閑雲孤鶴の日々  - Fire生活者の呟き -

Fire生活経験談のほか、世相世情 💹📆、知的生産技術💻📱、書評📒について、書き綴ります。⏳

学問はどこまでわかっていないか

2011年05月24日 | 書評 学問
学問はどこまでわかっていないか/堀田力/エモーチオ21/1996

現役検事時代の公的発言、おごるな上司などのベストセラー書、さわやか福祉財団理事長と、この人の発言や行動に共感を覚える人が多いが私もその一人である。

本書では、いわゆる専門家とか学者とか言われている人たちが、係わっている学問のうち、大脳生理学、心理学、経済学、国際政治学など、現代における学問としての盲点を明らかにし、多くの学問が現実社会を構成する重大な前提条件を考慮せずひたすら古典的な科学の延長線上として学問を扱うため、学問がますます現実と遊離し社会において無用の長物になっていることを痛烈に警告している。

つまり、ある意味で素人が専門家集団の見識のなさや人間力のなさを皮肉っていうことになるが、それと同時に、我々素人でも専門家や学者など、既存の権威が支配する分野においてもそれぞれの価値判断で正しく考えることにより、既存の専門家以上の成果が得られるのみならず、社会改革も不可能ではないことを示唆している。

そのような意味で、本書は、学問を生業とする人たちへの批判、たとえば、教条主義的あるいは難解な表現を多用する、生きている時代に現実化できない領域に安住したがる、自ら責任をとることを考えない傾向が強い、国家全体が困っている時は口をつぐみどうでも良い時にしゃしゃり出る、などについて、これからの学者は、自ら自分を律するほかに、学問に対する姿勢、生き方などが学問以前に重大な問題となることを想起さ
せた。

堀田氏のように、いつまでも権力に安住しない生き方、在野の立場の人間として客観的に物事が見えている、この二つの背景があってこのような本を執筆することが可能であり、堀田氏の今後ますますの活躍を期待する次第である。

これから学者を目指そうとする人、学者として行き詰まりを感じている人にお勧めしたい一冊である。

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