 「選択」と「集中」の誤算
 「役に立つ」分野に対して、研究資金を集中させることも必要だが、行き過ぎは禁物だ。イグ・ノーベル賞受賞者からも懸念の声が上がる。
 西村氏は、「例えば、iPS細胞など『役に立つ』医療分野の研究が発展すると、生命倫理の問題が起こり、人文学的研究にも結びつく。
 今『役に立つ』とみなされる研究ばかりが優先されると、そうした分野の研究が必要な際に、対応する体力がなくなってしまうのではないか」と話す。

 東京大学先端科学技術研究センター先端研フェローの小泉英明氏もこう警鐘を鳴らす。
「かつてはどんな研究室にも最低限の研究費が配分され、すぐに結果が出なくても、長期間の研究ができていた。
 しかし、それでは『他国には勝てない』と、研究費の選択と集中が行われ、その結果、一部にはすでにMRI高磁場化や今の量子コンピューターなどのような流行りの技術を、高額の実験装置で後追いすることに注力するようになり、新しい発見を生み出す力が失われていった。

 日本では、1990年代以降、パッションのある人を見抜く研究者やマネジャーが減っている。このままでは、しかるべき立場の研究者の中に、自ら手を動かして研究をしてきた、目利き力がある人がいなくなってしまう可能性がある」

 研究成果は、結果だけではなく、その過程も大切だ。前出の栗原氏は「動物への『スピーチ・ジャマー』の効果を調べようとしたところ、使用している超音波が動物を振り向かせることに〝偶然〟気付き、その後、動物の視線を集める『アニマルキャッチャー』を作ることにつながった。
 本来の実験はうまくいかなくとも、思いがけない成果もある。私たち研究者はそれらを見える化して世の中に伝えることが重要で、社会全体では、思いがけない成果を受容していくことも必要なのではないか」

 中垣氏も同様の意見だ。「自分が『おもしろい』と思う研究を極めることも必要だが、その『おもしろさ』を誰かに伝えることも大切だ。
 社会にとって『役に立つ』ゴールが最適解とは限らないし、世間に何かを問いかけられるような別のゴールにたどり着いたりする。
 独りよがりにならず、絶えず社会と対話してすり合わせをしていき、別のゴールの必要性を考えていくことが重要になる」。

 イグ・ノーベル賞について、中垣氏は「どの研究もおもしろい。ただ、それは一般の人がイメージする科学技術や人類の『発展や進歩』に直結するものではないからこそ素晴らしい」と語る。
 また、冒頭で述べた通り、あくまでパロディーの位置づけで権威がないことも特徴の一つであり、肩肘張らずに楽しんで研究を知ってもらうことができる。
「イグ・ノーベル賞のような賞は他にはないユニークなものだ」と話す。

 小泉氏は、「イグ・ノーベル賞もノーベル賞も本質的には変わらないもの。本当に新しい発見をするためには、自由な感覚が必要だ。自分が興味のあることへの強烈なパッションがなければ感性は磨かれない。イグ・ノーベル賞はその感性を見抜く賞だともいえ、ときにパロディー以上の科学の本質が見えている」と話す。

 例えば、グラフェンの発見自体が「発見の本質」を示す好例だ。我々は鉛筆の原料であるグラファイトを使用して白紙に黒い文字を書いてきた。
 まさに世界中の人々が知らずにその恩恵に浴していたが、それがグラフェンという特殊な物質だと発見され、多くの研究者もその特殊性に気づいた。
 当たり前のように存在しているものを明確にするのが「発見の本質」だ。

 グラフェンの発見はアンドレ・ガイム氏が10年にノーベル賞を受賞しているが、彼は「カエルの磁気浮上」で、その10年前にイグ・ノーベル賞を受賞している。
 この「カエルの磁気浮上」は、病院で一般的に使われているMRIの原理につながっているのだ。

 また、長期の視点に立ち、優れたイノベーションを生み出すためには土台が重要だ。合田氏は「日本人は真面目で、学力も高く、発展できる土壌は備わっている。多様な研究ができる環境を整え、土台を強化していくべきではないか」と話す。

▶︎企業にも通ずる視点  長期の投資がカギ
 企業活動でも同様だろう。小泉氏の指摘する次の考えが参考になる。
「企業での研究も同じで、これまで『役に立たない』と思われてきた倫理などの問題をおろそかにしてきた会社は、今、そのツケにより危険な状態に陥っている。
 それは最近、ドイツの気鋭の哲学者、マルクス・ガブリエルによっても一つの倫理資本主義として指摘されている。
 目の前のことばかりを追い求めていては、バブル崩壊後の停滞からはどの企業も抜け出せない。将来方向にお手本があった時代には、日本特有の改良や改善が効率化に功を奏した。

 しかし、今のように先が見えない時代には、短期間で『役に立つ』ことばかりに注力せず、土台となる基礎部分から長期の目線で投資していくことが必要なのではないか。

 生成AIにしても、最近になってChatGPTが出現するまで多くの基礎研究があった。
価値に気付く前の芸術作品と同じように、数十年の下準備の期間中は、AIがこれほどのインパクトを与えることは考えられなかった。
 だが、大きな価値が誰の目にも見えたとたんに、世界の大企業が一斉に投資を始め、商品も多数世に出ることになった」

 今、研究開発に求められていることは、昭和の時代のキャッチアップ型モデルではなく、非連続的な進展や価値を生むものだろう。
 短期的な利益ばかりを求めず、長期の視点に立ち、将来の日本を見据えて、まずは土台を強化しなければならない。




💋蓮舫のあほう発言の悪影響が残る財政施策

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